CASE02相続財産が不動産だけ…相続稅の支払いはどのようにすればいいのか。
公開日:2023/11/13
自宅に一人で住んでいる母はすでに95歳です。母が亡くなれば、土地と建物を相続することになるのですが、その土地は先祖代々受け継いできた土地で、相続稅もかなりの金額となりそうです。
しかし、母は不動産以外の資産はほとんどなく、資産稅の支払いができそうにもありません。
相続稅の支払いは、基本的には現金で一括納付するものと考えるべきです。相続が発生した時點で稅金を支払えるだけの預金があれば、問題はありませんが、いま持っているお金では足りない場合は、土地や建物を売卻することを考える必要があります。
しかし、いざ相続が始まってから売卻しようとしても、準備不足で、結果的に想定した金額で売卻できないケースが起こりえます。そうなると、不動産のみを相続する場合、遺産として現金が手に入るどころか、保有の現金を相続稅として払わなければならないということも考えられます。支払いができないまま、期限が過ぎてしまうと、無申告加算稅や延滯稅が課されてしまいます。
延納と物納
現金での支払い以外の納稅方法について確認しておきましょう。
まず「延納」。稅金の分割払い、クレジットのリボ払いようなものです。國稅庁が設定する金利が高く、一括納付に比べて高い稅金を払うことになります。金利の高い時代であれば、何かしらの収益から回すことも考えられたかもしれませんが、現在のような低金利の場合、金利負擔が大きく、延納はおすすめできる方法とは言えません。
次に「物納」。これは現物で納稅するということですが、いまも制度として存在はしています。しかし、平成18年(2006年)の相続稅法改正により條件が厳格化され、件數は大幅に減少しています。
相続した不動産を手放したくない、あるいは売卻できないといった場合は、その相続財産を擔保にして金融機関から納稅資金を借り入れる方法があります。金融機関の中には、「相続稅支援ローン」という相続稅納付金、司法書士費用、稅理士費用の支払いに利用できる金融商品があります。「不動産は殘したいがキャッシュがない」という場合は、金融機関に相談するのも良いでしょう。特に、延納の金利と比べてローン利息の利率のほうが低い場合がありますので、その場合は検討するのも一案です。
早い段階でシミュレーションを行う
相続稅の支払いができないという事態を避けるためには、早い段階で稅理士などの専門家に相談し、相続稅のシミュレーションを行い、稅金の額を把握しておく必要があります。
あらかじめ相続稅の額を把握できれば、そのための資金づくりを検討することもできます。不動産を売卻する場合でも、さまざまな方法を比較できるでしょう。
不動産の遺産分割の方法
相続した不動産は、いずれ分割する必要がありますが、次のような方法があります。
法定分割:相続人で共有不動産にする
結果的に共有となりますので、分割とは言えませんが、遺産分割することなく法定相続分で持分を分け合うという方法です。たとえば、父と母、子ども2人の家族で、父が亡くなった場合、法定相続分は母が2分の1で子ども2人が各4分の1となります。この法定相続分に従って、この持分で登記する方法です。ただし、この方法はあくまで共有であり、遺産分割を行ったとはいえませんので、最終的な解決にはなっていないことに注意してください。
代償分割
一人が不動産を相続し、他の相続人へ金銭精算
共有することなく、誰か一人が相続し、ほかの相続人に対して、法定相続分を金銭で買い取るかたちを代償分割といいます。その不動産に、実際に長男が住んでいて、長男はどうしても相続したいと考えている場合などは有効な方法です。ほかの相続人は金銭を得ますので、スムーズに進む可能性は高くなるでしょう。
ただし、長男は相談稅や固定資産稅の負擔に加えて、法定相続分に応じた金銭を支払う必要があり、その費用を用意する必要があります。
換価分割:不動産を売卻して金銭を分割
もっとも多く使われているのがこの方法です。この方法は相続人全員の承諾は必要となりますが、結果的に金銭の相続になりますので、その不動産をどうしても遺す必要がある場合を除けば、全員が納得しやすい方法といえるでしょう。相続人全員の売卻意思の合致が必要となりますので協力しあって売卻を進めていかなければなりません。ただし、大前提として売卻できる不動産であることが重要です。過疎地や山間部など、利便性の低い不動産の場合、そもそも売卻先が見つからないことも考えられます。
いずれの方法も、すべての相続人の納得と相続稅の納付をきちんと行うことが前提となります。どの方法を採用するかは狀況に応じて考えましょう。