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コラム vol.057

(第3回)司法書士が語る
「知っておきたい定期借家について」

執筆:司法書士 星野大記
公開日:2014/10/01

第3回目となる今回は、定期借家について述べたいと思います。

不動産オーナーの大きな悩みの一つとしてあげられるのが、ご入居者の立退きです。
マンションや賃貸住宅などの住居建物の賃貸借契約を締結すると、借地借家法が適用されます(なお、口約束でも建物の引渡しがあれば成立します)。
この借地借家法は、原則として借主保護の法律なので、仮に貸主からご入居者に退居してもらいたい場合、「正當事由」が必要になります。
では「正當事由」はどの様な條件で認められるでしょうか?

例えば、次の事例ではどうなるか一緒に考えてみましょう。

  • ?賃貸物件は、築50年が経過した鉄骨の賃貸住宅の1DK30平米。
  • ?契約後、10年経過している。
  • ?賃料は、管理費込みで月5萬円。
  • ?ご入居者は、Aさん、55歳の獨身男性、時々不定期の仕事に行っている模様。
  • ?賃料未払は、時々遅れるも現狀はない。
  • ?部屋の使用狀況は、ゴミが溜まっている様子で、部屋の前にも荷物が置いてあり、再三注意しても撤去しない。
  • ?また、ドアを開けっ放しで大きな音でテレビを観ることがあり、周辺住民からも苦情がある。
  • ?建物は、築50年が経過して、老朽化が進んでおり、巨大地震が來たら倒壊する危険がある。
  • ?オーナーBさんは、老朽化した建物を取り壊して新しくマンションを建設したいので、ご入居者に退去をしてもらいたいと考えている。

先ず、賃料未払、債務不履行に基づく解除が考えられますが、これは遅れながらも払っており、払う意思はあるので、難しいですね。

次に、ゴミ屋敷のような使用狀況、近隣の住居からの苦情などを理由に退去させることが考えられます。つまり、使用狀況などが正當事由に當たるかですが、これは當たり得ます。しかし、ゴミをかたずけて、謝罪されたら、もう正當事由とはならなくなりますので、現実的には難しいですね。

では、老朽化で、巨大地震が來たら倒壊する危険があり、その対策のための耐震工事には多大な費用がかかるため、取り壊して建て替えることが経済的に合理的であることは、正當事由とならないでしょうか?

これはなり得ると思われます。
ただし、そのことだけでは認められず、ケースバイケースですが、似たケースの判例によると、退去日までの賃料の免除、敷金の返還、引越し費用、更に築年數以外は同條件に近い入居候補との賃料の差額の2年分くらいの負擔が必要になりそうです。

判例からすると、正當事由は経済合理性で解決し得る、つまりお金さえ積めばなんとかなると言えるのですが、そのための退去費用の負擔は大きく、更に弁護士に介入され、裁判になってしまうと、いつまで時間がかかるのかわからず、本當に大変なことになります。

こういう狀況が老朽化した建物から新しい建物への建て替えを阻害しているとして制度化されたのが、定期借家の制度です。

定期借家契約の要件は、

  • ?書面で締結すること
  • ?借主に対して契約期間を明確にし、期間が到來したら原則として退去してもらうことを合意すること

です。

なお、期間1年以上の契約で、期間満了で退去させるには、満了6ヶ月前までに通知しておく必要があります。

先の事例のようなケースでの実務的な利用方法としては、例えば、契約の更新時に、更新料を免除する代わりに定期借家契約に切り替えるなどの方法があります。

何と言っても用意周到が大事です。

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