特集:中小企業の為の不動産戦略~第8回目~ 2つの大きな波に備えるための賃貸経営
公開日:2018/02/28
小売店が始めた賃貸住宅経営
本業が不動産関連ではない企業が、不動産を購入して、そこから賃料収入を得る事例が増えています。食料品等を扱う小売業(スーパー)を営むある會社は、大手小売店が同一商圏內に出店したことを機に、賃貸住宅を購入されました。食料品などを扱う小売業は、日銭が入り比較的安定した業態ですが、大手の多店舗化が進んでいる現在、將來の売り上げ拡大、収益力増のハードルがかなり厳しくなっている現実があります。より地域密著の店舗経営を行い、店舗をリニューアルするなどして、経営努力を行っていますが、売上減少を食い留める程度の効果となっています。
そんな狀況から、土地と建物を一括購入して賃貸住宅経営を始めました。銀行からの信用が厚かったようで、不動産投資=賃貸住宅経営を始めるための融資は、すんなり受けることができました。
1棟目の購入から、1年後に2棟目、3棟目を購入し、現在では安定した賃料収入が入るようになりました。賃料収入から経費を引いて、銀行への返済を行っても、ある程度の金額が殘っており、賃貸経営ビジネスは軌道に乗っています。
産業のライフサイクルという波に備える
この會社のように、食料品小売業業態は、かつては地域一番店が全國各地に存在していましたが、昨今、大手による寡占化がどんどん進んでいます。
産業にはライフサイクルがあります。今は華やかな産業でも、時代の流れとともに、寡占化が進んだり、あるいは産業そのものが廃れていくこともあります。
こうしたリスクのヘッジのためにも不動産投資は有効です。より具體的にいうと、安定的な賃料収入はこうした波を吸収することが可能です。
創業して、企業が発展、成長軌道に乗っているときに何に投資をするかを判斷するのは難しいものです。多店舗展開する、人材採用を行う等は、いずれも長期的に大きな投資です。企業規模拡大?売上拡大?収益拡大に直接的に関わるものへの投資をまず行うことでしょう。
しかし、ここでもう少し長期的な目線に立って経営を考えると、將來を見據えた賃料収入を得るための賃貸住宅投資を選択肢に入れてもいいかもしれません。
將來起こりうるインフレに備える
日本は、ここ25年はほとんどインフレ傾向にありませんが、今後長い目で見れば、多少なりともインフレ基調になると予想されます。産業のライフサイクルと同じように景気にも波があります。80年代初めころまで、日本は5%以上のインフレが続いていました。バブルが崩壊してしばらく経ったころ以降は、デフレ期もしくは橫ばい期という狀況です。現在、この低インフレ期は先進國全體の傾向で、まだしばらく続きそうな気配です。しかし、資本主義経済下では、一定のインフレは必要であり、つい最近アメリカFRB(連邦準備制度理事會)が利上げを行ったように、先進國の中央銀行は、徐々にインフレを誘導しているように思えます。
この先いつごろから、かつてのようなインフレ基調になるかはわかりませんが、何十年も先ではないことは確実です。
民営家賃は、インフレに連動して価格上昇します。インフレ連動の収入を持つことは、企業にとっても個人にとってもインフレリスク回避に役立つものと思われます。