2020年は65歳以上の6人に1人、そして2025年には5人に1人に増えると予想される認知癥※1。
誰でも発癥する可能性があり、認知癥になってしまうと、
本人はもちろん介護する家族も困ることが多くあります。
事前に対策をしておくことが、家族全員の安心につながります。
※1 參考:「日本における認知癥の高齢者人口の將來推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科學研究費補助金特別研究事業 九州大學二宮教授より)內閣府作成
認知癥になったら口座からお金が引き出せなくなる?
認知癥になると日常生活に支障をきたすだけでなく、社會的な契約行為などもできなくなります。例えば、銀行からまとまったお金を引き出すとき、窓口での本人の意思確認が必要になりますが、認知癥で意思能力が低下していると判斷された場合には、お金を引き出すことができません。相続では相続人の中に1人でも認知癥の人がいると「遺産分割協議」ができません。また、不動産の売卻も自由にできなくなります。このようなことにならないように事前に手続きしておくことで、備えられることもあります。
銀行や保険などの契約內容やデジタル関係の情報を家族と共有
すぐに備えておきたいのは、金融機関や保険などの契約內容や連絡先を家族と共有しておくこと。エンディングノートを作成しておくのもよいでしょう。最近話題になっているのが、デジタル遺産。インターネット上での取引や契約について、IDやパスワードなどがわからないため解約できないだけでなく、実際の契約さえ誰も把握しておらず、殘されたままになっているという問題です。インターネット上の契約はもちろん、解約方法なども事前に家族と共有しておくと安心です。
早めに手続きをしておけば安心
家族がお金を引き出せる「代理人指名手続」
銀行の普通預金に適用できるものに「代理人指名手続」や「代理人キャッシュカード」があります。指定された家族等が代理人としてお金を引き出すことが可能なサービスです。ただし、この手続きは預金者本人が窓口で行い、本人に判斷能力があることを確認する必要があります。窓口での手続きが必要な定期預金も解約して普通預金に移しておくと、このサービスが使えます。これらの制度は、銀行によって、名稱やサービス內容が異なります。事前に利用している金融機関に確認しておきましょう。
家族全員が遺言書を作成しておくと相続がスムーズ
亡くなった人が遺言書を作成していない場合、相続人で遺産分割を話し合う「遺産分割協議」が必要となります。このとき、相続人の中に認知癥の人がいると協議ができません。認知癥の人に「法定後見人」をつける必要が生じ、相続に時間も費用もかかることになります。遺言書があれば、認知癥の人がいても、遺言書通りに遺産を分けることができるので、家族全員が遺言書を書いておくと安心です。
「任意後見制度」で希望どおりの不動産売卻が可能に
認知癥になった後に資産管理などをするためには「法定後見制度」を利用するしかありません。法定後見制度は、基本的に財産維持が目的なので不動産の売卻などは相當な理由がないとできません。これに対して「任意後見制度」は、認知癥になる前に後見人を自分で決め、どのように財産を管理するかも決めておくことができます。「介護狀態になったら、自宅を売卻してその資金で有料老人ホームに入居する」といった內容で任意後見の契約をしておくと、そのとおりに自宅を売卻することができます。
ファイナンシャルプランナー 福一 由紀
※掲載の情報は2021年9月時點のものです。內容は変わる場合がありますので、ご了承ください。