賃貸経営の基本を學ぼう!法律Q&A第4回 意外に厄介な問題。共有とは何か?
公開日:2020/07/30
今回は、一定の理由により共有狀態になっている土地に関する各種行為について取り上げていきたいと思います。不動産の共有とは、1つの不動産の所有権を、割合的に分割して複數の人が持っている狀態をいいます。共有不動に係る各種行為については、その內容に応じて以下のとおり3つに分けることができ、その內容に応じて、共有者の協力の必要程度が異なってきます。
- (1)共有物の変更行為
共有物の性質もしくは形狀またはその両者を変更することで、共有物に物理的、法律的な変化を及ぼす行為を意味し、変更行為を行うには、共有者全員の同意が必要になります。 - (2)共有物の管理行為
共有物の変更を伴わない利用、改良、保存等をいい、共有者の持分価格に従い、その過半數の同意が必要となります。 - (3)共有物の保存行為
共有物の現狀を維持する行為であり、各共有者が単獨ですることができます。
Q1:ABCの3名で土地を共有して、その共有持分割合は3分の1ずつであるところ、AとBは、當該土地について、使用目的を資材置き場、期間を10年として第三者に賃貸しようとしているが、Cはこれに同意してくれませんが、AとBのみで係る賃貸借契約を締結することは可能でしょうか。
A1:賃貸借契約の締結行為は、(1)借地借家法の適用がある場合、(2)民法第602條に定める短期賃貸借の範囲內(一般的な土地は5年、建物は3年)である場合のいずれかに該當する場合には、長期間當事者を拘束することになりますので、一般的には、上記(1)の変更行為に該當し、それ以外は管理行為に該當すると原則的には解されています。
土地の賃貸借契約については、建物所有を目的とする場合には、借地借家法が適用されることになります。ですから、借地権の存続期間が最低30年とされ、これより短い期間を定めたとしても無効とされてしまいますが、その目的が資材置き場であるときは、借地借家法の適用がないため、上記期間を下回る期間を設定しても無効となることはありません。そのため、この事例では、その契約目的は、建物所有ではなく、あくまで資材置き場としての目的になるので、賃貸期間を20年とする賃貸借契約も有効に締結することができます。しかし、民法が定める短期賃貸借には該當しないため、共有物の変更行為に該當し、共有者全員の同意が必要であると考えられます。
よって、この質問に対する答えとしては、Cも同意をしなければ、當該賃貸借契約を締結することはできません。
Q2:記Q1の事例において、共有不動産が土地ではなく賃貸住宅で、賃貸借期間を2年とする通常の賃貸借契約を、Cの同意がなくてもAとBとで締結することができるでしょうか。
A2:通常の建物賃貸借契約については、借地借家法が適用され、法定更新に関する規定や、正當事由に関する規定が適用される結果、たとえ、契約期間が2年であったとしても、契約期間が長期化することになります。そのため、借地借家法の適用のある建物賃貸借の場合には、原則として、賃貸期間が民法第602條に定める短期賃貸借期間の範囲內であったとしても、その締結行為は共有物の変更行為に當たると解されます。
よって、上記事例では、Cの同意を得なければ、有効に賃貸借契約を締結することはできないものと考えられます。
Q3:ABCが共有する賃貸住宅をXに賃貸しているところ、Xより、當該賃貸住宅に係る賃借権を、Yに譲渡したい旨の申出があったが、これに対する賃貸人としての承諾は、ABC全員の同意が必要でしょうか。
A3:賃借権の譲渡承認は、既に設定されている賃借権について、その內容を変容せずに、単に賃借人のみを交代することを判斷するに過ぎないので、他の共有者の利益を格別に害する等の特別な事業がない限り、原則として、共有物の管理行為に該當するものと考えられます。
よって、上記事例においては、ABC全員の同意がなくとも、過半數の同意があれば、実行は可能であると考えられます。
Q4:ABCが共有する賃貸住宅をXに賃貸しているところ、Xとの賃貸借契約を解除したいと考えているが、この場合、Cの協力がなくても、ABによって當該賃貸借契約を解除することができるでしょうか。
A4:民法545條第1項では、契約解除について、當事者の一方が數人ある場合には、その全員から又は全員に対してのみすることができると規定されていますが、判例によれば、共有物の賃貸借契約の解除は、共有物の管理行為に該當するとされ、上記條項の適用は無く、その実行のためには、共有者の過半數の同意が必要であると解されています。
よって、上記事例においては、ABC全員の同意がなくとも、過半數の同意があれば、契約を解除することは可能であると考えられます。
Q5:ABCが共有する土地をXが不法占拠しているところ、Xに対して妨害排除請求として土地の明渡を求めるためには、ABC全員の同意を得なければ、行えないものでしょうか。
A5:不法占有者に対する妨害排除請求としての目的物の明渡請求は、現狀を維持する行為であり、共有物の保存行為に該當するとされ、共有者単獨で行うことができます。
よって、上記事例においては、必ずしも共有者全員の同意がなくても、不法占有者に対する妨害排除請求は認められるものと考えられます。