日本蕓術(shù)大賞や日本建築學會賞作品賞を受賞するなど、建築家としても評価が高い藤森照信さん。

―― シンボルになるには、どのような條件が必要でしょうか。

藤森 :地名を見聞きして、すぐにイメージが浮かぶ建物です。町や村の顔にあたる建築ですね。そのとき大きさはあまり関係なくて、その土地ごとのスケールに合わせてあればいい。そして、あまり個性的でなくてもいいんですよ。人の顔だって、そんなに変わらないものですから、微妙に違う建築でかまわないと思います。

神社仏閣もいいですが、お城があるとさらにいいですよね。松本城、姫路城、彥根城、犬山城など、土地ごとの城郭は地方の魅力を高め、たとえ規(guī)模が小さくても地元の誇りになっています。シンボルとしての建築物は大切にされますし、そうした建築があり続けることで、地域ごとに望ましい景観のあり方や文化?伝統(tǒng)の継承などの意識を高める役割を果たすのではないでしょうか。

「自然と建築の融和」が大切な理由

―― 建築家としての藤森さんにお聞きします。「自然と建築」というキーワードは、藤森さんの中で重要な位置付けにありますよね。

藤森 : 建築は、人工物の中では最大のものです。その建築を、森羅萬象で最も普遍的である自然と融和させたい。その一心で建物をつくってきました。ただし実際につくるにあたって、木や石、土や草といった自然素材だけで仕上げるのは、耐震や法律上の問題で無理があるんです。私の大好きな自然素材だけで、全體をつくることはできないのですね。

ですので、鉄や鉄筋コンクリートで構(gòu)造體をつくり、それに自然の素材を意匠として仕上げる。「科學技術(shù)を自然で包む」とよく表現(xiàn)しているのですが、こうすることで建築と自然を融和させようとしています。

―― 実際に藤森さんが設(shè)計された建物で、自然と建築の融和が分かりやすく表現(xiàn)された作品はどれですか。

藤森 : 一番分かりやすいのは、〈草屋根〉でしょう。屋根一面に草を生やす建物は、ずっとやってみたいと思っていましたが、なかなか建て主が現(xiàn)れませんでした。それまで実験は散々していて、緑が枯れてしまう失敗も多かったのですが。草木のメンテナンスを含めて注意深く考え、〈草屋根〉は実現(xiàn)することができました。

飲食店やマルシェなどが入る複合施設(shè)「ラ コリーナ近江八幡」の草屋根は、藤森さんが設(shè)計。その名の通り、屋根一面が草に覆われており、緑豊かな周囲の環(huán)境と地続きに連なる。2015年の作品。

寫真提供:藤森照信さん

―― 〈草屋根〉は周りの風景も含めて、まさに自然と一體になっている建築だと感じます。

藤森 :ただ、木や草を使う難しさというのがあって、ひとつ間違えるとみすぼらしく見えるんですよね。石と木を並べたら、石のほうが高級に見える。今度は石と金銀を並べると、たとえ大理石であっても金や銀のほうが高級感がある。裝身具は金や銀でつくることが多いですよね。その特性を認めたうえで、みすぼらしさを感じさせないようにする。それは私の美學で、いつも細かい収まりまで徹底して考えています。

―― 〈高過庵〉やご自邸の〈タンポポハウス〉については、いかがですか?

藤森 :〈高過庵〉は、子どもの頃から木が好きで、木の上につくった茶室ですね。ツリーハウスは昔からつくられていますが、視覚的にあまり美しいものではありません。実際に訪れると、鳥の巣のように、どこにあるのか分からないものが多いのです。そうではないツリーハウスをつくりたいとずっと思っていました。

〈タンポポハウス〉は、〈神長官守矢史料館〉に続く2作目です。當時は屋根に草を生やす事例はほとんどありませんでしたので、反応はとても明快で、私の親や親戚たちからは「なんでこんなに貧乏くさいものをつくるんだ」と言われました(笑)。その當時はみんな、鉄やガラスを使ったモダンなものがいいと思っていたわけです。建築界では「何をやろうとしているのか」と訝しげに尋ねられました。

ただその時に嬉しかったのは、伊東豊雄さんとか石山修武さんとか安藤忠雄さんとか、僕と同世代の建築家が、「何をやろうとしているのかよく分からないけれど、何か面白いからもっとやったほうがいい」と評価してくれたことです。その言葉があったから、今まで続けてこられたようなものですね。

45歳で設(shè)計活動を始めて、今年70歳になるので、25年が経ちました。やはり、つくるということが一番面白いので、これからも続けていきたいと思います。

藤森さんの自邸でもある「タンポポハウス」。1991年の作品。力強い鉄平石と、その合間に生える緑の調(diào)和が強い印象を殘す。

寫真提供:藤森照信さん

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