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コラム vol.249-5
  • 土地活用法律コラム

家族信託第5回 親やきょうだいへの切り出し方はどうしたらいい?

公開日:2018/09/28

POINT!

?遺言よりも信託のほうが心理的ハードルが低い

?事前に対策するうえで最も気をつけなければならないのは、親に接する態(tài)度

親は自分の認知癥や死を考えたくない

あらゆる契約行為(贈與や売買など)は、當事者に判斷能力がないとできません。信託に限らず、契約行為は家族が重度の認知癥になってからでは手遅れです。
ご本人が財産を家族や信頼できる人や法人へ託して、管理や処分をしてもらおうという強い意思を持っているうちに結んでおくのが望ましいのは、いうまでもありません。
しかし、頭で考えればそうだとわかっていても、認知癥になったり、亡くなったりした後のことをあらかじめ決めておくことは、気持ちの上で抵抗感を抱く人が多いのも確かです。
「遺言」と「遺書」は漢字が似ているので混同しているケースもあるようです。「遺言」は自分の死後の財産の扱いなどを示しておくものですが、遺書は死期が迫った人が書くもの。「『遺言』を書いて欲しい」と子どもから切り出したところ、「お前はオレを殺す気か!」と、いきなり親から怒られたと話すお子さん、実は多いのです。 親にしてみれば、「『遺書』を書いてくれ」と言われたと勘違いしたのなら、腹を立てるのも無理はありません。
認知癥と違って、『死』は誰にでも間違いなく訪れます。それでも『死』を直視できず、遺言を殘すことをためらうのが高齢者の心情です。認知癥について、あれこれと家族から言われて対策を取ることに、抵抗感を抱くのはやむを得ないのかもしれません。
また、信託では、不動産などの資産の名義が変わるため、『名義』にこだわる所有者にとっては、「自分の財産を生前に家族に奪われるのではないか!?」との疑念も頭をよぎります。そこで、私どもは「名義」と「財産権」を分けることが理解できるように、簡単なイラストを書いて、イメージを描いてもらいます。信託は名義を変えても、その中身まで家族へ移してしまうのではありません。
例えば、賃貸住宅ならば、名義を家族へ変えても、その家賃は元の所有者である親(委託者兼受益者)が受け取ります。
昔の「隠居」は長男に名義も財産も生前贈與で渡してしまいましたが、信託は名義だけ渡せばいいのです。利益の部分は親(委託者兼受益者)が受け取り、管理など面倒な役割は家族(受託者)が義務を負うことになりますから「現(xiàn)代版隠居」といったところでしょうか。90歳近い奧様に信託を「現(xiàn)代版隠居」と説明したところ、「それいいわね、それやるわ」と即決して頂いたこともあります。

遺言より心理的ハードルの低い家族信託

心理的には、遺言よりも信託のほうが圧倒的にハードルが低いといえるでしょう。遺言は死後の財産の帰屬を決めるために公証役場に行き、公正証書を作成する方法がメインなので、書類の準備や公証人との打ち合わせなど、段取りを組むのに「ひと苦労」します。
信託はその點、必ず公証役場でしなくてはいけない契約ではありません。
さらに、信託は「自分が生きている間に、自分や家族のために財産をどう役立てるか」という話をメインにすることができるので、遺言だけの手続きに公証役場へ行くよりは受け入れやすいでしょう。信託契約書はもちろん「遺言書」という表題ではありませんので、不吉なイメージは全くありません。また、信託の條項の中に「さりげなく」親が死亡した後は誰が財産を継ぐかも入っていますが、他にもさまざまな取り決めをしているので、自然な流れで契約へとつながります。
実際に、信託契約の前の週に打ち合わせでお會いしたお母様は、「遺言書は書きたくない!」と強く拒否していました。しかし、翌週に、死後の財産分配まで決められた信託契約書をお見せしたところ、全く違和感を持たなかったようで、スムーズに署名、捺印を行っていただきました。

親孝行の気持ちはきっと通じます

認知癥対策や相続対策について、事前に対策するうえで、最も気をつけなければならないのは、親に接するときの態(tài)度です。子どもにしてみれば、親が認知癥になったら面倒見るのは私だから、言うことを聞いてほしいと思い、上から目線で「お父さんがボケちゃったら私たちが大変になるから、今から準備しておいてね!」などと言おうものなら、逆効果です。
いくつになっても「親」は「親」。親を尊敬し、感謝する気持ちで接すると、親はその気持ちに応えてくれるようです。実際に、日頃から子どもに大切に扱ってもらっていると感じている親であれば、お子さんが遺言や家族信託の対策を切り出しても、すんなりと言うことを聞いてくれる人が多いと感じます。

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