末吉里花(すえよし?りか)
一般社団法人エシカル協會代表理事。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。フェアトレードやエシカルを中心に活動を展開し、日本全國の企業や自治體、教育機関などで講演、各地のイベントでトークショーを行う。著書に『祈る子どもたち』(太田出版)。新刊『はじめてのエシカル』(山川出版社)。消費者庁「倫理的消費」調査研究會委員(2015.5?2017.3)、東京都消費生活対策審議會委員、一般社団法人日本エシカル推進協議會理事、一般社団法人日本サステナブル?ラベル協會理事。
エシカル、エシカル消費とは何か――
―― では、「エシカル」「エシカル消費」とは何か、具體的な事例とともにご紹介ください。
エシカル(ethical)という単語は、形容詞で直訳すると「倫理的な」という意味があります。ただ、それではあまりにも漠然としていますよね。そこで私たちはこれを「人や地球環境、社會、地域に配慮した考え方や行動」と解釈しています。私たちが活動の中心に據えているエシカル消費は、「人や地球環境、社會、地域などに配慮した製品やサービスを選んで消費する」と言えるでしょう。
人は誰しも、何かしら消費をして生きていますよね。消費を通してなら、誰でも日々の行動を少し変えるだけで環境や人権などの問題解決に貢獻できます。始めやすく參加しやすいのが、エシカル消費の特長です。
エシカル消費には「環境」「社會」「地域」という3つの柱があります。
1つ目の「環境」への配慮にはオーガニックな野菜や加工品を買うことや「海のエコラベル」と言われるMSCやASC認証が付いた魚を買うこと(MSCは天然魚に、ASCは養殖魚に與えられる認証)、FSCという森林の認証が付いたトイレットペーパーやティッシュペーパー、コピー用紙などを買うことが該當します。エネルギーを再生可能自然エネルギーに変えることも環境への配慮なので、身近なところだとエコカーに乗るのもエシカル消費だと言えるでしょう。
2つ目の「社會」への配慮なら、フェアトレード商品の購入です。フェアトレード商品はコーヒーや紅茶、チョコレートといった食品やオーガニックコットンを使った衣類などが有名です。年々増えていますから、皆さんも目にする機會が増えたのではないでしょうか。
そして3つ目の「地域」への配慮だと、私たちの地元で採れた農産物や水産物などを日々の生活の中で消費する「地産地消」が代表的ですよね。皆さんのなかには東日本大震災後に「応援消費」として、被災地から農産物や水産物を買われた方も多いと思います。これも「地域」への配慮です。
それからリサイクルされたものを買ったり古著を買ったり、もともとあったものに付加価値を付けて新しい製品を作る「アップサイクル」のものを買ったりするのも、新たに資源を消費しないという點で1つ目の「環境」に配慮したエシカル消費と言えます。今私が持っている名刺入れ(寫真)はアルミ缶のプルタブでできているのですが、こういうものを買うのがアップサイクルの一例です。
インタビュー當日、末吉さんが持っていた名刺入れ。
エシカル協會では「エ…えいきょうを」「シ…しっかりと」「カル…かんがえる」という“語呂合わせ”でエシカルの考え方への理解を促している。
「私だけのエシカル」を見つけることから始めよう
―― では実際に、エシカル消費を実踐していくにはどうすればいいでしょうか。「1回だけエシカルなものを買う」ことはできても、続けるのはハードルが高い印象です。
「100%エシカルな生活」なんて到底できません。だって、森の中で仙人みたいに暮らさないといけませんから。ですからスタートするにあたっては、最初から「完璧にやり切ろう」と考えず、自分だけのエシカル「マイ エシカル」をつくってほしいな、と思っています。
エシカル消費のスタイルにはさまざまな形があり、一人ひとりに関心のある分野が必ずどこかにあると思うのです。自分が関心のある分野で、社會的な課題を解決するために頑張っている企業のものを買って応援していこう、という気持ちを持つことから始めると“敷居”は低いでしょう。
例えば、子どもを持つお母さんであれば食材について「子どものために健康にいいものを」と考えると思います。そこで買い物の際に、「食材は極力、オーガニック食品専門店で買い物をする」といった形で「マイ エシカル」を選ぶことができますよね。
それから大切な人への贈り物に、エシカルな商品を選ぶというのもオススメです。エシカルな商品には必ず、誰かに話したくなるような「物語」があります。物語を添えて贈り、受け取った人が共感してくれたら、そこからエシカルの輪が広がっていくって考えると素敵ですよね。
末吉さんはエシカル消費を始めるにあたっては、「自分が関心を持っている分野を選ぶと取り組みやすい」と語る。
―― 末吉さんの最初のマイ エシカルは、ファッションだったわけですね。
はい。エシカルファッションを入り口に始めたのですが、やがて「自分の體の中に入っていくもの」にも意識が向き始め、「できれば食材はオーガニックのものを選ぼう」と考えるようになりました。そして、「地元の農家さんが作ったものを、會話をしながら買いたいな(=地産地消)」などと、取り組みを広げていったのです。