コラム vol.114
「データで読み解く 土地活用の極意」
データで読み解く 知っている企業は得をする!
CRE戦略の本質
公開日:2016/01/29
CREとは何か
「CRE」という言葉は、ずいぶん一般化してきました。CREとはCorporate Real Estate、つまり、「企業が所有する(あるいは利用する)不動産」という意味の英語の頭文字をとったものです。つまり、CREは不動産そのものを指し、「企業が所有する(利用する)不動産とどう関わっていくか」を「CRE戦略」と呼びます。
どんな小さな企業でも何らかの形で不動産と関わりを持っています。最近では、オフィスを持たない企業もありますが、たいていの企業では少なくとも、「オフィスを持つ」という形で不動産と関わっています。
また、製造業や物流業、サービス業等の業種の企業は、事務所(オフィス)以外に店舗や工場や倉庫など、大きなサイズの不動産と関わりを持つ場合もあります。
企業経営において必要な経費は、毎月(あるいは毎年)必ず支出がある固定費と、それ以外の変動費に分かれますが、中堅~中小企業においては、どの企業もなるべく、必要な経費である固定費を抑えて、変動費化したいと考えていることでしょう。しかし、たいていの企業では、固定費のうち不動産関連費は、人件費とならんで大きなウエイトを占めており、また「固定費がかかることは、仕方のないこと」となっています。
(ここでいう不動産関連費は、各種賃料、企業で取得した不動産の費用や建物減価償卻費等)
こうした、大きなウエイトを占める「企業が所有する(利用する)不動産を最大限有効に活用することにより、『企業価値の最大化』を図ること」がCRE戦略の目的です。
そのことにより、「(1)企業経営の効率化?最大化 (2)企業経営の安定化」を見込むことを目的としています。
また、不動産鑑定の理論では、不動産価格は、周辺要素と個別要素で決まるとされているので、大きな店舗や施設などといった企業が所有する不動産の利用狀況は、「(3)周辺地域の地価水準の安定化」をもたらすとされているのも忘れてはいけない點です。
下の図にあるように、日本の不動産のうち約14%、約490兆円分(2008年時點)は企業が所有するといわれていて、大きなウエイトを占めていることがわかります。
CREの具體的アクション
具體的なCRE戦略の具體的なアクションとは、企業が関わる(所有?賃貸)不動産を精査し、
- (1)売卻??????手放す
- (2)有効活用????賃貸需要を建てる、ビルを建てる
- (3)賃貸??????土地を貸す、ビルを貸す
- (4)賃借??????所有から賃貸への変更、リースバック
- (5)購入??????新しい不動産を購入
などを行うことです。
CRE戦略が広く行われるようになったのは、2000年代前半からで、(その頃は、まだCREとは言っていませんでした)その背景としては、
- (1)企業経営の効率化の追求が広がる
- (2)経営の安定化
- (3)機械化の発達
- (4)(上場企業の場合)モノ言う株主からのプレッシャー
- (5)(地方都市企業)地価下落基調のため
などが、考えられます。
このように、効率的に収益を上げよう、無駄なお金は使わない、遊んでいる土地は有効活用しようというわけです。
電鉄?バス會社の事例
ある電鉄?バス會社では、使わなくなったバス車庫用土地の上に高層賃貸住宅を建てて、大きな収益を上げています。遊んでいた、あるいは、効率よく使っていなかった土地が莫大なお金を生むことになったわけです。
ここの電鉄?バス會社では、有効活用していなかった土地の活用法として、分譲マンションとして売れそうな場所では、自社がディベロッパーとなり開発?販売してきました。それ以外は、他社に売卻したり、土地を賃貸したりしていたようです。
しかし、分譲マンションや土地を売卻するということは、その土地を手放すことに他ならなりません。一時的な売上増にはなりますが、安定的な収益は見込めません。そこで賃貸住宅としての利用が検討されました。まずは、使わなくなった電車関連施設跡地にビジネスホテルを建設して運営。これが大成功を収めました。続いて、賃貸住宅を建てて自らが貸主となって賃貸住宅経営を始めました。ビジネスホテルも賃貸住宅事業も、次々と何棟も建て、どちらも大きなビジネスに成長しています。
企業が所有する不動産の精査の方法としては、これまでは所有か賃貸か?という比較的シンプルな思考での検討でした。しかし、近年では、経営の視點、財務の視點も併せて考えることで、単純な不動産の論點ではなく、新たなビジネスとして検討する企業も増えてきました。
先に述べた企業以外でも、多くの電鉄會社は自社土地の有効活用としてうまくビジネスに繋げています。
中堅企業でも活用が進む
一方、中堅~中小企業においても同様の事例が見られます。ある製造業では自社土地の有効活用として所有する土地の一部に賃貸住宅を2棟建てました。
この企業が使っていた機械設備は、進化して小型化が進み、大きな工場が不要になったのです。その空いたスペースの利用を検討。売卻しても期待していた金額にならないとして、賃貸住宅を建てて、安定収入を得ることにしました。
日本の製造業は強いとはいえ、先行きは不透明で、世界的な不況などが起こると、一気に経営悪化にもなりかねません。そんな時でも賃貸収入があれば、従業員の給料はまかなえるとして、危機回避の保険にもなっているようです。
また、ある小売業では、築40年を超え老朽化したスーパーの建て替えを契機に、上層階(2階以上)を賃貸マンションにする計畫を進行させています。これにより、不安定な小売業の売上だけでなく賃料という安定収入を見込む計畫です。