マットレスを中心に多數の寢具を展開する、日本ベッド製造株式會社。
「座敷に布団」が定番だった日本において、
ベッドでの睡眠の普及に同社の存在は欠かせませんでした。
多くの一流ホテルや迎賓館で愛用されるに至った現在も、
快適な眠りのために挑戦を続ける彼らの技術と想いを紹介します。
食事や服裝など、生活全般の西洋化に伴っていつしか日本の寢室の主役になったベッド。「ベッドで眠る暮らし」の一般化に大きく貢獻したのが、日本初のベッド製造メーカー日本羽根工業社(現在の日本ベッド製造株式會社)です。
創業者である宇佐見竹治氏は、帝國ホテルに勤めた後商社に入社し、渡英。その際、西歐の生活様式に驚きと感動を覚え、「ベッドで眠る文化」を日本に持ち帰ることを熱望しました。帰國後、畳と布団の生活に慣れた日本人の體に合うベッドとマットレスを研究し、創業に至ったのは1926(大正15)年。以來90年余、日本ベッド製造ではひたすらに寢心地の良いマットレスを模索して開発が続けられています。
例えば、現在多くの商品に用いられているスプリングは、先代の社長と工場長によって開発されたもの。ふたりは連日工場にこもり、巻きの強さや硬鋼線の太さを0.1㎜単位で調整しながら完成させたといいます。
役職に関係なく製品開発に取り組む姿勢。そこには、宇佐見氏が殘した「現場目線」と、日本の気候や日本人の好む心地良さを知り盡くした國産メーカーとしての矜持、理想の眠りをカタチにする使命感が、脈々と受け継がれているのです。
2018年5月にリニューアルされた企業ロゴ。100年の歴史に向け、「快眠企業」としての決意を新たにした
「材料が同じなら、他社と比べて最も寢心地のいいマットレスをつくる自信が私達にはあります」と語るのはショールームの林周作さん。職人達の緻密で丁寧な仕事ぶりを自負するがゆえの言葉です。創業當時から継承してきた確かな技術、そして「理想の眠りをカタチにしたい」という想い。マニュアル化されない部分こそ、日本ベッド製造のものづくりの神髄なのです。
日本ベッド製造の舊社屋(1950年頃)
使う人の身になって作りませう。製造現場に掲げられたその精神を、日本ベッド製造の社員は胸に刻んでいます。感覚や體圧、筋肉と脂肪のつき方には個人差があり、何を心地良いと感じるかは人それぞれ。多様なニーズに対応するため、商品ごとに個性をもたせつつ、寢心地へのこだわりを形にしています。
こだわりが顕著に出ているのが、「ピロートップシルキーポケット」。マットレス両面のトップにさらにもう一層、キルト層が加えられた豪華な仕様であるがゆえに、スプリング本來の繊細さを保つのは難しいとされています。しかし日本ベッド製造では、ラグジュアリーな見た目と深みのある寢心地の両立を見事に実現しているのです。
豪華な外観で特別感を醸す「ピロートップシルキーポケット」
2018年に発売を開始した、「シルキークチュール」。世界でも稀有な職人のハンドタフト(手仕上げ)によって獨特の風合いを生み出した逸品です。
手仕上げだと、どうしても価格が跳ね上がってしまいますが、お客さまに使っていただけなければ意味がない。そう考えて試行錯誤をくり返すこと2年。ついに価格を抑えた至高のマットレスが完成したのです。
シルキークチュールの特長である天然素材、シルクと羊毛の良さを數値で表わすのは困難です。しかし、宣伝部の好地真美さんは「客観的に伝えるのは難しいですが、明らかに違う」と太鼓判を押します。「心地良さ」が複數の感觸から認識されることを考えれば、感性を重視するのも當然なのかもしれません。
90周年の際には熟練の職人の手で細部まで丁寧に縫い上げた手づくりマットレスを作成
ハンドタフトで仕上げられた「シルキークチュール」
「“眠りから暮らしを考える”會社」を標榜する日本ベッド製造。ショールームでは、マットレスを中心に眠りに関するさまざまなアドバイスを受けられます。注目すべきは社內資格「快眠マイスター」。製品についてだけでなく「眠りとは何か」というところまで掘り下げた知識と、それをお客さまに適切に伝える技術を身につけた社員に與えられています。
提供したいのは、マットレスを通じた「快適な眠り」。目に見えないものを商材にするからこそ、持ちうる知識の全てでお客さまの日々の悩みに応えたいという、決意の表れともいえるのではないでしょうか。
日本の眠りをより良くしたいという、一人の青年の夢から始まった日本ベッド製造の歴史。今では多くの一流ホテルや迎賓館でも使われ、國內外の人々に快眠というホスピタリティを提供しています。日本のベッドメーカー、日本ベッド製造。その挑戦はこれからも終わることはありません。
全國6か所に構えるショールームでは、多様なマットレスやベッドフレーム、ベッドアクセサリーを取りそろえる
アドバイス:日本ベッド製造株式會社 快眠マイスター林 周作さん / 日本ベッド製造株式會社 宣伝部 好地 真美さん
- Q1十分に眠るために適切な生活サイクルとは?
- A
基本的に、朝目覚めてから14~16時間経つと自然に眠気がくると言われています。そのサイクルにうまく乗って生活することが理想です。難しい場合は、例えば入浴後の時間を確保して、體のほてりが十分おさまってから眠りにつくようにしてください。少なくとも1時間程度は空けた方がいいでしょう。
食事も就寢直前は避けましょう。體內が活発に動いている狀態では、深い眠りは期待できません。もしくは効率的な消化活動にならず、翌朝胃もたれすることになる恐れも。どうしても遅い時間に食事を摂らざるを得ない場合は、消化がいいものを選び、極端に熱いものや冷たいものは避けるようにしてください。 - Q2どのような部屋なら快適に眠りにつけますか?
- A
明かりをつけたまま寢てしまい、深い眠りにつけなかった経験はありませんか。やはり、最も気を配るべきなのは「光」でしょう。真っ暗だと不安で眠れないという方もおられますが、つけるとしてもフットライト程度に抑えておきましょう。
家はそもそも「寢ぐら」であったところ。寢室は「寢るためだけ」の空間であることが理想です。趣味や仕事を兼ねたスペースにすると、交感神経が刺激され、リラックスして眠りにくくなることもあります。寢室に暖色系の照明を用いることでスムーズな入眠が可能に
- Q3最近よく耳にする「睡眠負債」って何?
- A
睡眠にはまだ謎が多く科學的に解明されていない點が多くあります。睡眠負債についても研究は途上のようです。ずっと起きているか心身が疲れるかすれば、自然と眠くなります。この現象を説明するために、30年ほど前に「睡眠負債(または睡眠圧)」という概念が提唱されました。毎日きちんと負債を返済していれば睡眠は不足しないことになり、眠らなければ日々負債は嵩んでいきます。「睡眠負債」という言葉は、現在「慢性的に蓄積した睡眠不足」のイメージにもなっているようです。
睡眠負債を抱えた人には統計學上、作業効率や反応速度の低下が見られ、心身への悪影響が指摘されています。今後さらに研究が進んでいくものと思われます。 - Q4マットレスって、各社でどう違うのでしょうか?
- A
メーカーによって特徴はありますし、各社ともユーザーの好みに合わせてさまざまなバリエーションを展開しています。日本ベッド製造でも多くの商品があり、どれも細部にまでこだわりが表れています。
特長のひとつがロールガード。エッジのワイヤーをウレタンで包み込み、側面を曲線に仕上げる加工です。これにより、ベッドに橫たわる動作までも気持ち良く感じられます。さらに自ずとマットレス自體の耐久性も向上するのです。マットレスのエッジをウレタンで包む「ロールガード」
- Q5ポケットコイルにはどのような特長がありますか?
- A
獨立したスプリングを、一つひとつ円筒形の袋(ポケット)に入れたのがポケットコイルです。コイルが全て連結され、體を面で支えるボンネルコイルに比べて、體を點で支える優しい寢心地を味わえます。
袋に入っていることで、通気性を心配する聲もありますが、適切な環境で使用していれば大丈夫。內側からカビなどが繁殖することはほとんどありません。寢心地を基準に選んで問題ないレベルといえるでしょう。ポケット(袋)の素材は通気性?放濕性に優れている
- Q6マットレスに必要なお手入れとは?
- A
圧力分散や濕気対策のため定期的にローテーションさせることが重要です。3か月ごとに前後表裏を回転させれば、1年間で全面を均等に使うことができます。使っていない時にはシーツをめくり、マットレスに呼吸をさせるといいでしょう。
また、キルティングの縫い目など、溝の部分は常に清潔に保ちましょう。ホコリがたまるとダニやカビが発生する原因となります。掃除機の隙間ノズルなどを用いて、定期的にホコリを吸うようにしてください。ローテーションさせるためのハンドルと、內部の通気を促すベンチレーター
- Q7マットレスを選ぶコツを教えてください。
- A
寢心地を実際にショールームで試すことをお勧めします。
理想的な寢姿勢は、立っている時に比べて腰椎のカーブが4割ほど緩やかになった狀態です。しかし異なる體勢での睡眠に慣れている場合、無理やり矯正すると體に不具合が生じます。マットレスを中心に、ベッドパッドや敷毛布での調整が有効です。
日本ベッド製造のショールームでは、睡眠のプロフェッショナル「快眠マイスター」から的確なアドバイスを受けることもできます。 - Q8マットレスの耐久年數ってどのくらいなの?
- A
実際には20年程度利用している方も多いようですが、衛生的な観點からも適度な買い替えがお勧めです。
業界として一般的な目標値は10年程度。スプリングより、ウレタン層やキルティングの部分などが劣化してしまうためです。これはあくまで製品の耐久年數ですが、10年スパンで見直すことでユーザーの體型や好みの変化にも適切に対応することができます。間違っても「マットレスに體を合わせる」ことの無いようにしたいですね。
日本ベッド製造株式會社
■日本ベッド 池上ショールーム
- 住所/
- 東京都大田區池上5-6-3
- TEL/
- 03-3754-6782
- 定休日/
- 火曜日、水曜日、年末年始、夏季休館日
- 営業時間/
- 10:00 AM~5:00 PM
■日本ベッド 青山ショールーム
- 住所/
- 東京都港區南青山1-1-1 新青山ビル東館1F
- TEL/
- 03-3423-1886
- 定休日/
- 水曜日、年末年始、夏季休館日
- 営業時間/
- 10:00 AM~6:00 PM
取材撮影協力 / 日本ベッド製造株式會社
2018年8月現在の情報となります。