食は「生きるチカラ」を育む基本。それを子どもに伝えるのが食育です。
食育とキッチンとの関係について、前編?後編の記事でお屆けする本特集。
前編では食育?食文化 料理研究家の坂本佳奈さんに、
食育の意義や、家庭での食育のポイントについて解説いただきます。
Profile
食育?食文化 料理研究家
サカモトキッチンスタジオ主宰
坂本 佳奈さん
食育?料理研究家、坂本廣子さんの長(zhǎng)女として生まれ、家庭においての臺(tái)所育児で育つ。子どもを?qū)澫螭趣筏渴秤侠斫淌窑蜷_催し、ハンズオン(體感)教育を食育の分野で実踐する。兵庫(kù)県立姫路工業(yè)大學(xué)(現(xiàn)?兵庫(kù)県立大學(xué))工學(xué)部卒業(yè)(工學(xué)士)、大阪市立大學(xué)生活科學(xué)部大學(xué)院食?健康コース前期博士課程修了、學(xué)術(shù)修士。一般社団法人キッズキッチン協(xié)會(huì)副會(huì)長(zhǎng)、近畿米粉食品普及推進(jìn)協(xié)議會(huì)副會(huì)長(zhǎng)、高島市食育推進(jìn)協(xié)議會(huì)委員長(zhǎng)、テンペ研究會(huì)理事、食と農(nóng)の応援団団員、伝統(tǒng)食品研究會(huì)會(huì)員。
食育とは「食」を通じて世の中のさまざまなことを?qū)Wぶこと
「食育とは?」と聞かれたら、皆さんは何をイメージするでしょうか。「いただきます」「ごちそうさま」をきちんと言う、箸を正しく持つ、ご飯とおわんを正しい位置に配膳する…そんなことを想像するかもしれません。実はそれらは食育のほんの一部。「食」を通じて、世の中のいろいろなことを広く學(xué)んでいくことが食育だと私たちは捉えています。
「食育」という言葉が広く知られるようになったのは、2005年に制定された「食育基本法」がきっかけでしょう。健全な食生活を取り戻すために制定された法律ですが、私たちの教室では以前から「見る、聞く、觸る、匂いをかぐ、味わう」の五感を使った體験型の食育教育を行ってきました。
例えば、ある日の教室のテーマは「お米について知ろう」でした。子どもたちに稲を見せて「これは何?」と質(zhì)問するところからスタート。稲は田んぼで育つこと、私たちが食べているのは稲の実の部分であることを説明し、実際に籾(もみ)に觸れて匂いをかいでもらいます。
食材のことを知ってから、調(diào)理して味わい、片付けをするところまでが食育料理教室の流れです。別の日には丸鶏を解體して、モモ、ムネ、ササミと分けて調(diào)理したり、イカをさばいてイカ豆腐を作ったりしたこともありました。
調(diào)理する、栄養(yǎng)を?qū)Wぶ、食材の旬を知る、食文化を?qū)Wぶこともすべて食育です。食育とは「食」を通じて生活そのものを?qū)Wぶことなのです。
食育によって身につけられるチカラとは?
五感を使った食育によって、子どもたちのどんなチカラが育まれていくのでしょうか。
探究心が育まれる
食育料理教室では材料に觸れるところからスタートします。一方的に教えるのではなく対話を重視するので、「この食材はどんなところで育ったんだろう」「どうやって調(diào)理をするのかな?」といった疑問が浮かび、それを知りたいという気持ちが自主的に芽生えます。教科書で教わるのではなく、目で見て觸れる実體験は、子どもたちの探究心を育みます。
感性が豊かになる
食育料理教室でクッキーを作ったときに、粉ふるいにかけた小麥粉が落ちるのを見た子どもたちが「きれい?」「雪が降っているみたい!」と歓聲をあげました。大人が思いつかないような素晴らしい感性を見せてくれるのが子どもたちです。料理は五感を刺激して子どもの感性を豊かにします。
自己決定能力&自己肯定感を育む
一言で料理といっても、材料をそろえる、レシピを考える、食材を切る、食べる、片付けるといった工程があります。例えば、豆腐をどのくらいの大きさに切るか、ちくわを輪切りにするか斜め切りにするかといった細(xì)かなところまで、料理をすることは決斷の連続で、作り手に裁量があります。もし、あまりおいしくないものが出來上がっても、自分で食べ切ることで、ある意味責(zé)任を取ることになります。料理をすることは子どもの自己決定能力を育むと考えています。
また、「おいしかったよ」「きちんと片付けもしてくれてありがとう」などと、いろいろな場(chǎng)面で子どもを認(rèn)める聲かけをすれば、自己肯定感も育まれるでしょう。
危ないものの扱い方を?qū)Wべる
キッチンには火や包丁など、子どもが觸れると危険なものがたくさんあります。「觸っちゃダメ」と遠(yuǎn)ざけてしまいがちですが、隠せば隠すほど子どもの興味をひいて、こっそり觸ってしまうかもしれません。子どもが興味を持ったときは、危ないものだと教えるチャンスです。「料理に使うものだけど、危ないから、お父さんやお母さんがいるときに使おうね」「こうすれば安全に使えるよ。今度一緒にやろうね」と教えてあげてください。
食への関心が薄れる?現(xiàn)代の食卓における課題とは
物価高でさまざまな食材が急激に値上がりしています。栄養(yǎng)価が高く安価な食材の代表である卵も価格が高騰し、鳥インフルエンザの影響で品薄になった時(shí)期もありました。世界的な物価上昇が起きている今、これまで普通に手に入っていた食材が急激に高くなったり、品薄になったりということが將來的に起こることが予想されます。
現(xiàn)在の日本では、家に食材がなくても、スーパーやコンビニに行けばすぐに手に入ります。この「何でもすぐに手に入る狀態(tài)」を、子どもたちが當(dāng)たり前と思ってしまうことに私は危機(jī)感を抱いています。
例えば、牛乳は出産した雌牛のお乳を人間が分けてもらっているもので、安定供給のために計(jì)畫的に酪農(nóng)家が乳牛を繁殖させています。パンは小麥粉に水とイーストを加えて発酵させ、時(shí)間をかけて作られます。醤油は蒸した大豆に小麥、塩を加えて1?3年ほど熟成させるのが伝統(tǒng)的な製法です。
一度でも手作りした経験があれば食を「自分事」として捉えられるので、たくさんの命や時(shí)間、手間がかかったありがたいものであることを理解しやすくなるでしょう。また、將來的に特定の食材が手に入らない事態(tài)になっても、原理がわかれば他のもので代用したり、手作りをしたりと、たくましく生きるチカラにつながります。
食料を外國(guó)からの輸入に頼っている日本では、世界で起きる出來事によって食材の価格が変動(dòng)しやすいです。近年の小麥価格の上昇は記憶に新しいところでしょう。また、気候変動(dòng)によって特定の魚が不漁になったり、果物の価格が高騰したりといったことも起きています。食に関心を持つことは、そこにつながる生活や政治、環(huán)境問題などにも関心を持つことと同じです。小學(xué)校高學(xué)年くらいになったら、そうした話をしていくことも食育の一環(huán)です。
味噌や梅干し、おはぎなど、実は簡(jiǎn)単に作れるものでも、「買ってきたほうが安くて手軽」という理由で、現(xiàn)代の家庭で作らなくなってしまったものがたくさんあると思います。そうしたものを親子でぜひ作ってみてほしいと思います。
家庭での食育を考えるときのポイントとは?
家庭で食育を行うときの大切な注意點(diǎn)があります。それは親が先生になって教え込もうとしてはいけないということ。いくつかのポイントを解説します。
子どもが興味を示したときが食育のチャンス
學(xué)ぶことは真似をすることから始まります。「食育をしよう」と肩ひじを張らず、まずはおうちの方がやっている普段のキッチン仕事を、子どもに見せることから始めてみてはいかがでしょう。
子どもが「何を作っているの?」と興味を示したときが絶好の機(jī)會(huì)。レタスをちぎる、いんげんの筋をとる、ピーラーでニンジンの皮をむく、卵を割るなど、子どもができる範(fàn)囲で手伝ってもらいましょう。「今日は時(shí)間がなくて教える余裕がない」という日もあるでしょう。教えるのは、大人に時(shí)間と心の余裕があるときで大丈夫です。
子どもが自然と手伝いをしたくなるようなキッチン環(huán)境を整えておくといいですね。お手伝い用の踏み臺(tái)をすぐに取り出せる場(chǎng)所に用意する、親子が並んで作業(yè)ができるスペースを確保する、大人がご飯を作っているのが自然と目に入るオープンキッチンにする…など。ホットプレートをダイニングテーブルに出して、そこで食材を切ったり炒めたりして、家族を自然と巻き込んでいくのもおすすめです。
スーパーの惣菜もOK。大切なのは家族が一緒に食卓を囲むこと
忙しい日はお店で買ってきたお惣菜が食卓に上がることもあるでしょう。それでいいと思います。家庭の味にこだわる必要はありません。家族が同じものを食べながら、「これは●●のお店で買ったんだよ、おいしいね」などと話しながら、家族が一緒に食卓を囲むことが何よりの食育です。
ただ、出來合いのものは調(diào)理過程が見えず、食材や生産現(xiàn)場(chǎng)を想像する機(jī)會(huì)が減りがちです。それに、味付けが濃いので毎日は食べられません。時(shí)間がある日は簡(jiǎn)単でいいので、おかず+ご飯+お味噌汁の一汁一菜の家庭の料理を子どもに食べさせてあげてください。米をとぐ、浸す、炊き上がって湯気が出るといった工程を見せて教えます。
現(xiàn)代は、手軽な丼ものやサンドイッチなどで食事を済ませることが増えて、伝統(tǒng)的な一汁一菜の食事をする機(jī)會(huì)が減っています。伝統(tǒng)的な日本の料理は、日本の気候風(fēng)土に合ったものなので、子どもに伝えてほしいと思います。
好き嫌いは無理強(qiáng)いしない
子どもの好き嫌いや、食の細(xì)さに困っている親御さんは多いのではないでしょうか。嫌いなものでも子どもに料理をしてもらうと「僕(私)が調(diào)理したピーマンだからがんばって食べる!」と克服できるケースはあります。
一方で、嫌いなものを強(qiáng)制されるほど食べなくなるという研究データがあります。どうしても食べてほしい食材は「一口でも食べられたらOK」とハードルを下げるか、栄養(yǎng)素的に他のもので代用できるなら、克服することにこだわる必要はありません。
また、食の細(xì)い子には「自分が食べ切れると思う量」を自分で盛り付けてもらいましょう。自分で決めて、自分でやり切る自己決定能力を鍛えられるいい機(jī)會(huì)です。
子どもには「本物」を食べさせる
「子どもだから、単純な味付けが好きなはず」と決めつけていませんか?「子どもにはまだもったいない」と、大人がこっそり食べるものの味こそ、子どもに食べさせてほしいです。「子どもが大人になってからどんな食生活を送ってほしいか」を考えて、それを小さい頃から食べさせていくのが食育です。
子どもとスーパーに買い物に行く
時(shí)間に余裕があるときは子どもと一緒にスーパーに出かけてみてはいかがでしょうか。食に関する知識(shí)を増やしたり、子どもに食材を選ばせる體験をさせたりと、スーパーは絶好の食育の場(chǎng)です。新鮮な野菜の見分け方を教えたり、生鮭と塩鮭の違いを教えたり、醤油売り場(chǎng)で「家で使っている醤油はどれでしょう?」とクイズを出したりと、親子で楽しみながら食を?qū)Wぶことができます。
まとめ
「実體験をどれだけ積み上げられるか」が食育には大切だと坂本さんは話します。これから家を建てる方は「食育」という視點(diǎn)も踏まえてキッチン空間を考えてみてはいかがでしょうか。本特集の後編では、今回の坂本さんのお話を基にダイワハウスの設(shè)計(jì)士がキッチンを設(shè)計(jì)。「食育が促進(jìn)されるキッチンの在り方」について、図面を囲みながら坂本さんと対談します。