「土地の広さにあわせた土地活用術とは?」
土地活用における利回り、立地、相続対策等の考え方
公開日:2016/03/31
利回りが高ければよいというわけでもない
不動産投資を行う時に、同じ金額を投資するならば「収益力が高い物件に投資したい」そう考える方は多いのではないでしょうか。
この時に、多くの方が想定する利回りは、投資する不動産(賃貸住宅やマンション、商業ビルなど)の入居が満室となった場合の、年間の賃料を不動産投資価格で割った「表面利回り」になります。表面利回り10%か15%といわれると、昨今の低金利下では投資魅力が非常に高く映ることでしょう。
しかし、果たしてこの表面利回りを見て判斷することがよいかといえば、そういうわけでもありません。なぜならば、表面利回りが高い場合にはリスクも高くなるケースが多いからです。例えば、大都市の中心部に土地を所有するか、地方都市の近郊で土地を所有するかでは同じ投資金額でも利回りは異なります。
一般的には、都心では立地がよければ入居希望者も多く、將來の賃料の値上げも見込めるでしょう。そのため都心の方が、土地価格が高く、利回りは低くなります。それでも買いたい人は多くいるため、場合によっては転売することも容易かもしれません。
一方、地方都市近郊などでは、都心と比べると利回りは高くなります。そのため、収益性に注目される、土地をご所有の方にとっては、賃貸住宅やマンション投資などにより満室に近い運用ができるのであれば魅力的といえるでしょう。ただし、人口の減少が続く地域では地価が下落するおそれがありますし、空室になった場合には次のご入居者が決まるまで時間がかかる可能性もあります。
「利回り」という観點で見た場合、どうしても不動産価値が高い地域では利回りが低くなります。ただし、土地所有者の場合、すでに土地をお持ちですから、不動産価値が高い地域でも利回りは高めで運用できる場合があります。また、地方近郊であっても、「ペットと戯れることができる家」などの特色を打ち出すことで、利回りを高く維持できる場合もあります。運用という観點から見た場合には、単純に収益ではなく費用を差し引いた実質利回りで見ることが重要ですし、その後の空室リスクなども考えたうえで土地活用をどうすべきか考えていくべきでしょう。いかに空室を減らし、収益を得るかを検討すべきです。
いかに評価額を引き下げるか
相続対策という観點から見た場合の土地活用はどのように考えるべきでしょうか。この場合、どの土地を誰に相続させるかという観點と、相続稅の軽減をいかに図るかという観點で検討していくべきです。
相続という観點でいえば、長男に住居や會社を、次男には収益物件をといった相続の仕方を考えることができます。特に事業を行っている場合には、その事業を継ぐ方にその関連の土地や建物は相続させるべきでしょう。そして他の土地を他の相続人に相続させることで事業の継続的発展を図りながら、「家」の発展も行うことができることでしょう。この時に、事業を受け継がない相続人に対しては、できれば収益物件を相続させることを検討すべきです。これは、相続人の負擔を軽減し、むしろ収益を増やし土地を守ることができるようにするためです。
一方、相続人の負擔にならないかどうかを配慮すると同時に、相続稅の軽減も検討していかなければなりません。預貯金や現金での相続は、相続稅評価が額面通りの評価となってしまいますが、不動産の相続稅評価は土地活用をうまく行うことで相続稅評価額を引き下げることができます。
例えば、賃貸住宅の敷地の場合は「貸家建付地」に該當しますので、土地の評価額を時価の8割程度におさえることができます。さらに、賃貸住宅の場合、事業用土地に該當することから、「小規模宅地等の評価減の特例」により、200m²までの土地に対して50%評価額を軽減できます。
【事例】更地の評価額が1億円(200m²)のケース
- (1)更地のままであれば、土地の評価額は1億円
- (2)更地の上に賃貸住宅を建設した場合(借地権70%、借家権割合30%とする)は、土地の評価額=更地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)となり、1億円×(1-70%×30%)=7,900萬円となります。
- (3)小規模宅地等の評価減が適用される場合は、土地の評価額は50%減(200m²まで)となることから、土地の評価額=7,900萬円×50%=3,950萬円となり、本來の評価額よりも6,050萬円も引き下げが可能!
このように、1億円の評価額を3,950萬円まで引き下げることができる場合もあります。これは、賃貸住宅など人に貸す建物を建設した場合が該當します。更地のままではこうした評価減を行うことができません。
相続稅は、こうした評価額を引き下げた後の金額に対して課稅されますので、土地をうまく活用することが、いかに重要かがお分かりいただけると思います。
相続稅対策といった観點では、まず誰に相続させるのか、そしていかに稅務対策を図るかをまず検討すべきでしょう。
運用重視であれば土地を持つ地域の分散なども検討しながら、収益確保を目指すべきです。
一方、相続対策重視であれば、いかに今の土地を守りながら次世代へ相続していくかを重視すべきです。いずれにせよ、更地よりも賃貸住宅建設など土地をうまく活用していくことが求められます。