CREコラム
注目集めるWELL認証(4)コロナ禍でのWELL認証
公開日:2021/12/27
オフィスの快適性と働く人の健康を重視するWELL認証は、2020年から世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスによって一層注目されています。建物のコロナ対策を評価する新た なWELL認証の要素が加わり、流通?小売業の店舗などでは利用者が安心して利用できるよう認証を取得する動きが出ています。
感染対策に特化した新たな認証
WELL認証の運営団體であるIWBI(International WELL Building Institute)は2020年6月、建物の新型コロナウイルス感染癥対策を評価するWELL認証の新たな要素
「WELL Health - Safety Rating」(WHSR)を導入しました。WHSRは公衆衛生をはじめ多様な分野の専門家による知見をもとに、企業で働く従業員や來訪者の健康を優先するよう設計されています。
WHSRの認証を取得した企業には認証狀とシールが與えられ、感染癥対策や施設の清掃?消毒、空気質や水質の管理など、健康や安全に配慮した管理?運営を行っている施設であることを広く利用者に伝える効果があります。
WHSRの審査と認証取得の交付は環境建築の世界的組織であるGBCI(Green Business
Certifi cation Inc.)が定める基準をもとに行われます。申請の申し込みから審査まですべてWELL認証事務局との間でオンラインにより実施されます。WELL認証のように現地審査はなく、書類のみの審査です。WHSRは感染対策に特化しており、約半年で取得できるもようです。
評価カテゴリーは、(1)洗浄および消毒の方法、(2)緊急事態準備プログラム、(3)醫療サービスのリソース、(4)空気質および水質管理、(5)利害関係者の関與とコミュニケーション、などとなっています。手洗いのサポートや病気休暇の提供、ワクチン接種の推進など6つのカテゴリーで26の項目を定めており、15項目以上クリアすれば認証されます。WHSRの取得にかかるコストは、専門のコンサルティングを受ける場合の経費を別にすると、登録費用として$4,200USDからとされています。
ある流通大手では2020年12月、國內の商業施設では初めて埼玉県上尾市の店舗でWHSRを取得しました。施設內での飛沫感染や接觸感染防止対策のほか、各出入口における安全対策や施設內の清掃管理體制を徹底し、來店客や従業員が安全?安心に利用できる施設を目指して管理?運営しています。
テレワーク定著の一方、若干のオフィス回帰の動きも
2021年の半ばを過ぎるあたりから、テレワークを実施していた企業の中からは、出社回數を徐々に増やし始める動きが出ました。しかし、ワクチン接種や治療薬の開発が進み、コロナ禍の終息に期待がかかり始めた矢先に新たな変異株(オミクロン株)が出現するなど、コロナ時代は先行き不透明といわざるを得ません。
公益財団法人日本生産性本部の調査結果レポート「第7回働く人の意識に関する調査」(20歳以上の1,100人を対象)によると、テレワークは2020年4月7日に初めて緊急事態宣言が出された直後の5月には31.5%の人が「行っている」と答えました。その後も20%前後を保っています。
※「自宅での勤務」「サテライトオフィス、テレワークセンター等の特定の施設での勤務」「モバイルワーク(特定の施設ではなく、カフェ、公園など、一般的な場所を利用した勤務)」を総稱して「テレワーク」としています。
図1:テレワークの実施率
「第7回働く人の意識に関する調査」(公益財団法人日本生産性本部)より
今回の調査は2021年10月11日~12日にかけて実施されており、國の緊急事態宣言?まん延防止等重點措置がすべて解除された9月30日後の調査であることに注目すれば、まだ企業も慎重
な姿勢で臨んでいるということでしょう。また、大手企業(1,000名以上)のほうが、テレワークの実施率は高まっています。
テレワーカーの直近1週間(営業日ベース。今回調査で言えば一般的には2021年10月4日~8日)の出勤日數で見ると、2020年5月の時點では、週5日以上出勤していた人は9.5%でしたが、今回の調査では、20.4%となっています。また、7月調査の時點では、週3日以上出勤している人は、57.6%でしたが、10月の調査では58.8%と、テレワークの実施率以上に、オフィスへの回帰は少しずつではありますが、進んでいるといえるでしょう。
図2:直近1週間(営業日ベース)の週當たり出勤日數
「第7回働く人の意識に関する調査」(公益財団法人日本生産性本部)より
この調査では、「効率」に関しても調査されており、「在宅勤務によって効率は上がったか」という質問に対して、「効率が上がった」「やや上がった」と答えた人は微増しており、テレワークによる仕事の仕方が、安定してきたといえるかもしれません。
ウィズコロナで有効なオフィス環境対策 WHSR
長引くコロナ禍のために停滯している経済活動は底入れから脫し、活気を取り戻さなければなりません。こうした狀況下では、殘念ながらしばらくは「ウィズコロナ」を覚悟しなければならないでしょう。企業としては、テレワークと出社のバランスを考慮しながら、こうした認証の活用を含め
て、働く人の健康に留意しながら生産性を少しでも向上させることに注力することになるのではない
でしょうか。WELL認証は、コロナ時代を生き抜く上で避けて通れない職場環境づくりであり、とりわけWHSRは感染対策に特化した認証です。
今後も集客施設や來訪者の多い企業などで取得が増えることも予想されます。