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コラム vol.507-5
  • 土地活用稅務コラム

相続対策としての「短期対策」(5)養子縁組

公開日:2024/10/31

相続対策や相続稅等の計算において、養子縁組は屆け出たその日から効力が発生するため、即効性のある対策といえます。養子縁組により得られる効果で主なものを紹介します。

ただし、「相続対策としての『短期対策』(1)」でも述べたように、本來は、相続対策は、現狀把握を行い、対策を立案し、十分にその內容を吟味してから計畫的に実行に移すべきものであり、総合的に検討し、対策を行う必要があることを理解しておいてください。

法定相続人が増えることによる基礎控除額の増加

相続稅の総額を計算する楊合に課稅価格の合計額から控除することができる基礎控除額は、「3,000萬円+600萬円×法定相続人の數」で計算されるため、養子縁組により法定相続人が増えることで基礎控除額も増加することとなります。
また、相続人が受け取った生命保険金等及び退職手當金等については、それぞれ「500萬円×法定相続人の數」まで非課稅とされています。養子縁組により法定相続人が増えることで非課稅限度額も増加します。

相続稅の総額を計算する場合の累進稅率の緩和

相続稅の総額は、課稅遺産総額を法定相続分に従って分け、各取得金額に累進稅率を適用して計算します。したがって、養子縁組により法定相続人が増えることで適用される累進稅率が低くなる可能性があります。

  • 【ケース】
  • 1.被相続人 父(令和6年3月死亡)
  • 2.相続人 母と子1人
  • 3.相続財産 5億円
  • 4.遺産分割 法定相続分どおり相続する。なお、母の固有の財産はないものと仮定する。
  • 5.養子縁組 子の配偶者を養子縁組した場合の効果の確認
  • 図1

  • 父が養子縁組をしていれば、第一次相続において1050萬円、第二次相続では2010萬円、通算相続稅では、3060萬円相続稅が軽減されます。

相続稅額の2割加算の不適用

被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)及び配偶者以外の人が、相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その人の相続稅額は2割加算されることとなっています。しかし、養子縁組を行うと、養子は民法上の一親等の血族に該當することになり、2割加算の適用はありません。
ただし、被相続人の養子となった當該被相続人の直系卑屬である孫など(代襲相続人である者を除く)については2割加算の対象者とされます。

図2

相続の一代飛ばし

孫と養子縁組をして財産を相続させると、相続稅の課稅を一世代飛ばすことができます。例えば、父から子へ、そして子から孫へ財産が相続される場合には、その都度相続稅が課稅されますが、父から直接孫へ相続させれば相続稅の課稅は1度で済みます(ただし、相続稅額の2割加算の対象者となります)。

  • 【ケース】
  • 1.被相続人 父(令和6年3月死亡)
  • 2.相続人 長男?養子縁組がある場合には長男の子?長女
  • 3.父の相続財産と遺産分割
  • 4.長男(令和7年5月死亡)の相続人 妻?子
  • 5.長男の相続財産と遺産分割 長男固有の財産 1億円 父から相続した財産 相続稅を控除した金額が殘っていると仮定
  • 6.相続稅の計算
  • 図3:【父の相続稅】

  • 図4:【長男の相続稅】

    • ※1 父から相続した財産
      ?縁組なし(1億5,000萬円-3460萬円)÷2人=5770萬円
      ?緑組あり(1億円-1820萬円)÷2人=4090萬円
    • ※2 相次相続控除
      ?縁組なし(子) 3460萬円×1/1×(1億770萬円÷2億1540萬円)×(10-1)/10=1557萬円
      (妻は配偶者の稅額軽減後の金額が上限とされているため控除額は0円)
      ?縁組あり(子) 1820萬円×1/1×(9090萬円÷1億8180萬円)×(10-1)/10=819萬円
      (妻は配偶者の稅額軽減後の金額が上限とされているため控除額は0円)

養子縁組と遺留分

遺産分割の対策として、財産をなるべく渡したくない相続人がいる場合に、遺言書を作成して他の方に渡すこととしておいても、遺留分により最低限は取り戻されてしまいます。養子縁組をすると、相続稅法上は、法定相続人に算入される養子の數には制限がありますが、民法上は何人でも養子は法定相続人となります。そこで、養子縁組を行うことで、法定相続人を増やすと、1人當たりの遺留分の割合を少なくすることができます。
この場合、養親となる者の意思能力の有無を巡って紛爭の発生を防止するために、養子縁組の屆出書に養親本人の自署を求め、それが不可能なときには、屆出書の作成に當たって養親の意思を確認するに足りる公正な第三者を立會させる等の配慮が必要です。
共同相続人の相続分ないし遺留分の割合を減少させようとすることのみを目的とする養子縁組は、法律上の親子関係を形成しなければならない特段の必要性はなく、民法802條1號にいう「當事者間に縁組をする意思がないとき」に該當し、養子縁組が無効とされる可能性があります。養子縁組が相続爭いの火種とならないよう細心の注意が必要です。

  • 【ケース】
  • 1.被相続人 父(令和6年3月死亡)
  • 2.相続人 長男、長女
  • 3.養子縁組 長男の妻と子を養子縁組
  • 4.父の財産 4億円
  • 5.遺言書による遺産分割(長女の遺留分に配慮した遺言書にしてある)
    ①養子縁組なし:長男3億円、長女1億円
    ②養子縁組あり:長男3億円、長女5千萬円、長男の妻4千萬円、長男の子1千萬円
    (注)長女の遺留分
    養子緑組なし:4億円×1/2(総體的遺留分)×1/2(個別的遺留分)=1億円
    養子縁組あり:4億円×1/2(総體的遺留分)×1/4(個別的遺留分)=5000萬円
  • 6.相続稅の計算
  • 図5

  • ※実子がいるため、養子は1人と數えて基礎控除額を計算します。

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