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コラム No.28-6

CREコラム

今さら聞けない「不動産証券化」(6)なぜ不動産証券化が登場したのか

公開日:2017/06/30

POINT!

  • ?経営環境の変化によって、企業が資産を手放す時代に入ってきた
  • ?不動産証券化には、資金を調達すること、運用することの2つの側面がある

土地に対する考え方が変化した

土地はかつて、持っているだけで財産でした。価値のある土地さえあれば、それを擔保に銀行から融資を受けることができました。しかし、バブル経済が崩壊し、土地神話が崩れると土地は必ずしも保有価値のある資産ではなくなり、それどころか時には価値を減らす危険性をはらんだ資産となってしまいました。企業は不動産を保有して企業活動を展開する「持てる経営」から、「持たざる経営」に転換せざるを得なくなり、土地に対する考え方が大きく変わりました。多くの企業にとって土地は持つべきものから、切り離すべきものに変化したのです。

減損會計の導入も、不動産保有の考え方に変化をもたらしました。2005年4月から、土地や建物などの固定資産を保有している企業は、(固定資産の)価値が取得時と比べて低下していると判斷した場合、その下落分(減損)を特別損失として計上することを義務付けられました。減損會計では、目減りした分は稅務上、損金扱いになりません。ならば、売卻して損金計上し、土地保有のリスクを減らしたいと考えるようになりました。
また、少ない資本(資産)で、より多くの収益を上げることが企業の評価を高める時代になり、固定資産はなるべく持たないような企業マインドが醸成されるようになってきました。ROA(総資産利益率)やROE(株主資本利益率)が注目されてきたのです。こうした経営環境の変化が土地保有に対する考え方を徐々に変えさせ、企業が資産を手放す時代に入ってきたのです。

オフバランスで身軽になる

土地や建物などの固定資産を売卻すれば、貸借対照表(バランスシート=B/S)の資産はその分、除かれます。利益は橫ばいでも資産が減れば、効率的な経営をしていることになります。なぜなら、より少ない資本でより多い利益を上げていることになるからです。より少ない元手でより多い収益を上げる。そのためB/Sから資産を「取り除く」すなわち、オフバランスということです。しかし、土地や建物は、そう簡単に売れるものではありません。そこで、単純に売卻するのではなく、不動産を小口化して証券として多くの投資家に買ってもらう、証券化の手法が出てきます。

資金の調達、運用の両面がある

不動産証券化には、資金を調達することと運用することの2つの側面があります。調達面では、より低コストで資金調達できる點にメリットがあります。通常、銀行融資の場合、土地を擔保に取られることはありますが、基本的に企業は自社の信用力(返済能力)で融資を受けます。しかし、証券化の場合、土地や建物などの物件自體が持つ収益力によって資金調達します。従って、業績が思わしくない時でも、保有する不動産の価値が高ければ、より多く資金を調達できるのです。ちなみに、企業の信用力による融資をコーポレートファイナンス、資産を媒介にした融資をアセットファイナンスといいます。

また、小口化されているため、多くの投資家から資金を集めることができ、その分リスクが低減できます。高額な不動産を売卻するには、まとまった取得資金を持っている一部の投資家を探す必要がありましたが、証券化されたことで1口當たりの投資額が下がり、より広範な投資家に購入してもらうことができます。

運用面というのは、投資家から見た不動産証券化を指しますが、この小口化が投資家にとって最大のメリットになります。個人投資家が不動産に投資するのは限界がありました。投資用のアパート?マンションなどはありますが、規模の大きいオフィステナントや商業施設への投資は、一般の個人投資家には実質不可能でした。しかし、証券化によって可能になり、情報開示なども進んで投資リスクも従來に比べて低下しています。

3つのタイプがある

  1. (1)資産流動化型
  2. (2)資産運用型
  3. (3)開発型

不動産証券化には3つのタイプがあります。
資産流動化型は、不動産の保有者がSPC(特別目的會社)に不動産を譲渡し、SPCが証券會社などを通じて投資家に証券化商品を発行?販売して資金調達する仕組みです。企業が本社ビルを証券化する場合は、この形態が多いといわれます。証券化したあとも継続してビルを使用することを「セールス&リースバック」といいます。

資産運用型は、まず投資家から資金を集め、それをファンド化して不動産に投資?運用する仕組み。「J-REIT」(不動産投資信託)がその代表格です。そして最近多くなったのが、開発型の不動産証券化。SPCが物件を開発し、完成後に特定の企業に賃貸されるもので、総合スーパーや郊外の大型商業施設などに見られます。資産流動化型はモノありき、資産運用型はカネありき、開発型は買い手ありき、とも考えられるでしょう。

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