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コラム vol.076

家族信託®を活用した新しい財産管理と相続?認知癥対策 vol.4
「認知癥対策信託」の活用とは?

公開日:2015/08/31

ステージIIIの悩み:「認知癥対策」を家族信託で実現

我が國は世界的な長壽國家です。それはとても素晴らしいことではあるのですが、その半面として、認知癥になってしまう人が年々増えてきています。
また、我が國では「隠居」が、法律上の制度として認められていませんので、その結果として多額の財産を持った狀態のままで認知癥になり、その後の財産管理に苦慮するというケースが多く見られます。
既存の法律による認知癥対策として、成年後見制度があります。

これは、家庭裁判所への申し立てによって後見人が選任される「法定後見」、または事前に契約でもって後見人の人選を決めておく「任意後見」で構成されており、確かに認知癥になって自らで意思決定ができない人に代わって契約等の法律行為を代行したり、あるいは悪徳商法にだまし取られた財産を取り戻したりするなどの重要な役割がありますが、こと「財産管理」に関しては、殘念ながら極めて不十分な制度であると言えます。

例えば、財産を持っている人が認知癥になって後見人が付いた場合、後見人は必要最小限の預金の出金ができる程度で、孫に生前贈與するとか、新たに建物を建てるといった稅務対策などは一切できず、いわば財産を現狀維持することしか許されないことになっており、結果として財産は凍結狀態となったままで相続の日を迎えるのです。
そこで、家族信託の「財産分離機能」の出番がやってきます。

認知癥対策信託の活用

例えば、親のAさんが高齢になって、自宅を離れて介護施設に入所することになり、子のBさんが親の自宅を売卻して、入所費用や介護費用を工面しようと考えたとしましょう。
もちろん、Aさんが心身ともに元気なうちは、自らで契約書に署名捺印すれば済むことですが、Aさんが認知癥になってしまい後見人が付いた場合は、自宅不動産の売卻は家庭裁判所の許可事項となり、余程の理由がなければ財産の活用が許可されることはありません。
自宅は売卻できず、結局はAさんの相続まで、財産は「塩漬け」狀態になることが濃厚となってしまうのです。

家族信託の「財産分離機能」とは、當初の所有者が、自分の意思で財産を自由に切り分けて、信託するも良し、しないも良し、また信託する財産についても財産それぞれによって別のルートを作ることが自由にできるという機能です。

図表1:家族信託の4大機能

この事例であれば、Aさんの財産のうちの自宅不動産についてはBさんを受託者として、その受益権を処分して金銭に換える権限を受託者に與えておけば、Aさんが認知癥になった後も、後見人とは関係なく受託者であるBさんの裁量で不動産を売卻することができ、その売卻代金は「金銭信託」となって、引き続きAさんのために使うことができるようになるのです。

もし、Aさんに別の財産、例えば株式とか投資マンションなどがあれば、それぞれ別々の信託契約をしてBさん以外の子たちを受託者とすることもできますし、さらに信託しない預貯金を多少殘しておけば、それを年金の受取口座にして日常生活の費用に充てて、その部分に関しては後見人に任せるといったことも可能となります。
さらに、この事例でAさんが自宅を出てから早い時期に売卻できたなら、自宅不動産の売卻として、所得稅に関する各種の控除を受けることもできます。
また、萬一に売卻できないまま相続になってしまったとしても、二次受益者をBさんにしておけば、自宅不動産は遺産分割協議の対象とはならず、確実にBさんに受益権が移動することになります。

認知癥後の相続対策

Aさんが元気なうちにBさんと家族信託契約を締結しておけば、その契約內容を工夫することによって、Aさんが認知癥になって後見人が付けられた後も、遺言の作成や生命保険への加入、あるいは新規の借財といった、絶対に本人でなければできない法律行為を除いて、元気な頃と同じような相続対策を実行することが可能となります。

例えば、信託契約であらかじめ決めておけば、信託された金銭を使って新たな建物を建築することや、値上がりした株式を売卻すること、さらに一定の條件の下で教育資金や結婚資金等の生前贈與を実行することも不可能ではありません。
また、Bさん以外の子や親族に「受益者代理人」という役割を與えておくことによって、Aさんが認知癥になった後も一定範囲での信託契約の変更も可能となり、実に柔軟な財産管理を実現することもできるのです。

注:「家族信託®」は、一般社団法人家族信託普及協會の登録商標で、著者は権利者からの特別の許諾を得て本文中にて使用しております。

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