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コラム vol.327-1
  • 土地活用法律コラム

賃貸経営の基本を學ぼう!法律Q&A第1回 借家契約のお金に関すること

公開日:2020/05/21

POINT!

?敷金、保証金、禮金は借家契約上で合意のうえ、狀況を総合的に勘案して決定する

?家賃の滯納による借家契約解除は、明確な基準はないが、3カ月の滯納が一般的な相場感

?家賃を値上げしたいときは、現狀の家賃が不相當であることを立証する必要がある

Q1:借家契約を締結するにおいて、賃借人から収受できるお金には、敷金、保証金、禮金というものがあるようです。それぞれどのようなものですか?

A1:敷金とは、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を擔保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいうとされ、2020年4月1日から施行されている改正民法でも明記されました。居住用の賃貸住宅では、一般的には家賃の1~3カ月程度の金額になるようです。
保証金とは、一般的には、営業用の賃貸物件について、賃貸人が無利息で自由に運用し、一定期間後に全部又は一部を返還するような金銭であるとされ、敷金より高額になるのが一般です。保証金の性質は、借家契約の內容にもよりますが、一般的には、敷金と同様に債権擔保のためであったり、一部権利金的な性質を有していたり(償卻される場合)、金融的要素(保証金の運用)があったりします。
禮金とは、権利金と同様で、一般には、一定額を賃貸人に交付されるもので、契約終了時に返還を要しない金銭とされ、借家権設定の対価、賃料の一部前払いとしての性質があるとされます。禮金は、居住用賃貸住宅で、家賃の1~2カ月程度とされています。
いずれの金銭も、借家契約締結時に、當然に請求できるものではなく、借家契約上明示して、合意する必要があるものであり、どのような金銭を、どの程度請求するかは、賃貸住宅の特性、近隣相場、賃貸需要、賃借人の経済力、保証の有無等、総合的に勘案して、決定する必要があります。

Q2:家賃の滯納があったとき、どれ位の滯納があれば、借家契約を解除できるのでしょうか?

A2:賃貸住宅を既に経営されている(または今後経営をお考えの)オーナー様は、すでにご存知の方も多いと思いますが、借家契約においては所謂信頼関係破壊の理論といわれているものがあり、家賃の滯納があっても、直ちに借家契約が解除できないものとされています。家賃の支払いは、借家契約で定められた賃借人の義務であり、これを滯納した場合は、當然契約違反となり、本來は借家契約を解除できるのが原則ですが、借家契約のような継続的契約関係においては、裁判実務上、當事者間の信頼関係が破壊されたといえるような事情が存在して、初めて契約解除が認められる取り扱いとなっています。
では、どの程度の家賃滯納があれば、信頼関係を破壊したといえるかですが、一義的に明確な基準がある訳ではありません。滯納額、滯納に至る経緯、滯納の頻度、賃料の支払意思、目的物の利用狀況、過去の経緯、滯納後の交渉経過等の事情を総合考慮して判斷されることになりますが、一般的な相場感として3カ月分の賃料滯納があれば、信頼関係の破壊が肯定される傾向があるようです。

Q3:家賃の値上げを請求したいときは、どのようにすればいいでしょうか?

A3:借地借家法32條1項によれば、(1)土地若しくは建物に対する租稅その他の負擔の増減、(2)土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動、(3)近傍同種の建物の借賃と比較して、賃料が不相當となった場合に、契約當事者は契約條件にかかわらず、將來に向かって賃料の増減額請求をできると規定されています。そのため、家賃の増減額請求を行う前提としては、上記のような事情から現狀の家賃が不相當であることを立証する必要がありますので、不動産価格相場や周辺の家賃相場に関する資料等を事前に準備したり、適正家賃の算定に関して不動産鑑定や調査報告等の専門家の意見を入手することも検討する必要があります。
家賃の増額請求は、その意思表示が賃借人に到達すると、到達した日から効力が生ずるとされますので、口頭での請求も可能ですが、いつ、いかなる內容の請求を賃借人にしたのかが重要になるため、配達証明付內容証明郵便にて賃借人に対して家賃増額請求を行うことが原則となります。もっとも、家賃増額請求をオーナー様が行った場合でも、賃借人は、當然にこれに応じする必要はなく、従前の家賃が相當な賃料であると考えれば、當該家賃を支払いえば、家賃の滯納には當たらないとされています(この場合、事後増額後の家賃が相當であるとの裁判が確定した場合には、差額の支払い義務と年利10パーセントの支払い義務が生じます)。
なお、実際上の対処としては、上記のような通知をする前に、賃借人に対して賃料増額の必要性とその妥當性について事前に十分に説明し、協議を行うべきであり、可能な限り、賃料増額につき賃借人の同意を取り付けるべきであり、同意取得が困難な場合に初めて、上記のような増額請求を行うべきかと思います。上記の賃料増額請求後においても、賃借人と協議が調わない場合には、まずは調停手続きを提起し、調停手続で解決することとし、それでも解決できない場合には、訴訟によって解決することになります。

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