暮らしにいいものを探して vol.20倉敷美観地區(qū)へ【後編】
倉敷民藝館で知る、
用の美

獨(dú)自の文化を育んだ町で
民藝の世界に觸れる

白壁に黒い貼り瓦、川沿いの柳並木が美しい倉敷美観地區(qū)。その一角に位置する倉敷民藝館は1948年に開館。國內(nèi)で2番目に誕生した民藝館として知られます。

東京に次いで倉敷に創(chuàng)設(shè)されたのは、古くから民藝運(yùn)動(dòng)と深いつながりがあったから。それは倉敷の町の成り立ちにも関わっています。

倉敷美観地區(qū)を流れる倉敷川。江戸時(shí)代は運(yùn)河として活用され町の繁栄を支えた。

「倉敷は天領(lǐng)地として栄えた歴史から民間主導(dǎo)の気風(fēng)が今なお強(qiáng)く殘る町なんです。明治になると民間がアイデアを出し、資本を提供し、紡績會(huì)社を興し、新しい基幹産業(yè)を生み出したんです」と倉敷民藝館館長補(bǔ)佐?柳沢秀行さん。

紡績會(huì)社の二代目?大原孫三郎は町に新しい工蕓運(yùn)動(dòng)を興すことも見據(jù)えて「倉敷文化協(xié)會(huì)」を開設(shè)。その協(xié)會(huì)が1920年代に柳宗悅を中心にした民藝運(yùn)動(dòng)と早くから関わるようになりました。

「大原家というのは新しい価値観を創(chuàng)出するのが大好きでしたから。民藝運(yùn)動(dòng)は、『上手物（じょうてもの）』に対して、民衆(zhòng)の生活を支えた名もなき作り手による『下手物（げてもの）』と呼ばれていたものにスポットを當(dāng)てた。そういった価値転換をはかる試みに惹かれたんでしょうね」

東京の日本民藝館をも援助した大原孫三郎、その息子の總一郎もまた、戦中の厳しい時(shí)代に支え続けるなど、大原二代は民藝運(yùn)動(dòng)を深く支援します。そして戦後間もない1948年、倉敷民藝館が開館。江戸時(shí)代の古い蔵を活用した建物には、古今東西の民藝品が集められ展示されました。

初代館長であり、自らも染織家であった外村吉之介の言葉を借りれば、民藝の心とは「用即美」、「用の美」といわれる感性を持つこと。

「さまざまな解釈がなされますが、『日々使うものが、そこにある美しさを見いだしてほしい』『美しいと思うものを生活に取り込んでほしい』ということですね。質(zhì)が高いなとか、心躍るなとか、このうつわに口をつけたらスッと心和むなって。そういう感覚的なものを一切含めて『美』と言ってしまっていいんだと思います」

1階、外村吉之介が記した掛け軸の前で。「用の美はまずわかりやすく言えば実用品の美。さらに踏み込めば、使うという出來事、行為そのものが美しいということ」と倉敷民藝館館長補(bǔ)佐?柳沢秀行さん。

岡山のものから、
古今東西のものまで
民藝品が集まった展示室へ

倉敷民藝館入り口から。門をくぐると、白壁に黒い貼り瓦の建物がコの字型に連なる。

民藝品にさりげなく生けられた花に迎えられる。

柳宗悅らは各地を巡り、過去に遡って自分たちが素晴らしいと思うものを集めました。「同時(shí)に、各地の生産拠點(diǎn)も巡って、てこ入れしたんですね。ここでは全國から集められたものだけでなく、てこ入れされて新たに生まれてきたものを積極的に紹介し販売することを大事にしてきました」

民藝は現(xiàn)代にも綿々と続くもの。展示品にはかつてあったものや途絶えてしまったものもあれば、現(xiàn)代のものも。新たな作り手によって、時(shí)代に沿う姿で、民藝の心が受け継がれているのがわかります。
それでは展示の一部をご紹介しましょう。

岡山の民藝品

2號(hào)館2階?地元、岡山の民藝品を集めた常設(shè)展。「県南は江戸時(shí)代から干拓された土地では塩分が多く米ができない、だからイ草栽培が盛んで畳表やイ草籠が作られたんです」。ほかにも土地ごとの材で作られ続けたものが並びます。

備前焼や羽島焼、イ草の織物や緞通（だんつう）、倉敷ガラスなど岡山の民藝品がずらり。古い建物にもなじんでいる。

倉敷の酒津焼。たくさんの窯の総稱として呼ばれたが、昭和の時(shí)代には作家名で焼く人も現(xiàn)れた。新舊の作品がケース內(nèi)に並ぶ。現(xiàn)代の窯元の作品は売店で購入できる。

クリスマスのオーナメントを吹いていたガラス職人の小谷眞三さんが、外村吉之介や関係者に支えられてグラスを作ったことを機(jī)に倉敷ガラスを興したという。深みのある靜かな青は「小谷ブルー」として世界に知られている。

世界の籠

3號(hào)館2階?世界各地の籠を集めた常設(shè)展。暮らしの道具でありながら、美しい佇まいに圧倒される展示。創(chuàng)意工夫の素晴らしさにあらためて気づかされます。「今は作り手が本當(dāng)に減ってしまいましたが、もしそういう方たちが見たら、この部屋はもう寶物。ものすごいリソースだと思いますね」

形も佇まいも異なる數(shù)々の籠が圧巻。これは何に使うための籠だろうかと思わず想像してしまう。

「世界の籠」から、上は柳とつるで編まれたイギリスの手提げ籠、下は竹で編まれた産地不詳の手提げ籠。

籠以外の編組品なども並ぶ。用に耐え得る形や機(jī)能、そのためだけに存在するものの美しさ。わが家にも置いておきたい気持ちになる。

いろりの部屋

3號(hào)館1階?畳に囲爐裏のある和空間とウィンザーチェアなどを配した洋空間では企畫展を開催。畳に上がったり、椅子に座ったりが可能。「展示品であっても花を生けたりします。そういうあり方によって、見る人の暮らしの中に、おお！と気づきをもたらすことができたらと思っています」

手前の洋空間には順番に腰掛けてみたくなるイギリスや日本各地から集められた椅子が並ぶ。使い込まれた姿が美しい。

和空間は昔ながらの空間を保存する意図もあって造られたそう。「戦後、岡山の民藝運(yùn)動(dòng)の一環(huán)で建築が注目され、なくなっていくものをきちんと殘すということが重視されていたんです」

取材時(shí)は倉敷の「羽島焼」を特別企畫展示。戦後、酒津焼の職人?小河原虎吉が岡山県民藝協(xié)會(huì)の後押しを受けて開いた窯。各地の焼き物の要素を生かした多様なうつわが數(shù)多く焼かれたという。

暮らしから生まれた民藝品の展示が
今の暮らしへのプレゼンテーションに

館內(nèi)にはそのほか企畫展や常設(shè)展の部屋が続き、3つの棟を巡るようになっています。さまざまな展示品にはごく最小限の説明のみ付けられ、自ずと、ものそのものと向き合うように誘導(dǎo)されます。

「世界の金工品」の展示から。入れ子に出來るグアテマラの分銅、材料は真鍮。

外村吉之介による書籍『少年民藝館』掲載作品から選んでの展示。寫真はアメリカ?ナヴァホの敷物、ペルーの肩掛け袋など。

「美術(shù)館というと理解しなきゃいけないっていうアプローチになりがちですが、ここにあるものは使うものですから。理解する行為ではなくて、それがスタートになってほしいんです。『これにパスタを盛ってみたいな』とか『これで一杯飲みたいな』とか、その人のイマジネーションとかクリエイティブな感覚が発動(dòng)する、それが理想で、民藝の根底にある『生活の質(zhì)を上げる』に通じるものだと思っています」

昔のものを懐かしむだけでなく、「跳び箱の踏み切り板のように」きっかけにしてほしいとも。外村吉之介が當(dāng)時(shí)殘した言葉――民藝館の役目は、誰でも何時(shí)でもできる「美しい生活」をひろめることである――その精神は受け継がれ、今もなお訪れる人々に、特別な時(shí)間を提供しています。

自分の暮らしにも民藝を。
使ってみたいと思ったら

1階の売店では岡山や西日本を中心に各地の民藝品を販売しています。數(shù)々の展示を見てイマジネーションが湧いたら、暮らしにも取り入れて。使うことで、毎日が少しずつ変わっていくさまを楽しみましょう。

「倉敷美観地區(qū)にはほかにも民藝やクラフトに関わる店が本當(dāng)に數(shù)多くあります。ぜひいいものと出合ってほしいですね」

焼き物や織り物、染め物など多様なものがそろう。丁寧に作られたものは今の暮らしにもなじむ。

熊本県のまゆみ窯の陶器。皿1,800円～、湯呑み1,980円～ほか。

周辺には寄ってみたい
見どころもいろいろ

風(fēng)情のある町並みも楽しんで。街燈がともる夕景も素?cái)场?/p>

「美術(shù)館はよどんだ倉庫ではなく、生きて成長しなくてはならない」と、今を生きる人に意味のある美術(shù)館を目指した大原總一郎。そんな理念に基づいた大原美術(shù)館の工蕓?東洋館では、民藝運(yùn)動(dòng)を主導(dǎo)した濱田莊司や河井寬次郎、棟方志功らの作品も見られます。ほかに倉敷考古館、日本郷土玩具館などミュージアムが點(diǎn)在。さまざまな視點(diǎn)から倉敷を知ることができます。