今仲清の生産緑地シリーズ(3)生産緑地という農地はない?
公開日:2017/12/27
POINT!
?生産緑地は都市計畫法により指定された地區內にある農地のこと
?生産緑地は、所有者でも勝手に農地の転用(売る、貸す、建てる、借りる)はできず、通常の農地とは異なる
都市計畫區域(市街化區域、市街化調整區域)
昭和43年に制定された都市計畫法では、都道府県知事が、市または町村の中心の市街地を含みかつ一體の都市として総合的に整備、開発、保全を図る區域について「都市計畫區域」として「市街化區域」と「市街化調整區域」とを指定します。
- ?市街化區域:すでに市街地を形成している區域および概ね10年以內に優先的かつ計畫的に市街化を図る區域
- ?市街化調整區域:市街化を抑制すべき區域
市街化區域は稅金を投入して道路やガス、電気等の社會資本が整備されており、資産価値や擔稅力(課稅対象となる個人や法人等が、実際に稅負擔を受け持つことができる能力)があります。また、受益者負擔の観點からも市街化區域內の農地については、市街化調整區域內の農地と比べ、保有稅である固定資産稅(都市計畫稅)や相続稅の評価が高く、結果として稅負擔も大変重くなっています。農地の転用についても、市街化區域內の農地は積極的に流動化を図るため屆出制である一方、市街化調整區域內の農地はより厳しい許可制となっています。
市街化區域內の農地
市街化區域內の農地は、優先的かつ計畫的に市街化を図るために、農地の転用は屆出制です。ただし、三大都市圏の特定市の市街化區域內農地は、生産緑地と宅地化農地に分かれており、都市計畫法上の指定地區である生産緑地は屆出制ではなく「買取りの申出」制度※1による転用という例外的な扱いです(図1參照)。つまり、生産緑地は通常の農地ではないということになります。
※1「買取りの申出」制度:生産緑地の所有者は、第10條の規定による申し出ができない場合でも、疾病等により農林漁業に従事することが困難である等の特別の事情があるときは、市町村長に対し、國土交通省令で定めるところにより、當該生産緑地の買い取りを申し出ることができる。市町村長は、前項の規定による申し出がやむを得ないものであると認めるときは、當該生産緑地を自ら買い取ること又は地有公共団體等もしくは當該生産緑地において農林漁業に従事することを希望する者がこれを取得できるようにあっせんすることに努めなければならない。
図1:農地の區分一覧
市街化調整區域內の農地
市街化を抑制すべき市街化調整區域は、厳しい転用許可基準が設けられています。市街化調整區域內の農地は、甲種農地(集団的優良農地、土地基盤整備事業地區內の農地)、乙種農地(甲種以外の農地)に區分されており、甲種農地は原則として転用は許可されません。
乙種農地は次の3つに區分され、それぞれ許可の可否を判斷することになります。
- (1)第1種農地(農業公共投資の対象となった農地等):原則として許可しない
- (2)第2種農地(街路が普遍的に配置されている地域や公共施設から近距離にある農地:例外的に許可する
- (3)第3種農地(ガス、上下水道の整備されている地區および市街地
生産緑地の誕生
市街化區域は優先的に市街化を図るべき區域だとはいっても、田畑や山林も十分に保全されています。むしろ過疎化が叫ばれる地方都市とは異なり、大都市圏においては良好な生活環境を確保し、バランスの良い都市計畫を進めるためには農地は貴重かつ重要な空間であり、計畫的な保全および活用が必要です。そこで國は図2にあるように、特に都市化が急速に進み、農地の亂開発や無秩序な市街化が心配される三大都市圏の特定市の市街化區域內にある農地についてのみ「宅地化する農地」と「保全する農地」に區分けしました。そして、昭和49年に最初の生産緑地法が施行され、農地所有者の申請に基づいて「保全する農地」について、都市計畫法上の「生産緑地地區」として指定する、いわゆる「生産緑地」が誕生したのです。ただし、生産緑地は下記のような制限を受けることになります(図3參照)。
図2:三大都市圏の特定市の市街化區域內農地の都市計畫の位置付け
図3:生産緑地の制限
厳しい規制を受ける生産緑地
生産緑地は都市計畫法により指定された地區內にある農地のことであり、基本的に都市計畫法の変更なしには、たとえ生産緑地の所有者であっても農地を転用することはできません。生産緑地法10條による(1)~(3)の「買取りの申出」の條件が適用されます。
- (1)指定を受けてから30年経過
- (2)主たる従事者の死亡
- (3)(2)に準ずるような一定の事由の発生
以上のいずれかの條件を満たすか、生産緑地法第15條による「買取り希望の申し出」により行政等に買ってもらう以外、農地転用できないため“売れない”、管理義務があるので駐車場等の賃貸用に“貸せない”(第7條)※2、基本的に建築許可が下りないので“建てられない”、都市計畫法の規制があるので金融機関の擔保査定は極めて低く“借りられない”狀態が続くことになります。ただし、農地法第3條※3の農地転用で、各市の農業委員會が認めた特定の営農者に、生産緑地として売卻することは例外的に認められる場合もあります。
※2…生産緑地法第7條:生産緑地について使用または収益をする権利を有する者は、當該生産緑地を農地等として管理しなければならない。また、市町村長に対し、當該生産緑地を農地等として管理するため必要な助言、土地の交換のあっせんその他の援助を求めることができる。
※3…農地法第3條:農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、原則として政令で定めるところにより、當事者が農業委員會の許可を受けなければならない。