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コラム vol.107

2016年の不動産市況を占う

公開日:2016/01/05

転換點は2015 年の秋ごろ!

2015年の不動産市況を振り返ってみると、メディア等世間の一般論的には、「かなり活況だった」と言っても過言ではありません。
しかし、業界関係者の中で、それとはかけ離れており、「不動産市況は今がピーク」という印象が強いようです。
確かに、2015年夏をすぎた頃以降は、中古マンションの売れ行きに陰りが見え始めました。特にその動きは、東京都心の高級マンションで顕著になっています。
私の周りでも、夏以降、不動産業界関係者やその周辺の方々が、「今が売り時」とばかりに所有するマンションを売り始めました。くしくもその引き金となったのは、橫浜のマンションの杭問題でしたが…。

私は、「これまでの歴史を紐解くと不動産市況は、7年サイクルである」と、多方面のメディアで述べてきました。同時に、「今回のサイクルの転換點は、2015年の夏ごろ」とも言ってきました。
改めてその動向を振り返ると、その予想よりもやや遅れて、転換點は「2015年の秋ごろ」だったということになるでしょう。
次のグラフは、2005年からの地価の動向です。2008年発表分をピークに下がり始めています。

2016年4月発表の大都市圏の公示地価はおそらく前年対比ではプラスとなるでしょう。

公示地価の前年対比の推移

國土交通省データより作成

しかし、このあたりがピークで、その後は大きな下げはなく、しばらく橫ばいが続くと思われます。

住宅著工戸數(総數)

次に住宅著工戸數(総數)を振り返り、予測してみましょう。まずは、2014年と2015年の月別の新築住宅著工戸數を見てみます。

2014年と2015年の新設住宅著工戸數月別推移

出典:國土交通省 「建築著工統計調査報告」

一昨年2014年は、2013年の反動減があり89萬戸でした。2015年に入って、3月~9月は前年対比プラスが続いて、ハウスメーカーの厳しかった戸建住宅(注文住宅)部門も息を吹き返した様子でした。
10月分までの數字が出た12月初旬の時點では、「昨年の1月~10月は73.7萬戸と比較し、2015年は75.5萬戸でプラス2%となっています。昨年の數にプラス2%をかけると91.2萬戸となりますが、10月以降は失速感が見られるので、昨年並みの89萬戸プラスマイナス1萬戸ということになるでしょう」と予測していましたが、結果は、90.9萬戸(2014年対比1.9%増)となりました。

2016年の市況予測

住宅の建設において、2017年3月31日までの引き渡し物件は消費稅8%で、それ以降は10%の消費稅となる予定です。2017年4月の導入は、景気條項によるオプションがついていませんので、このままの流れであれば(政治的な判斷があるかもしれませんが)、10%になるでしょう。
10%となると一桁変わることになりますので、かなりの重稅感が出てくるでしょう。
前回の5%から8%に上がった時と同様に、経過措置として、引き渡しがたとえ17年の4月1日以降でも、請負契約が前年(2016年)9月30日までに結ばれていれば、8%のままとなります。
住宅の建設をどの會社に依頼するか、どんなプランにするかなどを決めるには少なくみても半年くらいはかかりますから、春先からは、消費稅増稅の駆け込みムードが高まるでしょう。
これによって、持ち家(注文住宅)、賃貸住宅はプラスになると予測されます。
ただ、2014年に消費稅が5%から8%に上がった際は17年ぶりの消費増稅だったのに対して、今回は3年しか経っていません。
そのため、8%に上がった際に慌てた方々は、すでに駆け込んで住宅を購入したとも考えられます。

一方、厳しいのは分譲マンションでしょう。
都心の超一等地、再開発案件などの物件は、即日完売が多いですが、全體的には2016年は厳しいムードです。
販売価格の上昇は避けられないムードに加えて、分譲マンションに対する不信感が広まって向かい風が吹いています。
こうしたことを考慮すると、消費稅アップ前の駆け込み需要はあるものの、前回のようにプラス10%を超えるとは考えにくく、また分譲マンションなどのムードは厳しいことから、2016年の住宅著工數は2015年並みの90萬戸前後ということになるのではないでしょうか。

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