CREコラム
CRE戦略とは何か(4)CRE戦略とM&A
更新日:2019/09/30
公開日:2016/04/27
M&Aとは、英語のMergers and Acquisitions(合併と買収)の略で、企業の合併や買収の総稱を指しますが、CREを含めたM&Aは非常に活性化しています。
市場の変化を受けて加速するM&A
どの業界においても人口減少や人口ピラミッドの変異によって、國內市場の成長は難しくなっており、世界を相手にするグローバルマーケットの中での戦いを余儀なくされています。もはや安心できる市場などないといっても過言ではないでしょう。
ひとつの市場に何千もの企業が存在する業界から、少數の大企業が多數の中小企業を買収し、グループ化していくM&Aがますます増えていくものと思われます。
また、業界全體のパイが縮小していく中で、業務の効率化や利益率向上を追求するとなれば、こうした傾向がさらに加速していくことは避けられないでしょう。
株式會社レコフの調査によると、M&Aの件數は近年右肩上がりに増加傾向です。1990年には年間約700件程度でしたが、2000年代に入ってから以降急増し始め、リーマンショックや東日本大震災の影響により一時的には減少したものの、2018年には4,000件近いM&Aが実施されました。今やM&Aを考えることは、これからの企業戦略において不可欠なものになりつつあるといっていいでしょう。
図:1985年以降のマーケット別M&A件數の推移
出典:レコフデータ
M&Aのポイントとなる「CRE戦略」
M&Aを実施するうえでは、市場の中でいかに生き殘り、企業価値を高めることができるか、という點を追求していくことになりますが、そこで重要なポイントのひとつになってくるのが、企業の保有する不動産「CRE」を含めた企業価値という點です。
企業を買収する際には、その「企業価値」を測り、買収価格を算定するためにデューデリジェンス(対象企業の資産の調査)が行われます。
その企業価値には、その企業が保有する不動産が含まれることになります。
不動産などの資産は、歐米を中心に、DCF法(事業から生み出すキャッシュフローをベースにして算定され、キャッシュフローの合計額から時間軸やリスクに対する割引額を減額して算出する方法)と呼ばれる手法で算出されることが多くなっています。
つまり、企業価値の算定においては、不動産そのものの価値よりも、その不動産という経営資源を有効活用して得られる將來の価値、利益、キャッシュの金額を見ることになります。
當然のことですが、企業が持つ不動産などの豊富な資産が、時価純資産価額において株式時価総額よりも高額となっている企業(株式公開企業)は、M&A(買収)のターゲットになりやすくなるでしょう。
また、事業としてのM&A、事業継承のためのM&Aとも異なり、投資ファンドに代表されるような、投資に対するリターンを目的にしたM&Aも少なくありません。
そうしたリターンのみを目的とした投資は、優良な不動産を抱えながら、有効活用できていない企業は格好のターゲットとなってしまうでしょう。
企業不動産の取得を目的としたM&Aを「不動産M&A」と呼ぶこともあるほどで、企業不動産を保有する企業は、常に自社が保有する不動産と経営戦略との整合性を考え、自社不動産の有効活用について考えておかなければなりません。
企業の持つ不動産を有効活用していないと企業価値が下がり、買収される場合も低い価格で買収されることになりかねません。
CREの有効活用によって企業価値を高める
今後M&A市場が活性化すれば、買収する側とされる側、どちらにとっても、今後さらにCRE戦略の重要度は高まることが予想されます。
企業としては、M&Aや投資に対する防衛という観點からも、適切なCRE戦略を行うことで、日ごろから企業価値を上げておくことが重要です。企業価値を上げておけば、企業の統合においても有利に働きます。
株式交換を利用した企業の統合の場合、買収企業の企業価値が高いほど少ない株で統合できますし、買収される側も、自身の企業価値が高いほど、多くの株を取得することになります。
その逆で、敵対的買収の対象になりやすいのが、簿価が低く、収益性の低い不動産を所有している企業です。こうした企業を買収した投資家は、最終的には事業を廃止したり売卻したりすることで不動産の売卻益を得ようとします。
別の見方をすれば、CREを有効活用するだけで、その企業の価値を高めることができるということでもあります。そうやって企業価値を上げておき、その後すぐに売卻するという手法をとる企業も少なくないほどです。
自らのCRE戦略によって不動産価値を高め、企業価値も上げ、M&Aを積極的に活用して企業を買収し、その企業が持つ不動産を、自身のCRE戦略によってさらに価値を高め、さらに企業価値を高めるというサイクルをつくることも可能です。
こうした事業戦略も、CRE戦略の持つ目的のひとつといえるでしょう。