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  • 土地活用法律コラム

コラム vol.095

ケースで學ぶ「土地活用と法律」(5)
借主が家賃を払ってくれない場合はどうすればいいのか?

公開日:2016/02/25

事例(9): 借主が家賃を払ってくれない場合はどうすればいいのか?

この事例は、賃貸人の方からのご相談で最も多い、賃料不払いの問題です。
賃料不払いといっても、ほとんどが6カ月から1年くらいの不払いですが、なかには5年間というケースもあります。長期間不払いのケースでも、數カ月滯納しては、2カ月分まとめて払ったり、そのあとまた滯納したり、と賃貸人としてもなかなかアクションを起こせずに滯納賃料がかさんでいくケースが多いように思われます。

催告

「賃料の支払い」は賃借人が果たすべき最も基本的な義務です。
賃貸人としては、賃料不払いがあれば直ちに電話やメール、文書で一定の期限を設けて支払いを促すことが必要です。これを「催告」といいます。催告せずに解除できるとの條項があったとしても催告の手続は踏まえたほうが無難です。
それでも期限內に賃料を支払わない場合は賃料滯納という債務不履行を理由に契約解除の通知を送ることになります。

契約解除には、何回の賃料不払いが必要か

では、賃貸人はたった1回の賃料不払いで契約解除できるのでしょうか。
多くの賃貸借契約書では、1回でも賃料の支払いを怠ったときは催告せずにすぐに契約解除ができるという條項が設けられています。
ところが、このような條項があったとしても1回だけ賃料不払いがあっただけでは契約解除はできないと考えられています。長期間にわたることが多い不動産賃貸借契約において、1回の賃料不払いで賃借人が追い出されるのは不公平だからです。
賃料の不払いが何カ月あれば、滯納賃料がどの程度になれば解除できるのか明確な基準はありません。賃料滯納によって、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されているかどうかがポイントになります。

賃料不払いのケースには、弁護士からの催告によって賃料滯納の重大さに気づいたのか通常の家賃と一緒に滯納分を分割で支払うことで賃貸人と合意をしてそのまま契約継続したケース、弁護士からの契約解除通知に従って任意で明け渡しができた事例、任意に明け渡ししなかったことから裁判で建物明け渡しを求め賃借人に対して明け渡しを命じる判決を出してもらった事例など、さまざまなケースがあります。

賃料不払いの問題は、時間が解決してくれることはありません。なるべく早く対処することが賃貸人の損害を最小限に食い止める方法です。

事例(10): 明け渡しを認容する判決が出たので、賃借人を追い出したい。どうする?

この事例は、事例(9)の続編、賃料を滯納して任意の明け渡しにも応じない賃借人を契約解除して退去してもらいたいというケースです。
賃借人が5年ほど前からたびたび賃料を滯納し、その滯納賃料が約80萬円までかさんだという事例です。

自力救済の禁止

このケースでは、賃借人が任意の明け渡しに応じなかったため、やむなく裁判所に対して、建物明け渡しと未払い賃料及び明け渡しまでの使用料相當の損害金を請求する訴訟を提起しました。
一審判決で、賃料滯納により當事者間の信頼関係はすでに破壊されていると認められ賃貸人の請求を認容する判決が出されました。ところが、敗訴した賃借人が控訴、控訴棄卻後さらに最高裁判所に上告したため、実際に強制執行に取り掛かることができたのは提訴してから実に1年半後でした。
賃料を滯納しているといえども、賃借人の同意を得ずに勝手に鍵を交換して追い出す、居室內の動産を勝手に処分することはできません(自力救済の禁止)。そのため、賃借人が任意の明け渡しに応じないと、このケースのように多くの時間と費用がかかるのです。

強制執行

では、明け渡しを命じる判決に基づいて強制執行するにはどのような手順で進めるのでしょうか。
明け渡しを認容する判決があっても自力救済禁止の原則があるため、実力行使で賃借人を追い出すことはできません。
まず、強制執行を許可する執行文と、判決が賃借人に送達されたことを証明する送達証明を裁判所から付與してもらい、強制執行の申し立てを裁判所に行います(民事執行法25條)。申し立てには執行官への手數料として予納金(基本金額6萬5,000円)が必要です。
申立がされたら、執行裁判所は、まず強制執行を実行する日までに任意で建物を明け渡すように明渡催告を行います(民事執行法168條の2第1項)。
明渡催告にもかかわらず建物を明け渡さない場合は、執行官が立ち合いのもと、専門業者が鍵を開錠、家具や荷物を強制的に運びだします。これを「斷行」といいます。
ちなみに、これらの搬出にかかる費用(一般的に30萬円~50萬円程度)は、強制執行を申し立てた者が負擔します。

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