まちづくりの第一歩は「?jìng)€(gè)性」の発掘だ。持続可能な「まち」のつくり方

世界的な脫炭素の潮流は、私たちが日常生活を営む「まち」のあり方にも変化をもたらしている。

持続可能なまちづくりを目指し、実に日本の人口の約93％を擁する679もの自治體が、2050年までに二酸化炭素（CO2）排出実質(zhì)ゼロを?qū)g現(xiàn)する「ゼロカーボンシティ」を表明している（2022年3月末現(xiàn)在）。

そんななか、「持続可能なまちづくりには地域性の“発掘”が不可欠だ」と語(yǔ)るのが、まちづくり、観光、文化の融合を目指すA.T.カーニー日本法人會(huì)長(zhǎng)／CIC Japan會(huì)長(zhǎng)の梅澤高明氏と、「再生エネルギー100％の住宅?建築?まちづくり」を通じて脫炭素社會(huì)の実現(xiàn)を目指す大和ハウス工業(yè)の環(huán)境部長(zhǎng)の小山勝弘氏だ。脫炭素の潮流を取り込み、持続可能なまちをつくるために必要な視點(diǎn)を二人に聞いた。

脫炭素の潮流がまちの未來(lái)を変える

──さまざまなまちづくりのプロジェクトに攜わる梅澤さんは、まちづくりの現(xiàn)狀をどのように捉えていますか。

梅澤　まずコロナ禍の影響により、まちの景色は大きく変わりました。

オンライン消費(fèi)のニーズは加速し、小売業(yè)などリアル店舗の撤退が相次ぎました。またインバウンド観光需要の消失を背景に、ホテルなど宿泊施設(shè)の建設(shè)にも急ブレーキがかかりました。

リモートワークの普及は、企業(yè)にオフィスのあり方の見(jiàn)直しを迫りました。また?jī)Pき方の多様化と価値観の変化を受けて、地方移住や二拠點(diǎn)生活など、住まいとの向き合い方にも変化が表れています。

これらはすでに私たちの身の回りに起きている変化ですが、これからのまちづくりに大きな影響を及ぼそうとしているのが「脫炭素」の潮流です。

行政や企業(yè)に脫炭素の取り組みが強(qiáng)く求められるいま、まちを構(gòu)成する住宅や商業(yè)施設(shè)での再生エネルギーの導(dǎo)入が本格化し、また街なかの公園が増加するなど、まちのあり方や人々の暮らしの変化が加速するでしょう。

小山　政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を契機(jī)に、まちづくりのコンセプトに「脫炭素」のキーワードが必ずといっていいほど入るようになりました。

國(guó)が本腰を入れたことに加えて、SDGsやESGなどを背景に、地方自治體や企業(yè)にとっても脫炭素は避けられない問(wèn)題となりました。もともとコロナ禍以前からグリーンビルディング（環(huán)境配慮型建物）のような低炭素を目指す流れはありましたが、一部の環(huán)境意識(shí)の高い事業(yè)者や専門家だけが志向するものでした。

ですがいま、人々が日常を営む住宅や商業(yè)施設(shè)の脫炭素化が徐々に進(jìn)んでいます。これらの動(dòng)きはまだ人々の目に明確に見(jiàn)える形での変化は生まれていませんが、これから徐々に人々の暮らしに変化をもたらすものになります。

エネルギーの地産地消がすべてではない

──2050年までに二酸化炭素排出実質(zhì)ゼロに取り組む「ゼロカーボンシティ宣言」を表明する動(dòng)きも加速しています。

小山　宣言をするまちが増えていること自體は、ポジティブに捉えています。

とはいえ行政の方とお話をさせていただくと、脫炭素の潮流に乗り遅れてはならないという意識(shí)はあるものの、具體的な取り組みを推進(jìn)している自治體は少數(shù)なのが現(xiàn)実です。

ゼロカーボンシティの実現(xiàn)には、自分たちで生み出したエネルギーを地域で消費(fèi)する「エネルギーの地産地消」が必要になりますが、まだその取り組みに著手できているまちは多くありません。

梅澤　そもそもすべての自治體が「エネルギー地産地消」を基本とするのは無(wú)理があります。

人口密度の低い地方部では、再生エネルギーの供給力が需要を上回る地域も多いので可能ですが、人口密度の高い大都市はエネルギーを域外から調(diào)達(dá)する必要があります。

エネルギー安定供給の観點(diǎn)も踏まえて考えると、原子力?火力などの集中型電源と、再生エネルギーを中心とする分散型電源の組み合わせがこれからも不可欠なのです。

そして大切なのは、大都市部と地方部を組み合わせた日本全體でどれだけエネルギー自給率を上げつつ脫炭素化を進(jìn)められるか、という視點(diǎn)だと思います。

太陽(yáng)光や風(fēng)力などの再生エネルギー資源に恵まれた地方部は、域內(nèi)の地産地消で経済循環(huán)をつくることに加えて、余剰電力を他地域へ供給することで、さらに収入を得ることも可能となります。

余剰電力を電力のままで他地域に供給する代わりに、より付加価値の高いものに転換して他地域に販売するモデル、いわゆる「Power to X」も有効です。

たとえば風(fēng)力資源が豊富な北海道で、安価で大量の電力を必要とするデータセンターを建設(shè)し、サービスとして全國(guó)に販売するといったパターンです。単なる電力の地産地消を超えた地域経済へのインパクトを生み出すことが可能となります。

──実際にエネルギーの地産地消を?qū)g現(xiàn)したまちづくりの事例はありますか？

小山　私たち大和ハウス工業(yè)が手掛けた千葉県船橋市の大規(guī)模複合開(kāi)発プロジェクト「船橋グランオアシス」では、日本初の再生可能エネルギー電気100％のまちづくりを成功させています。

船橋グランオアシス（分譲済）は、総面積5.7ha（東京ドーム約1.2個(gè)分）の工場(chǎng)跡地に分譲マンションや戸建住宅、賃貸住宅、商業(yè)施設(shè)など（総戸數(shù)859戸）で構(gòu)成されたまちです。

「エネルギーを自給するまち」をコンセプトに、まちでエネルギーを生み出し、住居や施設(shè)で再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。

たとえば住宅やマンションには太陽(yáng)光パネルや蓄電池が設(shè)置されています。自分たちで発電した電力を、自分たちで消費(fèi)できます。

26區(qū)畫(huà)ある戸建住宅地では、5?6戸単位で構(gòu)成されたコミュニティをつくり、そのなかで電力の「おすそ分け」ができるようになっています。余った電力を、足りない家にシェアできるのです。

また分譲マンションの室內(nèi)には、電力使用が多い順に「赤」「黃」「緑」で伝える表示器も設(shè)置しています。使い過(guò)ぎであれば「赤」の部分が點(diǎn)燈し、省エネに役立ててもらえます。

こうしたエネルギーをシェアする環(huán)境を整えることで、生活者の環(huán)境意識(shí)を育むことにも貢獻(xiàn)したいと考えています。

またエネルギーの足りない分は、私たちが全國(guó)で管理?運(yùn)営する377カ所（稼働中：2021年3月末時(shí)點(diǎn)）の再生可能エネルギー発電所のうち、岐阜県飛騨市の「菅沼水力発電所（発電出力約2MW）」で発電した電気を中心に供給しています。

「再生エネルギー100％の住宅?建築?まちづくり」を通じて、日本全國(guó)に拠點(diǎn)を持つ大和ハウス工業(yè)の持続可能なまちづくりや脫炭素社會(huì)の実現(xiàn)に貢獻(xiàn)していきたいと考えています。

梅澤　社會(huì)の脫炭素化を進(jìn)める上で重要なのは、「需要の電化」と「発電の脫炭素化」の組合せです。

船橋のプロジェクトはそれを?qū)g現(xiàn)した事例だと思いますが、同様に「再生エネルギー100％のまち」を目指す地域は全國(guó)でこれからも増えるので、大和ハウス工業(yè)にはそのノウハウを広くシェアしてもらいたいですね。

「よそ者」と出會(huì)える場(chǎng)のつくり方

──持続可能なまちづくりを?qū)g現(xiàn)するには、どのような視點(diǎn)やアプローチが大切になりますか。

梅澤　まずは「地産地消」というキーワードに飛びつく前に、どんな地域資源を活かし、どんな地域づくりを目指すのか、というところから考えることが重要です。

従來(lái)の地方都市の開(kāi)発では、大型マンションの建設(shè)、全國(guó)ブランドの小売店の誘致などで畫(huà)一化が進(jìn)みました。郊外のロードサイドに大型の小売店舗や複合施設(shè)が広がるなかで都市周辺の田園風(fēng)景は壊され、中心市街地はシャッター街と化してしまった。このような畫(huà)一的で個(gè)性のないまちづくりとは決別すべきです。

エネルギー地産地消を進(jìn)めようとすれば、再生エネルギーの活用ということでメガソーラーの設(shè)置を推進(jìn)することになるかも知れない。しかし、自然の景観を活かして観光を振興しようとする地域であれば、この方針は逆効果です。

従って、まずは地域獨(dú)自の魅力を再発見(jiàn)し、どんな産業(yè)で地域の未來(lái)をつくっていくのか、という問(wèn)いからスタートすることが不可欠なのです。

その方向性を定めた後で、どんなエネルギーの供給システムをつくるか、という論點(diǎn)を検討すべきです。地域の日照量や風(fēng)況、すなわち潛在的な再生エネ供給力と、現(xiàn)在から未來(lái)のエネルギー需要量を勘案して、地産地消すべきか、さらには他地域へのエネルギー供給拠點(diǎn)化を目指すべきか、という検討を行うのです。

小山　確かにほとんどの地域は自分たちの価値を客観視できていないと感じます。優(yōu)れた文化や資源があるにもかかわらず、なぜか都市のまちづくりを真似ようとしてしまう地域は多い。

梅澤　加えて、地域の魅力を再発見(jiàn)するには、「よそ者」の目線を入れることが必要です。私は観光の仕事で全國(guó)、特に地方部を飛び回っていますが、地元の人たちが気づかないところにその地域の一番の魅力があることが多い。それを見(jiàn)つけるのに、よそ者の目線が役に立つのです。

Iターンや2拠點(diǎn)生活をする人たちのようなよそ者を地域の人たちが受け入れることができれば、自分たちの魅力を彼らに教えてもらうことができます。

小山　まちの魅力を知っているよそ者を受け入れるには、「受け手」の存在も重要ですね。やる気のある行政のキーパーソンが、よそ者を受け入れ、企業(yè)や地域住民を巻き込むことができれば、エネルギーの地産地消も加速させられるはずです。

梅澤　そのためにも、熱意のある受け手と、よそ者の出會(huì)いの確率を高める場(chǎng)づくりも重要です。

誰(shuí)でも気軽に入ることができて、新しい人や情報(bào)が行き來(lái)する広場(chǎng)のような空間をつくる。これからのまちづくりには、いかに「偶発的な出會(huì)い」を生み出す場(chǎng)をつくれるかも問(wèn)われてくると思います。

たとえば私が會(huì)長(zhǎng)を務(wù)めるCIC Tokyoは起業(yè)家を支援するイノベーションセンターですが、単なる巨大シェアオフィスではなく、「1つのまち」だと捉えています。

まちの中心にさまざまな人が行き交う広場(chǎng)があり、日々開(kāi)催されるイベントは、まちの內(nèi)外から人々が集まる祭りや市場(chǎng)のようなものです。その中で偶発的な出會(huì)いが起こり、それがさまざまな新しいプロジェクトにつながっていく。そんな「まちづくり」を日々行っています。

「人間中心」のまちづくりを

──最後に大和ハウス工業(yè)が描く、まちづくりの未來(lái)を教えてください。

小山　私たちは2016年に、2055年の創(chuàng)立100周年を見(jiàn)據(jù)えて、環(huán)境長(zhǎng)期ビジョン「Challenge ZERO 2055」を策定し、持続可能な社會(huì)の実現(xiàn)を目指しています。

その実現(xiàn)に向けて、「気候変動(dòng)の緩和と適応」「自然環(huán)境との調(diào)和」「資源保護(hù)?水資源保護(hù)」「化學(xué)物質(zhì)による汚染の防止」という4つの重點(diǎn)テーマを設(shè)けています。

特に「気候変動(dòng)」を最重要テーマに掲げ、設(shè)備の省エネ化と再生可能エネルギーの利用拡大を通じたまちづくりに取り組んでいます。

また私個(gè)人の理想としては、2055年には「脫炭素のまちづくり」というキーワードがなくなっていて、脫炭素の取り組みが當(dāng)たり前のものになっている社會(huì)の実現(xiàn)に貢獻(xiàn)したい。そしてただ成功事例を橫展開(kāi)するだけではなく、各々にカスタマイズしたまちづくりにこだわっていきたいと思います。

梅澤　昨年、國(guó)交省の都市政策の検討會(huì)で委員を務(wù)めたのですが、その報(bào)告書(shū)の大方針に「人間中心」というキーワードが掲げられました。當(dāng)然の話と思っていたら、実はそのキーワードが掲げられたのは初めてと後で聞いて驚きました。それぐらい、日本の従來(lái)のまちづくりは「箱物思想」だったということです。

日本全國(guó)で生活者起點(diǎn)の家づくりを進(jìn)めてきた大和ハウス工業(yè)には、「人間中心」の思想を、家づくりからまちづくりに広げていってほしいと思います。

小山　住宅を一人ひとりのニーズに合わせて提供してきたように、人間中心のまちづくりは、まさに私たちのポリシーそのものです。住民の聲に耳を澄ますことができるポジションにいる私たちだからこそ実現(xiàn)できるまちづくりにこれからも挑戦していきます。

記事の一覧へ戻る