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コラム vol.471-4
  • 土地活用稅務コラム

CASE04法人設立をすすめられることが増えてきたのですが、考えるべきでしょうか。

公開日:2023/11/30

最近、相続稅対策として、法人(會社)を設立して、個人の財産を法人に移して相続稅の対象になる財産を少しでも減らし、同時に個人の所得稅対策にもなるという話を聞くことがあります。法人を設立するだけで本當にそういうことが可能なのでしょうか。

多くの不動産を保有している人の確定申告書を見ると、非常に多くの所得稅を払っているケースがあります。
個人の所得稅は、「累進課稅」という方法で算出します。つまり、所得が高くなればなるほど稅率が高くなりますので、この計算方法では、最大で所得の50%以上の稅金を支払っている人がいることになります。
一方で、法人稅の稅率は単一です。資本金が1億円以下であれば、所得800萬円以上は約23%の稅率ですが、800萬円までの所得部分は15%の軽減稅率が適用されます。
この稅率の差から、「ある程度所得を法人に移転したほうが、所得稅対策になるだろう」と考えて、法人を設立したいと検討されている人が増えているようです。
そのほかにも法人設立のメリットはあります。
まず、家族に役員報酬を支給することで、所得をオーナー1人から家族に分散させることができます。所得を分散させることで、総合的に所得稅対策となるわけです。
個人で不動産事業を行っている場合は、利益は全てオーナー個人の所得になりますが、法人を設立して不動産を法人に移転させれば、不動産事業からの利益は法人の所得となります。そしてオーナーの家族をその法人の役員にして役員報酬を支給すれば、所得を家族に分散することができます。
次に、死亡退職金という非課稅枠を利用できることもメリットのひとつです。死亡退職金とは會社の役員が亡くなった際に支給することができ、限度額(500萬円×法定相続人の數)內であれば、非課稅になります。
また、相続や贈與をスムーズに行うことができるのもメリットのひとつです?,F物の不動産を相続や贈與と違い、不動産を保有する法人の株式を引き継いだ場合、不動産登記などの作業もありません。ただし、不動産を會社に移転する際には登録免許稅や不動産取得稅が発生します。

しかし、法人の設立(法人化)を安易に考えてはいけません。たしかに法人は単一稅率ですが、地方稅などを考慮すれば、稅率は実質的に30~35%になることもあります。所得金額によっては、法人化したことでデメリットを被る可能性もあることを知っておきましょう。

法人を設立する際のコストやリスク

法人を設立するには、登録免許稅や収入印紙代、司法書士の費用等、法人登記のための費用が発生します。また、設立した法人が、オーナーから不動産を買い取る「不動産所有方式」で法人を設立したのであれば、法人がオーナーから不動産を購入しなければばらないため、不動産取得稅に加え、買い取り資金が必要となります。オーナーには、その時點で譲渡所得が発生します。
かといって、個人で持っている建物を管理するだけの「管理法人」を設立しただけでは、その法人に「管理料」を支払うだけなので、所得移転の効果はほとんどありません。

法人を設立するということは、會社を事業として経営していくことになります。不動産事業経営者としての専門知識が必要であることはもちろん、経理業務や労務管理業務等も必要です。稅理士や社労士に依頼することもできますが、その都度費用が発生します。法人経営をするということは、年に一度の決算も必要です。決算には、稅理士費用も必要で、たとえ赤字になったとしても、均等割りの費用も発生します。こうしたことを考えれば、手軽にできる生前対策ではないと言えるでしょう。

法人設立を行う際には、こうした「しくみ」をしっかりと理解したうえで、進める必要があります。
さらに、「後継者」の問題もあります。つまり、「後継者が本當にその會社を引き継いでくれるのか」という點です。自分の代だけであればいいのですが、後継者も「経営」をしていかなければいけません。そのようなことも含めて、後継者にバトンタッチしていかなければならないのです。

「コスト」「法人の形態」「後継者」などいろいろな角度から考えましょう

法人化することで所得稅に関するメリットが得られるのは、個人の所得稅率が40%以上になっている人です。それくらいの人でなければ、せっかく法人を設立しても効果が得にくいでしょう。
具體的には、「(収入ではなく)所得で1000萬円以上」になった時點で法人化を考え始めるのがいいと思います。なお、法人化による効果が出てくるのは所得1500萬円以上でしょう。
法人化するにあたっては、「コスト」「法人の形態」「後継者との話し合い」など、いろいろな角度から考える必要があります。単に稅率だけを見て安易に法人化しようとすれば、失敗してしまう可能性があることを知っておいてください。専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。

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