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コラム vol.473-2
  • 賃貸住宅経営のポイント

賃貸住宅経営の基本(2)入居者ニーズの変化をとらえる

公開日:2023/12/26

賃貸住宅経営を長期的に維持しようと思えば、ご入居者のニーズに合った住まいを提供することが必要となります。建築した時期から10年も経てば、ご入居者の狀況や周辺環境も変化し、ニーズは変化していきます。
現在のご入居者に長く住んでいただくためにも、新しくご入居される方々に選んでいただくためにも、常にご入居者の求める住まいを把握し、反映させていくことが大切です。

新型コロナウイルスの感染拡大は、住まいにも大きな影響を與えました。在宅勤務が増加し、外出機會が減少。多くの人が自宅で過ごす時間が増加しました。また、通勤がほとんどなくなった人の中には、都心に住む必要がないと判斷し、郊外や地方に働く場所、住まいを求める人も現れました。
最初に、現在のテレワークの狀況がどうなっているのかを確認します。

テレワーク実施率の変化

以下で紹介するデータは、株式會社パーソル総合研究所が2023年8月15日に公表した、「第8回?テレワークに関する調査/就業時マスク調査」からの調査結果です。
2023年7月のテレワーク実施率は22.2%で、2020年4月以降で最も低くなりました。新型コロナウイルス感染癥の位置づけが、2023年5月8日から「5類感染癥」になり、在宅勤務からオフィスでの勤務に移行した企業が増加したようです。

図1:従業員のテレワーク実施率

株式會社パーソル総合研究所「第8回?テレワークに関する調査/就業時マスク調査」より作成

企業規模別に見ても、すべての規模の企業でテレワークの実施率は低下しています。しかし、従業員1萬人以上の企業においては2023年においても、35.4%とテレワーク実施率は高く、ひとつの働き方として定著している企業もありそうです。
逆に従業員100人未満の企業においては、ピーク時でも16.6%と、大半の企業ではテレワークを実施していないことがうかがえます。

図2:企業規模別テレワーク実施率

株式會社パーソル総合研究所「第8回?テレワークに関する調査/就業時マスク調査」より作成

図3:地域別テレワーク実施率

地域別に見ても、すべての地域において、テレワーク率は減少しています。しかし、関東でのテレワーク実施率が高く(東京都は2023年7月時點で38.8%、神奈川県では33.1%)、地域によって大きな差があります。
テレワークを行うかどうかで住まいに求めるニーズは大きく変わってきますので、賃貸住宅オーナーにとって、賃貸住宅経営を行う地域のテレワークの実施率、周辺にある企業の規模や業種などを踏まえる必要がありそうです。
また、同調査において、テレワーク実施者の「テレワーク継続意向」は81.9%と過去最高の結果となったようです。つまり、現在テレワークを行っている人は、今後もある程度継続すると考えて良さそうです。

設備に対する満足度

次に、2023年9月29日に公表された、株式會社リクルートの『SUUMOリサーチセンター』による「賃貸住宅へ入居した方の動向調査」から、設備や條件などに関する入居者ニーズを見てみます。
現在住んでいる賃貸物件にある設備の満足度では、「24時間出せるゴミ置き場」が、7年連続で満足度1位となり、「ディンプルキーなどのピッキング対策の鍵」も同率で1位となっています。
警備會社によるセキュリティシステム、ウォークインクローゼットも、2021年度から増加していますが、その一方で、浴室乾燥機やオール電化、遮音性能の高い窓などの設備は、2021年度よりも低下しており、2021年までの在宅時間の増加に伴う設備の充実への関心が一段落し、外出を伴った安全性やセキュリティに関心が向いている傾向が出ていると思われます。
世帯構成別に見ると、女性社會人において「ディンプルキーなどのピッキング対策の鍵」「24時間出せるゴミ置き場」「室內物干し」の満足度が全體に比べて高くなっています。
また、ファミリー層においては、「24時間出せるゴミ置き場」や「警備會社によるセキュリティシステム」「無料インターネット」などは他の世帯に比べて高くなく、二人世代では、逆に「警備會社によるセキュリティシステム」「無料インターネット」に対する満足度が高く、仕事やライフスタイルの違いが見て取れます。
賃貸住宅オーナーにとっては、ご入居者がどのような世帯となるのか、こうした傾向を把握しながら、ニーズに合った設備を検討する必要がありそうです。

図4:現在住んでいる賃貸物件にある設備の満足度

株式會社リクルート『SUUMOリサーチセンター』2022年度(2022年4月~2023年3月)に賃貸住宅へ入居した方の動向調査より作成

また、次に引っ越す際に絶対欲しい設備では、「浴室乾燥機」「遮音性能の高い窓」「システムキッチン」「オール電化」などの設備関連のニーズがかなり低くなっているのに対して、「セキュリティシステム」「ディンプルキーなどのピッキング対策の鍵」「スマートロック」「非接觸キー」など、テクノロジーを利用したセキュリティに関するものは、上昇もしくは維持の傾向を見せています。
前回までは、コロナ禍で、快適に暮らすためにさまざまな設備へのニーズが高まる様子が見られていましたが、今回はそれが落ち著き、テクノロジーを利用し安全で楽に過ごせることが望まれているようです。
これらの設備リストを見て、賃貸住宅オーナーの方は、経営されている賃貸住宅の設備について定期的に確認することが大切です。その際には、「ひとり暮らし(學生?社會人)」「2人」「ファミリー」ごとにニーズは異なりますので、ご入居者の屬性によって異なることも忘れてはいけません。

賃貸住宅を選んだ要因

この調査では、賃貸住宅を決めたときの要因についても紹介されています。以下の表にあるように、決定時に決め手となった要因として最も多いのが、「路線?駅やエリア」。次に「最寄り駅からの時間」「通勤?通學時間」となっています。2020年、2021年から上昇した要因は、「初期費用」「通勤?通學時間」ほか、逆に低くなったのが、「最寄り駅からの時間」「面積」「間取り」「設備?仕様」「生活利便性」などとなっています。
これは、通勤がある程度増加し、通勤時間が重要な要素になっているのと、部屋にいる時間が短くなり、設備仕様についても大きなこだわりが少なくなってきているのでしょうか。
ただし、ご入居者の世帯によって決め手となった要素はかなり異なります。世帯構成別に見ると、社會人の中で、男性は「初期費用」、女性は「設備?仕様」が高くなっています。
また、2人暮らし、ファミリーは「間取り」や「部屋の數」が決め手になったと答えた人が他の世帯と比較して高くなっています。

図5:決め手となった項目[家賃を除いた條件]【1~3位合算スコア】(各単一回答)

株式會社リクルート『SUUMOリサーチセンター』2022年度(2022年4月~2023年3月)に賃貸住宅へ入居した方の動向調査より

見學の件數、方法

賃貸住宅を決める際には、當然、見學を行った上で決定しますが、その見學の件數や方法にも、変化が起きているようです。
部屋を決定する際、実際に見學した件數は、平均2.7件となり、意外に少ない件數となっています。インターネットやスマートフォンの普及や、ポータルサイトでの紹介內容の充実、ユーザビリティの向上などによって、ここ20年近く、減少傾向となっていますが、2005年度と比較すれば、特に二人世帯では、約半分の件數となっています。ただし、ファミリー層においては、居住期間が長いこともあり、一人暮らしや2人に比較して見學件數は多く、平均3.2件となっています。
ご入居者を募集する際に、Webサイトなどの情報提供がいかに重要かを示しているようです。

図6:部屋探しの際に見學した物件數

株式會社リクルート『SUUMOリサーチセンター』2022年度(2022年4月~2023年3月)に賃貸住宅へ入居した方の動向調査より

実際の見學が減少しているのは、事前の情報が充実しており、ある程度の選別が可能だということに加えて、オンラインによる見學の実施が増加しているのも要因のひとつのようです。
見學の際、オンライン內見のみという人が22.7%もおり、オンライン內見?対面での內見併用者が9.8%で、合計で32.5%の人がオンライン內見を実施しているようです。
世帯別に見ると、男性30代?20代以下、世帯構成別では男性社會人のオンライン內見の実施率が高くなっています。女性30代やファミリーでは、オンラインと対面の併用率が、全體より高くなっている調査結果が出ています。

Z世代の住まいに対する価値観

Z世代とは、1990年代半ばから2010年代前半に生まれた世代で、2023年現在12歳~28歳前後の年齢層を指し、デジタルネイティブ、SNSネイティブとも言われています。Z世代の特徴としては。タイムパフォーマンス重視、仲間志向、仕事よりプライベート重視、多様性の尊重などの価値観を持っていると言われています。
このようなZ世代は、すでに一人暮らしの年齢に差しかかかっていることもあり、これから賃貸住宅経営を始める人にとっては、忘れてはならないご入居者層のひとつになっていきます。

アットホーム株式會社が行った調査「現在賃貸物件で一人暮らしをしているZ世代(17~26歳)を対象にライフスタイルや価値観、求める住まいに関する調査」によれば、以下のような住まいに対する価値観を持っていることが分かりました。

  • Z世代が求める住まい
  • ?隣人とはできるだけ顔を合わせたくない:81.3%
  • ?ライフステージに応じて違った場所に住みたい:64.3%
  • ?浴槽は必要ない:22.5%
  • ?インテリアは多少お金をかけでもこだわりたい:44.5%
  • アットホーム株式會社「Z世代のライフスタイルに関する調査」(2023年1月26日)

重視する住まいの條件は「通勤?通學に便利」が51.5%でトップになり、「間取り?広さ」を上回りました。時間を有効に使いたいというZ世代の特徴が表れているようです。
重視する住まいの設備については「獨立洗面臺」が37.5%でトップになり、「モニタ付インターホン」33.8%、「インターネット無料」33.0%が続きました。

すでに、単身者の多くがこの「Z世代」と呼ばれる世代となっています。極端に考える必要はありませんが、日ごろからこうしたトレンドや世代の価値観の変化などに觸れることによって、ご入居者に選ばれる賃貸住宅につながるのではないかと思われます。

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