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インタビュー 002-2
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稅理士リレーインタビュー 第二回(後編) 「一過性ではなく、何世代にもわたる継続的なおつきあいを」 稅理士法人 押田會計事務所 押田吉真様 宮野正美様

公開日:2017/01/26

インタビュアー(以下I):これまで、お客様とは長いおつきあいをされてきたと思いますが、中でも特に印象的な事例はありますか。

宮野(以下M):保有される不動産に、飲食店とスーパーマーケットを誘致された田中様(仮名)の事例がそうですね。
田中様のお父様はたくさんの土地をお持ちで、すでに相続対策として大和ハウス工業さんで個人のアパートを建てる計畫がありました。正式に契約も済ませていたのですが、いざ著工というタイミングでお父様が亡くなったため計畫は一時ストップとなり、大和ハウス工業さんも待ってくださったそうです。
私どもが伺ったところ、お父様は相続について自筆の遺言証書を殘されていましたので、その遺言に基づいて申告を行いました。納稅資金も故人がきちんとご用意されていました。ただ、かなり広大な市街地農地があり、相続される田中様も少し身體が不自由なので、ご自分で農業をやっていく自信がなかったようです。そこに、たまたま新しい幹線道路ができたことから、道路沿いの農地を有効活用しようという話になりました。
新しくできた幹線道路沿いにある土地ですから、単なる居住施設ではなく、事業性のあるものを誘致しようということになり、ご専門の大和ハウス工業さんにお願いすることになりました。
そこからが私どもの出番です。基本的にかなりの建築資金が必要になりますから、どのくらいの借り入れをどれくらいの期間で行えばいいのか。要はキャッシュフローの計算をして、田中様ファミリーにとって將來的に資産が増えていくよう、今までの農業による収入以上の収益が上がるように考えてアドバイスを行いました。
そこで田中様には法人をつくっていただきました。やはり事業として考えるわけですから、法人として建物を建て、借り入れを行い、収入?返済をしていただき、その利益から役員報酬の形で収入が入るようにしました。ここで、ご本人ではなく後継者を代表者にして役員報酬を取る形にしておけば、自動的に金融資産が移転していきます。次世代に対する「自動贈與機能」といいますが、最初はこういうかたちでスタートしました。
建物を建てるにあたっても、すべて借り入れにするのではなく、キャッシュが回っていくことを考えて、土地を一部処分して、その資金をベースに建築資金にあてました。その結果、無理のない返済計畫がつくれました。

I:そのあたりは、個人で考えて実施するのはなかなか難しい部分ですよね。稅理士の存在が重要なことがよくわかります。

M:はい。ぜひ稅理士をうまく活用いただければと思います。建物は流通系の施設にして、リーシングもすべて大和ハウス工業さんが受け持ってくださっていますし、このままずっと安定した収益を得ることができる事例だと思います。一時ストップしていた個人によるアパート建築も再開しましたから、現在は個人の資産と法人の資産、両方ある狀態で、次の世代への相続対策を田中様といろいろ考えているところです。

I:一度、おつきあいして活用を始めると、そうやって何世代にもわたって、ずっとおつきあいがつながっていくわけですね。

押田(以下O):そうですね。最初は不動産の確定申告から始まって、そこに相続が発生して、また次の二次相続が発生する。そんなふうに、二代、三代とおつきあいが連鎖していきます。そこに私どもが不動産の相続対策、有効活用のサイクルをしっかり當てはめていきます。
相続というと、スポット業務、要するに一回のみのイメージが強いものですが、それが連鎖しているということを常に意識してかかわっていくと、資産稅業務を継続業務に育てていくことができるわけです。ですから、相続のお手伝いをして仕事が完了すると、私は、「本當のおつきあいはこれから始まります」とお話しするようにしています。常にそういう気持ちを持ってお客様に接しています。

I:その一言だけでも土地オーナー様も安心されるでしょうね。

O:相続の申告をお手伝いしたお客様と常に連絡を取って情報交換をしていくことで、お互いに有益な情報が蓄積されていきます。不動産取得のお客様も、普通は一回きりのお仕事になりますが、私どもにとってはすごく大事な存在です。土地の情報や固定資産の明細などもきちんとデータベース化して、「現狀分析の資料に使えますよ、やってみませんか」とお勧めするわけです。すると「じゃあ、やってみようかな」となったり、ふと「先生のところ、アパートを建てるときの対策も練ってくれるんですよね」などとご相談をいただけたりします。

I:素晴らしいですね。他にも何かリマインドの工夫をされていますか。

M:職員全員の寫真を載せた年賀狀を毎年お出ししています。それを見たお客様とは、「職員が変わったね」とか「事務所大きくなったね」などと會話も弾みます(笑)。相続のお手伝いから10年、20年経っても、毎年の年賀狀のやり取りを通して、お客様とつながっていることが実感できるんです。
それと、年に2回ほど「相続の極意セミナー」というセミナーを開催しており、そのご案內をお送りしています。1,000通以上は出しますが、ありがたいことに、あっという間に席が埋まります。
案內狀はうちの若いスタッフがつくるので、イラストが多く、かなり柔らかいイメージです。セミナー自體も職員が寸劇をしたりクイズを出したり。そのあとで解説委員が解説をするなど、楽しんでいただけるように工夫しています。だからリピーターの方もけっこう多くて、そういう形の情報発信も大切なんだなと思いますね。

I:何か獨自で工夫されている資産や相続に関する具體的な対策はございますか?

O:私どもでは以前から、「相続対策を1年かけて対策しましょう」というプログラムメニューを持っています。要するに全く予備知識がない方でも揉めない遺言書をつくれるというプログラムです。
まず、現狀分析をして、相続対策を立て、それを実行に移し、今度は実行に移したことを検証していくという、四つのステップを踏みます。いわば「相続対策のPDCA」ですね。そして最後に遺言書の作成を行うわけですが、これに1年がかりで取り組みます。
その事例を一つご紹介したいと思います。大和ハウス工業さんにもかかわっていただいた、法人の事業経営者の方のケースです。
その方は65歳のときに一度、心臓発作で倒れました。それで確定申告の折に「そういうこともあったので、一回きちんと現狀分析をしませんか」とご提案したところ、「ぜひやってくれ」ということになりました。
そこで、まず判明したのが、離婚された奧様と二人の子どもがいること、現在はそちらと全く縁のない狀態であること。今はその後結婚した奧様と二人の子どもがいること、でした。
この場合、すぐにでも遺言書を作成しないといけないケースですので、「自筆でもいいから今ここで書いてください」とお願いしました。ここで何らかの形でも書いておけば自筆の遺言が殘りますから、いざというときに揉めないで済みます。仮に遺留分の財産請求をされたときでも、これさえあればそれで済むわけです。
そこから現狀分析を始めて、さらに相続稅額の計算をしていきました。相続稅額もけっこう細かく深く計算して、一つの相続稅額が見え、納稅資金もわかってきました。その方は、親から引き継いだ不動産をたくさん持っていたのですが、そこの建築物件がかなり古くなっていて空き家などもあったので、大和ハウス工業さんに入っていただいて、不動産の有効活用を検討させていただきました。一緒に現地まで行って、有効対策を検討して、ちょうど1年かけて遺言書もきちんとつくって、最後は公正証書にしました。ここまでくればひと安心です。
相続対策というのはだらだらとやるのではなくて、こうやって半年とか1年とか期限を區切って臨むほうが効果的に進められる気がします。お父さんの具合が悪いというところから1か月で最後までまとめたケースもありますし、「がんになっちゃったよ」とご本人が相談にいらしたケースもあります。がんというのは必ずしもすぐに亡くなるわけではないので、ご自身と一緒にしっかりと対策を立てて、まずは円満に、なおかつ稅金も安く、という形に仕上げることができました。

I:殘された遺族の間で爭いが起きないように、ご本人も納得がいく形で、その方の人生の仕上げをお手伝いしていく。素晴らしいお仕事ですね。

O:資産相談というものは代々にわたっていくものですから、資産をお持ちの方はそれを常に意識していく必要があります。その土臺があってこそ、不動産の有効活用の提案が生きてくるわけです。
私どもとしましては、きちんと資料を揃えた上で、最大限の節稅を考えるのが仕事ですから、その品質をどんどん向上させていかなければなりません。先ほどの「相続対策のPDCA」もそうですが、本や講演を通じてそのノウハウを他の稅理士にもどんどん伝えて、土地オーナー様と稅理士の関係をもっと気楽で発展性のあるものにしていけたらと思っています。

I:一般の方の場合、どんなシーンで稅理士を活用するのがおすすめですか。

O:相続対策や事業承継の折はもちろんですが、毎年の所得稅、不動産所得の確定申告は、財産の棚卸しの最適なチャンスです。このとき、私どもに不動産申告のお手伝いをご依頼いただくと、きちんと整理してお返しすることができます。
それが現狀分析の資料になるわけですが、會計事務所にはいろいろな土地情報が集まってきますから、より正確な分析が可能です。まずは現狀分析、そこから円満な相続をベースにした相続稅対策へ。ぜひ、そういうご相談をいただきたいと思います。

I:稅理士と依頼される方との関係は決して一過性のものではなく、継続的な人と人とのおつきあいだということがよくわかりました。ありがとうございました。

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