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コラム No.108-10

CREコラム

急拡大するESG投資(10)脫炭素の動きとESG

公開日:2021/06/30

改正地球溫暖化対策推進法(改正溫対法)が2021年5月下旬に國會で成立しました。國や自治體、企業(yè)が取り組むべき気候変動対策を定めた法律の改正で、企業(yè)のCO2排出量情報のオープンデータ化などが盛り込まれました。法改正により2050年までの実現(xiàn)を目指す「脫炭素社會」に向けての取り組みが加速し、ESGの中でも特に環(huán)境(Environment)に対する社會的な関心が一層高まりそうです。

制度の電子化と詳細な排出量の開示

1998年に制定された溫対法は、今回を含めて7回の法改正が行われています。2度目の法改正(2005年)時に、排出する溫室効果ガスを多量に排出する者を「特定排出者」と定めました。該當者は自らの溫室効果ガスの排出量を算定し、國へ報告することが義務付けられ、2006年4月から実施されました。溫対法は特定排出者が報告する情報を國が集計し公表する制度です。しかし、今回の法改正ではこの制度を電子システム化が報告者と情報利用者の雙方にとって利便性が向上するよう改められました。また開示請求の手続きを不要とし、公表までの期間を現(xiàn)行の「2年」から「1年未満」として企業(yè)の排出量情報について迅速で透明性の高い形に可視化し、企業(yè)の脫炭素経営に向けた取り組みを促すこととしました。

今回の改正溫対法では、事業(yè)所単位での排出量の公表を求めました。従來は企業(yè)全體の排出量の公表に限られ、事業(yè)所単位での排出量を知るには開示請求する必要がありました。今後は開示請求しなくてもひとつの事業(yè)所の排出量が明示されることになります。制度の電子システム化と事業(yè)所単位での排出量開示により、特定排出者は従來以上にきめ細かく排出量情報を開示することになります。溫室効果ガスを大量に排出する企業(yè)は地球環(huán)境の改善に対して國民のより厳しい監(jiān)視に置かれることになりそうです。

大企業(yè)で進むわが國の脫炭素経営

世界各國で気候変動対策が実施されていますが、わが國でも各業(yè)界のリーディング企業(yè)を中心に、脫炭素の実現(xiàn)に向けた取り組みが展開されています。脫炭素経営に関する3つの國際的な枠組みをご紹介します。

図1:脫炭素経営に向けた取り組みの広がり

出典:環(huán)境省 企業(yè)の脫炭素経営への取組狀況より

TCFDは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で、「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されます。2017年に最終報告書を公表し、企業(yè)の気候変動への取り組みとその影響に関する情報を開示するよう推奨している組織です。世界で2,230機関(うち日本は415機関)の金融機関や企業(yè)、政府などが賛同を表明しています(2021年6月14日時點、以下同)。

開示するのは、(1)ガバナンス(Governance)ルディングス(株)/三井不動産(株)/三菱地所(株)=どのような體制を敷き、それを経営にどう反映しているか、(2)戦略(Strategy)=短期?中期?長期における企業(yè)経営への影響、(3)リスク管理(Risk Management)=気候変動のリスクに対する特定、評価と低減の取り組み、(4)指標と目標(Metrics and Targets)=リスクと機會の評価について、どのような指標で判斷し目標への進捗度を評価しているかの4項目です。

SBTは「Science Based Targets」の略稱で、直訳すれば「科學と整合した目標設定」。溫室効果ガス削減目標の指標のひとつで、2015年に採択されたパリ協(xié)定の「世界的な平均気溫上昇を産業(yè)革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」という、「2℃目標(1.5℃目標)」を企業(yè)が中長期的に設定する溫室効果ガス削減目標と、この目標が示す社會の実現(xiàn)に資する目標設定を促す枠組みです。米國にある世界資源研究所などが設立?運営しています。SBTの認定を受けた國內(nèi)企業(yè)は108社で世界第2位。世界の認定企業(yè)は754社ですから、約14%のシェアを占めている計算です。

RE100は「Renewable Energy100」の略。使用電力の100%を再生可能エネルギーにするよ う取り組んでいる企業(yè)が加盟している國際的な企業(yè)連合で、2014年に取り組みが開始されてい ます。再生可能エネルギーの需要と供給の大幅な拡大を図っており、世界で315社、そのうちわ が國では56社が加盟しています。

わが國では33社がTCFD、SBT、RE100の全てに取り組んでおり、內(nèi)訳は建設業(yè)7社、食料品4社、化學1社、醫(yī)薬品1社、電気機器8社、精密機器2社、その他製品2社、情報?通信1社、小売?卸売4社、不動産3社となっています。こうした3つの國際的な枠組みや組織のほかにも、省エネ効率を50%改善するなど事業(yè)のエネルギー効率(Energy Productivity)を倍増させることを目標に掲げる企業(yè)が參加する「EP100」や、企業(yè)による電気自動車の使用や環(huán)境整備促進を目指す「EV100」などの國際組織があります。

求められるESG評価基準の構(gòu)築

脫炭素経営における取り組みは、地球環(huán)境の改善を企業(yè)風土または企業(yè)文化として醸成するために必要不可欠と思われます。脫炭素社會実現(xiàn)のための企業(yè)活動を継続していくためには、投資家がこの活動を適切に評価することが必要です。そのためにTCFDやSBT、RE100といった國際的な枠組みの下での活動を証券市場が適切に評価することが求められるのではないでしょうか。

改正溫対法により、特定排出者の情報開示は進んでいくことが予想されます。一方で、TCFDなどESGの一環(huán)である環(huán)境改善活動の認知度は、まだまだ低いのが現(xiàn)狀と思われます。ESGは非財務情報であり、評価基準の構(gòu)築は難しい側(cè)面があります。省エネは基準値をクリアすれば認定されますが、環(huán)境改善は目標値のクリアまでは中長期的なものが多く、可視化できるものが多くはありません。國際的な枠組みへの參畫をポイント制度にするような企業(yè)のESG評価の構(gòu)築が待たれるのではないでしょうか。

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