PREコラム
「空き家問題の解決は地域の活性化を生む」(4)都市部でも問題化する空き店舗について考える
公開日:2018/01/31
人口減少と少子高齢化によって、特に地方部にあっては、空き家の増加が社會問題となっており、その解決に向けて、行政やまちづくり組織、住民が一體となった取り組みが進んでいます。
そして、ここにもう一つ、地域の活性化にとって問題となっているのが、空き「店舗」の増加問題です。空き店舗は、厳密には空き家とはいえないのですが、景観上、あるいは地域住民の生活基盤の維持という意味では、地域において解決が急がれる課題です。
空き店舗が増加する原因としては、やはり少子高齢化によって商店街等の商業集積地の來街者が減少し事業維持が困難となったり、事業を引き継ぐ人材がいなかったりすることにより、商店等が廃業することにあります。しかし、空き店舗の問題は、空き家と違い、地方部のみの問題ではないところに特徴があります。都市部においても、郊外の大規模開発などによって、中心部にある商業地の空洞化が各地で見られます。
空き店舗の実態
ここで、空き店舗の現狀を、全國の商店街や支援機関に対するアンケート調査結果である「商店街空き店舗実態調査(商店街向け調査)報告書(平成29年3月、中小企業庁)」を參照してみましょう。
まず、商店街の景況ですが、約6割が「景況が悪い」と回答しており、商店街內の空き店舗率は1割を超えています。その空き店舗の狀態はというと、4割以上が居住者のいる店舗となっています。
商店街などで見かける商店は、1階が店舗で2階が住居という構造が一般的なようです。このような空き店舗の7割以上が「目立つ場所」に立地し、空き店舗狀態が「5年以上」続いている場所が約4割あるとしています。これが、全國で見られる、いわゆる「シャッター商店街」の実態です。
こうした空き店舗が増加すると、商店街のにぎわいが無くなり、これが來街者の減少を招き、さらに商店街の衰退が進むといった悪循環に陥ってしまいます。また、地域の住民にとっては、地域內での日用品や生鮮食料品の入手が困難になるなど、生活上の利便性が低下することになります。
空き店舗問題は、地域行政にとっても地域経済活性化の妨げになりますので、さまざまな施策に取り組んでいます。
空き店舗問題の解決方法とは
空き店舗の主な原因は、高齢化と後継者不在による廃業です。一方、そのような空き店舗物件に対する事業ニーズも少なからずあるのですが、住居が一體となった店舗が不動産物件として流通することが少ないという事情があります。
また、空き店舗の問題解決は、対象となる物件が私有財産であるところに、難しさがあります。
つまり、第三者が勝手に撤去や改修などができないのです。したがって、行政や地域支援機関、まちづくり組織、商店街組合などは、店舗所有者が何らかの改善に向けた行動を促すことが施策の中心になります。
國や地方自治體は、「地域?まちなか商業活性化支援事業(地域商業自立促進事業)」等によって、商店街などが地域商業の活性化を目的として空き店舗解消に向けた取り組みに対して、助成しています。また、店舗兼住宅に対する住宅特例の適用除外など、固定資産稅の特例措置の適用除外等のディスインセンティブ策によって、所有者の改善行動を促進するような試みも考えられています。
空き店舗の活用事例として、全國のモデル的な取り組みを二つご紹介したいと思います。
(1)屋臺村「北前橫丁」の創設で街を活性化(山形県酒田市中町中和會商店街)
酒田市の中心部、商店街のメイン通りである柳小路の角地にあり、平成12年頃に廃業した薬局の空き店舗は、街全體に暗い影を落とし、活気を失っていました。その空き店舗を、酒田まちづくり開発株式會社が中心となりリノベーションして作られたのが、平成27年10月にオープンした「北前橫丁」です。ここは、先行する成功事例である青森県八戸市の屋臺村「みろく橫丁」が原型で敷地面積約77坪の土地に1店舗當たり約3.2坪の屋臺を10軒と約5.6坪の共用トイレを整備し、昭和の懐かしさと平成の新たな屋臺村のイメージを融合させて、幅広い世代の人がふれ合える地域交流の場を提供しています。屋臺には、地元食材を活用した炭火焼き店をはじめ、串揚げや中華、おでん、焼き鳥など多種多様な9店舗が出店。殘る1店舗は創業を目指す人などが1日単位で出店できるチャレンジ屋臺としており、地元の有名な壽司店やレストランが出店したほか、飲食店だけでなく地元の酒蔵が直接出店するなど、酒田の食のPRの場としてさまざまな形で活用されているということです。「北前橫丁」は、オープン以來、順調に伸びており、年間集客10萬人に屆く勢いとなっています。
(2)地域一體となった保育園誘致で商店街を活性化(佐賀県基山町基山モール商店街)
佐賀県基山町は、福岡県に隣接し、博多までは電車で約20分という立地にあります。福岡県のベッドタウンとして栄えましたが、住民の數は平成12年の約19,000人をピークに徐々に減少し、平成26年には日本創成會議によって「消滅可能性都市」との指摘を受けるまでになっています。
基山モール商店街は、20店舗ほどで構成される小さな商店街です。自治體では、平成26年に空き店舗を活用して「まちなか公民館」を開設し、商店街と住民の憩いの場が融合したまちづくりを進めていました。その流れの中で取り組んだのが保育園の商店街への誘致です。商店街の通路の中央にあった植え込みやベンチを撤去した結果、商店街全體が、園児たちがすべり臺などの遊具を持ち出して遊ぶことができる園庭に生まれ変わりました。現在では、園児の保護者や地域住民が集う場所として、商店街のにぎわいが戻りつつあります。
この基山モール商店街の事例は、時代の変化に対応しながら地域に求められる役割を果たしていくことで、多世代が集う街そのものを活性化する可能性を示唆しているのではないでしょうか。