土地活用に必須なデータの読み解き方 第2回 人口動態関連(2)
公開日:2016/11/30
6回にわたり、土地活用に必要なデータを取り上げて、事例などを交えながら、データの読み解き方、使い方、収集方法などを解説していく第2回目。今回も前回に引き続き、人口動態についてです。
今回も取り上げるすべてのデータは、一般公開されている(インターネットがあれば誰でも入手できる)ものです。本コラムの中では、それらを分析してグラフや表にしていますが、読者の方も興味があればアクセスして、その元データを見ることができます。
今回は、「流入人口」について検討します。
各都道府県、市町村は毎年、人口動態について公表しています。そのデータは各行政のホームページ內にある「統計」のページから入手することができます。
また、総務省のホームページからは、都道府県や県庁所在地(あるいは主要大都市)の人口動態も入手できます。総務省データは、総務省が5年に1度行う「國勢調査」が基になっているものが多いようです。
人口の増減は、総務省?都道府県とも、注視しているようで、データは充実しています。
人口の増減には2パターンあります。1つは、自然増減と呼ばれるもので、出生數と死亡數の差です。少子化が進み、近年この數字はマイナスとなっている都道府県が多いようです。
もう一つは、社會増減と呼ばれるもので、転入數と転出數の差です。いうまでもありませんが、東京をはじめとしたいくつかの都府県でプラスですが、多くの道府県ではマイナスとなっています。
総務省の下記ページからは、各県別の年毎の転入數、転出數、それらの差である転入超過數のデータが入手できます。
人口の移動は、賃貸住宅経営では重要な視點です。移動した方々の多くは、新しい場所(移動した先)で、賃貸住宅に住むことが多いからです。転居(引っ越し)による、移動もありますが、やはり多いのは、進學?就職?転勤などによる移動です。 こうした方の大半は、何らかの形の賃貸住宅に住むことになります。
主要都市の転入者數
No. | 県庁所在地 | 転入者數 | 人口 | 人口に占める転入者の割合 |
---|---|---|---|---|
1 | 福岡市 | 104,954 | 1,519,349 | 6.91% |
2 | 東京23區 | 586,546 | 9143041 | 6.42% |
3 | 札幌市 | 119,304 | 1,942,643 | 6.14% |
4 | 仙臺市 | 65,093 | 1,073,242 | 6.07% |
5 | 大阪市 | 151,239 | 2,686,246 | 5.63% |
6 | 名古屋市 | 126,909 | 2,276,590 | 5.57% |
7 | さいたま市 | 68,131 | 1,251,549 | 5.44% |
8 | 熊本市 | 40,035 | 740,204 | 5.41% |
9 | 橫浜市 | 182,084 | 3,710,008 | 4.91% |
10 | 広島市 | 58,030 | 1,185,656 | 4.89% |
11 | 千葉市 | 46,122 | 965,679 | 4.78% |
12 | 那覇市 | 15,310 | 320,719 | 4.77% |
13 | 京都市 | 68,603 | 1,469,253 | 4.67% |
14 | 岡山市 | 32,131 | 714,583 | 4.50% |
15 | 神戸市 | 65,481 | 1,537,864 | 4.26% |
16 | 盛岡市 | 11,642 | 300,116 | 3.88% |
17 | 水戸市 | 10,238 | 270,876 | 3.78% |
18 | 山口市 | 7,220 | 194,803 | 3.71% |
19 | 新潟市 | 28,597 | 808,143 | 3.54% |
20 | 鹿児島市 | 20,842 | 606,750 | 3.44% |
21 | 甲府市 | 6,626 | 194,063 | 3.41% |
22 | 佐賀市 | 7,926 | 235,358 | 3.37% |
23 | 宇都宮市 | 17,393 | 517,696 | 3.36% |
24 | 靜岡市 | 23,495 | 706,553 | 3.33% |
25 | 福島市 | 9,391 | 283,145 | 3.32% |
26 | 宮崎市 | 13,294 | 402,433 | 3.30% |
27 | 金沢市 | 15,122 | 464,550 | 3.26% |
28 | 高松市 | 13,497 | 420,758 | 3.21% |
29 | 奈良市 | 11,248 | 362,226 | 3.11% |
30 | 山形市 | 7,856 | 253,335 | 3.10% |
31 | 大津市 | 10,580 | 341,902 | 3.09% |
32 | 津市 | 8,238 | 280,647 | 2.94% |
33 | 大分市 | 13,936 | 477,788 | 2.92% |
34 | 松江市 | 5,974 | 206,393 | 2.89% |
35 | 徳島市 | 7,569 | 261,847 | 2.89% |
36 | 長崎市 | 12,394 | 433,514 | 2.86% |
37 | 松山市 | 14,763 | 516,459 | 2.86% |
38 | 秋田市 | 8,895 | 318,700 | 2.79% |
39 | 岐阜市 | 11,135 | 409,314 | 2.72% |
40 | 前橋市 | 9,086 | 335,327 | 2.71% |
41 | 青森市 | 7,794 | 290,646 | 2.68% |
42 | 長野市 | 10,040 | 377,626 | 2.66% |
43 | 高知市 | 8,854 | 339,034 | 2.61% |
44 | 鳥取市 | 4,554 | 193,395 | 2.35% |
45 | 福井市 | 6,052 | 264,902 | 2.28% |
46 | 富山市 | 9,173 | 418,863 | 2.19% |
47 | 和歌山市 | 7,881 | 364,092 | 2.16% |
出典:総務省 住民基本臺帳人口移動報告 2015年分
上図は、県庁所在地における転入數をまとめたものです。表の順番は、人口対比です。転入數の一番多い都道府県は東京都の約58.6萬人です。これは、鳥取県の人口とほぼ同じ數です。一年間にこれだけの方が東京に移り住んでいることになります。東京への転入は、進學?就職が多いですが、このうち進學の場合、住民票は実家に殘していることも多いようですので、実際は58萬人よりも多いと思われます。賃貸住宅需要が高いことを物語っているデータです。
人口対比の順位で1番なのは福岡市で人口約151萬人に対して約10萬人(対比6.91%)となっています。
また、就職での転入も多くみられます。
転入超過人數と有効求人倍率
出典:転入數は同上 有効求人倍率は厚生労働省データ
上図は、1998年~2014年の有効求人倍率と転入數の変化を重ねてみたものです。
これを見ると、似通った推移であることがはっきりと見えます。大學などの進學の數は、毎年それほど大きな変化はありませんので、転入數の変化は、求人數と大いに関係がありそうです。
転入數が多ければ、賃貸住宅需要も高くなることは、よく知られたことです。このようなデータを見ることで、賃貸住宅経営がヒントにつながることになるでしょう。