コラム vol.065
生前に行うべき相続対策
~資産管理會社の活用~
執筆:公認會計士?稅理士 高桑昌也
公開日:2015/03/18
今回は「資産管理會社」について紹介します。
「資産管理會社」と聞いてもあまり馴染みがないかも知れません。また「ひと握りのお金持ちのためのもの」というイメージが強いかも知れません。しかし最近ではビジネスパーソンの方でも、副業での収入や投資不動産をお持ちの方は資産管理會社を作ることがあります。
資産管理會社のメリット
資産管理會社のメリットとしては、以下のようなものがあります。
- (1)生前贈與に使いやすい
現金や不動産の譲渡でなく、資産管理會社の株式をお子さんに譲渡することにより、生前贈與をスムーズに使うことができます。 - (2)経費を使える
資産管理會社では、電話代や光熱費、交通費、飲食代などが経費の対象となります。また、生命保険の保険料(全部または半分)を経費として計上することができます。 - (3)給與を支払うことができる
ご家族を役員や従業員にすることで給與に計上することができます。また支給されたご家族の方も給與所得控除や基礎控除(控除額合計で103萬円~)を受けることができます。 - (4)欠損金の活用
法人で赤字を出した場合、その赤字を翌年度以降に持ち越して、翌年度の利益と相殺させることができます。最大9年まで繰り越すことが可能です。個人の場合は3年が限度です。 - (5)稅率が個人と比べて低い
個人の場合、所得稅が最高45%(総合課稅の場合)かかります。住民稅を含めますと最高55%です。一方、法人の場合、法人稅と事業稅、住民稅を合わせても33~35%程度(地域により若干異なる)です。
このようにさまざまなメリットのある資産管理會社ですが、この中で特に注目すべきなのは「(1)生前贈與に使いやすい」です。
例えば、お子さん(30歳)が1億円のマンションを買おうとして、親御さんからお子さんに5,000萬円分の不動産取得資金を贈與することを考えます。普通に現金で5,000萬円を贈與するとなると、
贈與額5,000萬円×稅率55%-控除額640萬円=贈與稅額2,110萬円
※贈與稅の速算表は第4回目の記事を見てください。
※住宅取得資金贈與の非課稅枠は考慮していません。
と、かなりの稅額が発生してきます。これだとお子さんに贈與するのもためらわれてしまいます。
この稅金を、資産管理會社を活用することで減らすことができます。一體、どこまで減らすことができるのでしょうか。
資産管理會社の活用手順
主に以下の手順で行います。
- (1)親御さん名義で資産管理會社を作る。
- (2)その資産管理會社に親御さんが5,000萬円出資する。
- (3)その資産管理會社で銀行から借入を行う(5,000萬円)。
- (4)資産管理會社にたまったお金で、1億円のマンションを購入する。
- (5)親御さんが持っている資産管理會社の「株式」をお子さんに譲渡する。
(5)でお子さんが親御さんに支払う金額(株式の価値)は以下のような算式で求めることができます。
(A)相続稅評価額により計算した総資産価額-(B)相続稅評価額により計算した負債の額-(C)評価差額に対する法人稅額等相當(40%)
(A)はマンションの相続稅評価額となります。
第2回目の記事でお話ししましたとおり、不動産の相続稅評価額は実勢価格?購入価格とは異なります。
特にタワーマンションの場合、相続稅評価額が実勢価格?購入価格に比して、小さくなる傾向にあります。ここでは相続稅評価額を5,500萬円と仮定します。
(B)は、資産管理會社の借入の額です。この例では5,000萬円となります。
(C)は、「(A)(マンションの相続稅評価額)>実勢価格」の場合に、將來売卻時の法人稅部分(40%)を考慮するものです。ただし(A)(マンションの相続稅評価額)<実勢価格のような今回の場合には、0円とします。
今回の例だと、株式の価値は
(A)5,500萬円-(B)5,000萬円-(C)0円=500萬円
となります。
要するに、お子さんは500萬円を親御さんに支払うことにより、(贈與稅の負擔無く)資産管理會社と、その資産管理會社が保有する1億円相當の不動産を手に入れることができます(もちろん借入金もついてきますが)。
お子さんが資産管理會社の株主となりますので、親御さんが仮に亡くなられても、不動産部分は資産管理會社の名義のため、課稅されることはありません。また株式の所有者(株主)はお子さんなので、株式に課稅されるということもありません。
vol.066に続く