「住宅?土地統計」を読み解く(1)住宅あまりは解消へ向かっている
公開日:2019/10/23
POINT!
?日本の総住宅數は増加ペースが大幅にダウン
?住宅あまり、家あまりにブレーキがかかり始めている
住宅?土地調査とはどんな調査なのか
総務省が主體となって調査を行い、公表する「住宅?土地統計調査」。私たちの住まいの実態を全國規模で、また地域別で把握できる唯一の調査で、住宅分野の最重要調査の一つだと思います。
その最新調査(平成30年=2018年10月1日調査)が2019年9月末に公表されました。この調査は、住宅など居住する建物に関する実態やこれらに居住している世帯に関する実態を調査し、その現狀と推移を全國?地域別に明らかにすることが目的です。
本調査は、昭和23年(1948年)にスタートし、以後5年ごとに行われ、平成30年(2018年)住宅?土地統計調査はその15回目に當たります。
調査の対象者は、全國の世帯から無作為に、約15分の1の割合で抽出した方々で、以下、総務省のホームページより引用します。
この調査を分析することで住まいの実態をつかむことができ、そして土地活用?賃貸住宅のこれからのありかたも見えてくると思います。
- 「具體的には、まず、全國を約50世帯ごとに細かく區切った區域(國勢調査で設定されている各地域)の中から、約22萬地域を住宅?土地統計調査の調査地域として、総務省統計局がコンピュータによって無作為に選定します。次に、その調査地域內にある住戸(住宅及び住宅以外で人が居住している建物)の中から、統計理論に基づいて定めた方法により、調査対象となる住戸を無作為に選定します。このように選定された約370萬の住戸とそこにお住まいの世帯が、調査の対象となりました。」
総務省ホームページより
戦後最も住宅が増えなかった5年間
2018年10月時點の日本の総住宅數は約6240萬戸でした。前回(2013年)調査の時が約6063萬戸でしたので、この5年間で177萬戸の増加、増加率は2.9%となっています。前々回(2008年)調査から前回調査の比較では、総數は304萬戸増え、増加率は5.3%でしたので、増加ペースが大幅にダウンしています。
5年ごとの住宅総數の変化について、1958年以降のデータを見ると、概ね300萬戸臺~400萬戸臺増えています。2000年以降でも5年で約350萬戸ずつ増えていました。しかし、2013年から2018年の5年間は、戦後最も住宅が増えなかった5年間となりました。
世帯數の増加スピードはペースダウン
2018年時點の総世帯數は約5400萬世帯で、2013年時點に比べて約155萬世帯増加、増加率は3.0%となっています。2008年から2013年の増加世帯數は248萬世帯、増加率は5.0%でしたので、世帯の増加スピードは減速しています。1958年以降、総世帯數の増加率(5年ごと)は、最も小さくなりました。
(図1)総住宅數、総世帯數および1 世帯あたり住宅數の推移-全國
*印の數値は沖縄県を含まない
総務省統計局「平成30 年住宅?土地統計調査」より作成
1世帯當たり住戸という指標
これまで述べた2つの數字、総住宅數と総世帯數の推移を比較してみると、1963年までは総世帯數が総住宅數を上回っていました。つまり、前回東京五輪があった1964年ごろの日本には、1世帯1住宅狀態ではなく、住環境がまだまだ整っていない頃だったといえます。
しかし、1968年に総住宅數(2559萬戸)が総世帯數(2532萬世帯)を27萬戸ほど上回ります。そして、1973年には総住宅數(3106萬戸)と総世帯數(2965萬世帯)の差が141萬戸となり、全ての都道府県で総住宅數が総世帯數を上回ります。終戦から約30年で、日本の住環境が全國隅々まで整備されたといっていいのかもしれません。
その後、総住宅數と総世帯數の差は拡大を続けます。前回調査2013年には総住宅數(6063萬戸)が総世帯數(5245萬世帯)を818萬戸も上回っています。これを割り算すると1世帯當たり住宅數は1.16戸となります。この數字は、世帯が増える勢い以上に住宅が増えている、と見え、住宅余りを連想させます。
今回の調査では、1世帯當たりの住宅數は、1.16となりました。數字だけ見ると橫ばいですが、この數字の5年ごとの成長スピードは、この指標が示された1958年以降初めてマイナス3.4%となりました。こうした數字を見ると、住宅余り、家余りにブレーキがかかり始めているといえるでしょう。
まとめ
近年、日本では総住宅數の増加にブレーキがかかっています。新築住宅の建築が増えていないことに加えて、使わなくなった古い家が取り壊されるケースが増えていること、また空き家の対処が進んでいること等がその要因と考えられます。
少し前までは、「住宅が余っている」といわれることが多かったのですが、最近ではそうした狀況は緩和しているようです。