「DREAM Solar(ドリームソーラー) フロート1號@神於山(こうのやま)」(大阪府岸和田市)大阪府で初めての、水面を利用した太陽光発電施設
大和ハウスグループの大和リース株式會社は、大阪府岸和田市のため池「傍示池(ほうじいけ)」を利用し、大阪府內で初となる水面を利用した太陽光発電施設「DREAM Solar(ドリームソーラー)フロート1號@神於山(こうのやま)」を建設、2015年8月より20年間、総出力約1MW(メガワット)の発電事業を行います。
ため池の水面利用による賃料収入で農業施設の維持管理費をまかなう、再生可能エネルギーの普及と農空間保全を一體的に推進する畫期的な事業
傍示池の水は揚水により田畑の灌漑に利用されており、ポンプにかかる電気料金などの維持費負擔が大きいことが課題でした。これに対し、大和リースが世界でも先例の少ない水面利用の太陽光発電事業を行い、それによって生じる水面利用の賃料で維持費負擔をまかなうことをご提案。池の所有者である土地改良區をはじめ大阪府、岸和田市のご賛同をいただきました。
そこで、4者間(大阪府、岸和田市、土地改良區、大和リース)で、地域における再生可能エネルギーの普及拡大、農業の振興?農空間の保全を目的とした連攜協定を締結し、共に事業を進めてきました。売電収入の一部は、大阪府及び岸和田市に寄付し、環境、エネルギー、農業関連の施策推進に利用いただく予定です。
利用価値の乏しかった池の水面を再生可能エネルギー事業に活かすこの取り組みは、新たなエネルギー社會の構築や農空間の保全にもつながるものとして注目を集め、各地からの視察も相次いでいます。
世界的にも先例が少ないなか、貴重なノウハウを習得
水上での太陽光発電には、パネルを載せる樹脂製のフロート(浮き)が不可欠です。世界的に先例に乏しくメーカーも少ない狀況でしたが、お客さまに長期間安心してご利用いただけるよう、厳しい検証基準を定めました。その結果、少し時間はかかりましたが、熱心な協力メーカーと出會うことができ、品質?コスト両面に優れたフロートを採用することができました。
設計?施工は大和ハウス工業が擔當。水位の変動やフロートの浮動など、水上特有の各種課題に取り組みました。水上での太陽光発電事業は、大和ハウスグループにとって初の取り組みであり、試行錯誤のなかから今後に活きる多くのノウハウを習得することができました。
池の面積16,000㎡に対してフロートで浮かべた太陽光発電パネル面積は10,000㎡。水位が最も低下した狀況でも、パネルの安全が保てるよう、池の底の形狀に合わせて配置しています。
傍示池(ほうじいけ)は、雨の少ない地域の農業用水確保のため、1990年に作られた人工池です。低地を池とすることで地區の降水を集め、ポンプで揚水し自然流下で田畑を潤します。同時に、洪水を防ぐ調整池としての役割も擔っています。
水面への太陽光発電パネル設置の様子
池の上に浮かぶ、4,016枚の太陽光発電パネル。年間予定発電電力量は1,180,520kWh/年。これは、年間消費電力量換算で約328世帯分/年にあたります。
1. 1枚のサイズが1.65m×0.992mの太陽光発電パネルを岸辺に設けた作業ヤードで9枚連結し、1つのユニットとして組み立てます。
2. フロートを取り付けたユニットをクレーンで吊り上げ、池に浮かべます。
3. 試行錯誤の結果、対岸までワイヤーを渡し、ワイヤー伝いに太陽光発電パネルのフロートを移動させることで、効率良く設置できることがわかりました。
4. 風速50mの風にも耐え、また1.5mの水位変動を想定して、太陽光発電パネルのフロートは池の周囲に打たれた係留杭にワイヤーで固定されています。
5. 送電線には、水が入っても安心な水中ケーブルを使用。また、ケーブルが動いても大丈夫なように、蛇腹形狀の配管を用いています。
6. ケーブルの敷設作業などでは、ゴムボートが活躍しました。
7. パネル間で生じる影などを考慮して、配置効率を高めるために約10度の傾きで設置された太陽光発電パネル。
8. 水上の太陽光発電パネルは、地上に比べてパネルの周囲の溫度が低いと考えられます。そのため、パネルの溫度上昇が抑制され、発電効率が上がることも期待されます。
大和ハウスグループが一體となって様々なご要望にお応えし、行政や地元と力を合わせて再生可能エネルギー事業を実現
當社グループでは、「風」「太陽」「水」の有効活用をテーマに、2020年までに約260GWhとすることを目指して、再生可能エネルギー事業を進めています。メガソーラー事業「DREAM(※) Solar」もその一環で、當社グループが建設から運営管理までをワンストップで手掛けています。
本プロジェクトはこれまでの経験を活かし、大和リースが、傍示池所有者である岸和田市神於山土地改良區さまから水面を借り受けて行う発電事業をご提案。大阪府や岸和田市のご支援?ご指導のもと、大和ハウス工業と連攜して施設を完成させ、事業化にいたりました。
今回は、行政?地元?當社グループが、次代に向け、新しいエネルギー社會の構築と、農空間の保全を図ろうとする想いを一つに力を合わせた先例です。今後も、當社グループの強みである多様な事業スキームと多彩な施工技術を活かし、再生可能エネルギーによる発電事業を推進していきます。
※DREAM:D:Daiwa House Group(大和ハウスグループ)、R:Renewable(再生可能)、E:Energy(エネルギー)、A:Asset(資産)、M:Management(管理)。
太陽光発電設置についての調査計畫から運営管理までの一貫管理體制
お客さまの聲
信頼できるパートナーと出會え、
積極的に新しいことにチャレンジしていく気運が生まれました。
瀬戸內気候で溜め池の多い當市では、水面で太陽光発電ができればと、間伐材でフロートをつくる案を検討し、技術的な難しさから斷念したこともありました。また市內の改良區では、ため池の活用による維持管理費の負擔軽減が課題でした。そこに、大和リースさんが、営利だけでなく會社としての社會貢獻も重視して新たな取り組みにチャレンジしてくれるとともに、大和ハウスグループを挙げての盡力があったからこそ成功したのだと嬉しく思っています。この事例をモデルに、他からも「やりたい」という聲が上がってくることと楽しみです。子どもたちにも、環境やエネルギー問題、地域の課題などについて學ぶ良い教材を身近に得ることができました。今後も、積極的に自然エネルギーによる発電を推進します。
岸和田市産業振興部長
小山 藤夫様(左)
岸和田市産業振興部
農林水産課
丘陵地區農整備擔當
擔當主幹
小橋 真也様(右)
お客さまの聲
太陽光発電によって地區の農業に吹いてきた新しい風に、
大きな期待を寄せています。
今回こういう大きなプロジェクトが所有する傍示池の上で展開されることになり、多くの方が関心を持たれ、訪ねて來られる方もあり、新しい風が吹いてきたのをひしひしと感じます。渇水期にも水位の低下を1.5m未満に抑え発電パネルの損傷を防げるように、上手の大きな溜め池から水を融通してもらうための覚書も交わしました。今後は、池面の賃料でポンプの電気代をほぼ全額まかなえるようになり、その分を他の様々な施設の維持管理に充てることができます。また、地元の人や子どもたちにもこの太陽光発電パネルを見てもらい、池面をお貸しする地元の管理者としてしっかり知識をお伝えすることで、さらに新しい何かが起こってくるのではないかと期待しています。
岸和田市神於山土地改良區
事務局長
西村 茂様(左)
事務員
上田 圭子様(右)
擔當者の聲
農業水利施設から新しい価値を生む方法論をご提供していくことに、
大きなやりがいを感じました。
以前から接點のあった岸和田市の丘陵地區農整備総括理事(當時)から、神於山土地改良區さまにおいて溜め池の揚水費用が重荷となっている旨、ご相談をいただいたのが発端でした。池の上での太陽光発電の可能性をお伝えすると強い興味を示され、早速社內でご提案に向けて動き始めました。漏電対策などのハードルが高く、厳しい大和ハウス工業の品質基準をクリアするフロートやパネルの調達が難問でしたが、最終的にメーカーの協力を得て、実現にこぎつけることができました。関係者の方々が農業を盛り上げようと努力しておられるなか、その一端を擔うことのできる方法論を打ち出せたことに、これまでのソーラー事業とはまた違った、大きなやりがいを感じることができました。
大和リース(株)大阪本店
環境緑化営業所 課長代理
柴 勝(右)
環境緑化営業所 営業二課
上席主任
中藤 博文(左)
擔當者の聲
體験して初めてわかったフロート型メガソーラーの施工上のメリット。
今後への可能性を実感しています。
施工管理擔當として、手がけた太陽光発電所はこれが6件目。初の水上での施工となりました。地上では、基礎も架臺も設置場所で施工するため、人を増やすと人や資材が交錯し、作業効率が上がりません。しかし今回は、池を囲む法面に設けた作業ヤードで集中して作業ができたため、効率良く進めることができました。また、水平な水面上の工事のため、パネルの水平微調整をしなくてもいいという利點もありました。
水上での施工法は、池の形狀や大きさなどによって変わってくるので、今後も事例ごとに試行錯誤が続くと思います。それでも、今回學んだ基本的なことは、どんな場合にも活かすことができます。今後のフロート式の太陽光発電所の普及に向けて、大きな手応えを感じる経験となりました。
大和ハウス工業(株)
本店 環境エネルギー事業部
エンジニアリング部 主任
三井 恭男
擔當者の聲
20年間稼動できる、水に強い電気設備を目指しました。
成果を実証していく今後がとても楽しみです。
電気設備関係を擔當し、設計段階からプロジェクトに參畫してきました。そのなかで苦心したことの一つが、浮動や浸水に強いケーブルの選択です。また、要所要所で電気を集める接続箱の防水性能などにもこだわりました。20年という長い事業期間、稼動できる設計としていますが、前例がないため、理論の裏づけを行っていくことが今後の課題です。また、太陽光発電パネルは、水上では発電効率が高まると予想されています。パネル設置場所の賃料が地上より抑えられ、発電効率は地上より良くなるであろう水上の太陽光発電には、大きな期待を持っています。それに応えることのできるよいデータが出てくるのが、とても楽しみです。
大和ハウス工業(株)
本店 環境エネルギー事業部
エンジニアリング部 主任
伊東 光晴