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コラム vol.515-4
  • 土地活用稅務コラム

賃貸住宅経営は不動産事業(4)損益計算書上は黒字でも、キャッシュ不足になる?

公開日:2024/10/31

損益計算書(P/L)とキャッシュフロー(CF)

賃貸住宅経営とは、多くの場合、収益となる家賃収入に対して、そのためにかかった費用を差し引き、殘った金額が利益となるビジネスです。基本的に家賃が発生する時期は一定で、ローンの支払い時期も一定ですから、何も問題がなければ、経営は順調に進んでいきます。
賃貸住宅経営の収支計算は、損益計算書(P/L)で表し、確定申告もこのP/Lを基に行います。ところが、家賃の未収金があったり、修理など突然の出費があったりすると、損益計算書とは異なる現金の動きが現れます。また、損益計算書には、借入金の元本返済などの支出が含まれないので、実際に手元にいくら殘ったのかという「キャッシュフロー(CF)」とは異なる計算結果になることが、たびたび起こります。
賃貸住宅経営の損益計算(P/L)は、家賃収入から、借入金利息、減価償卻費、そして諸経費を差し引いて求めるのに対して、キャッシュフローは、P/Lで算出した利益から、稅金を引き、そして減価償卻費をプラスし(実際にはキャッシュが動いていないため)、借入金元本を引いたものがキャッシュフロー(手殘りキャッシュ)ということになります。
このように計算式が異なりますので、P/L上の利益と手元に殘るキャッシュに差が生まれるわけです。

P/LとCFの違いを簡単にまとめると以下のようになります。

  P/L キャッシュフロー
家賃の滯納分 滯納分の家賃も収入として計算 キャッシュなし
敷金?保証金 計上なし キャッシュはプラス
減価償卻費 計上 キャッシュとして移動なし
借入金 計上なし (利息は経費として計上)元本、利息ともにキャッシュとして支払い
稅金 計上なし 所得稅?住民稅などキャッシュとして支払い

これらの差があるため、P/Lだけを見ていると、キャッシュが不足していることに気がつかない場合があります。またこれ以外でも、賃貸住宅の火災保険は先払いなのでキャッシュとして支払いが発生しますが、P/L上では、保険期間で経費として按分しますので、注意が必要です。

上記の表でも紹介しましたが、キャッシュフローで、特に注意したいのは以下の點です。

  • ?家賃の滯納金
    家賃滯納があると、P/L上では収益として計上されますが、実際にはお金は入ってこないためキャッシュフローではマイナスになります。
  • ?敷金?保証金
    敷金や保証金は実際にお金が入ってくるためキャッシュフローではプラスになります。逆に、P/L上では「預り金」扱いとなり、収益には計上されません。
  • ?減価償卻費
    減価償卻とは、時間の経過とともに資産としての価値が目減りすることで、その目減り分は費用となります。その費用のことを減価償卻費と言います。ですから、キャッシュとしては出ていきませんが、必要経費として計上されます。
  • ?借入金の元本
    キャッシュフローで一番大きく動くのが、借入金の元本の返済です。経費ではありませんので、P/L上の計算には含まれません。
  • ?稅金(所得稅?住民稅など)
    所得稅や住民稅もキャッシュは出ていきますが、経費にはなりません。

P/Lとキャッシュフローの例

以下の例は、P/Lとキャッシュフローの極端な例ですが、P/L上では、十分な利益が出ているにもかかわらず、稅金を支払った段階でキャッシュフローはマイナスになっています。こうしたことが起こらないためにも、キャッシュフローの計畫を立てておく必要があります。

図1:P/L

図2:キャッシュフロー

キャッシュフロー表を作成する場合は、前年と今年とを比較して、各項目の増減を明らかにし、原因を突き止めておくことも大切です。昨年のキャッシュフローに対して、今年悪化しているのであれば、何らかの原因があるはずですから、その原因を把握することができれば、対策を立てることも可能です。また、翌年にも想定されることであるならば、早めにキャッシュの準備をする必要があるかもしれません。さらに、空室が目立ってきている狀況であるならば、事業內容を根本的に見直す必要もあるかもしれません。

リスクに備えてキャッシュを保有する

賃貸住宅経営を長年行っていると、空室が増加したり、修繕が必要になったりすることが必ずあります。空室が発生した場合、賃料がキャッシュとして入ってきませんし、修繕が発生した場合は、キャッシュで支払う必要があります。
こうしたキャッシュ不足が長期にわたって続いてしまうと、最悪の場合、賃貸住宅経営を継続することができなくなる可能性がありますので、不動産経営を継続するためには、経営におけるキャッシュフローの狀態を把握し、手持ちのキャッシュ不足に陥らないようにする必要があります。
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあると思います。これはP/L上は利益が出ているのに、資金繰りが悪化して會社が倒産してしまうことです。様々な戦略を立て、事業としては成り立ったとしても、キャッシュ不足によって倒産してしまっては、何のために事業を行っていたのか分からなくなってしまいます。そうならないために、將來まで見據えて、キャッシュフローを管理、把握しておくことが大切です。

キャッシュフロー対策

上記のようなリスクに備えるためにも、余裕のあるキャッシュフローを維持するための対策をとることが大切です。 例えば、借入の條件変更等によって、借入はできるだけ返済期間を延ばすことで毎月のキャッシュフローに余裕が出ます。また、何より「未収家賃(滯納)」をなくすことが重要です。常日頃から、ご入居者の様子を確認しながら、快適な生活を維持できる狀態なのかどうかをチェックしておく必要もありそうです。

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