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コラム vol.472-4
  • 土地活用稅務コラム

相続稅?贈與稅の基本(4)成功する生前贈與のポイント

公開日:2024/01/31

贈與契約の成立要件は意思表示の合致

贈與契約とは「ただでものをあげること」というのが私たちの常識ですが、本來の贈與とは民法上、「贈與の當事者同士が贈與契約を交わすこと」ことです。つまり、一方が自分の財産を相手方に「ただであげる」(片務)、相手方が「はい、いただきましょう」(諾成)といって初めて成立するわけです。當然、どちらかが知らないといったことはあり得ません。贈與は贈與者と受贈者の意思表示と物の引渡しが成立要件です。

相続が発生してから他の相続人や稅務當局ともめないように、しっかりと贈與を立証しておくことが重要です。
例えば、相続稅の申告に際し、孫が申告を依頼した稅理士から「あなたは小さいころから、お祖父さんに毎年100萬円もらっていましたか?」と聞かれて、「よく覚えていませんし、祖父とそんな話をしたこともありません」と答えれば、當然に祖父と孫の贈與契約は成立していないことが判明します。よって、孫名義の預金は祖父のものとされ、相続財産に含めて申告しなければならないのです。
だからといって、もらった覚えもないのに「はい。毎年もらって、私が管理していました」等と言い、あとで自分が全く知らなかったことが発覚した場合には、仮裝隠蔽をしたとして脫稅とみなされ、思わぬ追徴稅がかかりますのでご注意ください。

贈與の成立時期

贈與契約は口頭でも書面でもできますが、民法の規定によれば、口頭の場合は物の引渡しが済むまでは、いつでも撤回できます。
よって、所有権の移転登記又は登録の目的となる不動産や株式の贈與がいつあったかについては、一般的にその登記や登録のあった日により判定することになります。
登記や登録の必要がない預貯金などの場合、お互いの意思を確認するために、贈與する際には贈與した人ともらった人が署名押印をした贈與契約書を作っておくと良いでしょう。贈與事実の強力な証明になり、さらに、契約書に公証役場で確定日付をもらっておけば、贈與時期についてもより確実になります。

相続稅と贈與額の比較

相続稅と比較すると贈與稅のほうが、負擔は重くなっています。
しかし、適切額を繰返し贈與する、評価を下げて贈與するなどを実施すれば、贈與はシンプルで有効な相続対策といえます。
相続稅は人が亡くなったときに納める稅金ですから、生前に全部の財産を贈與して遺産がなくなってしまうと、相続稅はかかりません。このような不公平な事態をなくすために、相続稅を補完する稅金が贈與稅です。したがって、贈與稅の累進稅率は相続稅の累進稅率よりはるかに高く、また、贈與稅の基礎控除額(年間110萬円)は、相続稅の遺産に係る基礎控除額(3,000萬円+600萬円×法定相続人の數)とは比較にならないほど小さな金額になっています。
家族に財産を生前に贈與して贈與稅を納めるか、又は相続が発生してから相続稅を納めるか、どちらのほうが稅金の負擔が軽くてすむかはケースによって異なります。
例えば、一時に全財産を移転する場合は、実効稅率の低い相続稅の方が有利といえるでしょう。しかし、贈與は贈與者が選んだ時に、選んだ人に自由にできますから、相続稅の実効稅率よりも低い稅率の範囲內で贈與するならば、贈與のほうが稅法上有利といえるでしょう。

第4回稅制調査會 説明資料(資産移転の時期の選択に中立的な稅制の構築等について)(財務?。?/p>

贈與稅には基礎控除額がある

注目したいことは、贈與稅には年間110萬円の基礎控除額があることです。この基礎控除額を利用して生前贈與を行うことは、相続稅対策として効果のある方法でしょう。相続財産を減少させることができる上、年間110萬円以下の贈與額ならば贈與稅はゼロだからです。しかし、あまり少額な贈與では相続財産を減少させる効果はほとんどありませんし、高額すぎる贈與は、相続稅の稅務対策効果は大きくても贈與稅の負擔が非常に重くなるので、結果的にはマイナスになることも考えられます。
令和5年度の稅制改正で、この生前贈與が相続稅に加算される期間が3年から7年に改正されました。また、相続時精算課稅制度についても、新たに年間110萬円の基礎控除が設けられました。

高額資産家は早期に暦年課稅を活用しましょう

財産総額が多額な人に相続が起きると相続稅は累進稅率となっており、法定相続分に応ずる各人の取得価額が2億円超には45%、3億円超には50%、6億円超には55%の稅率がかかります。贈與稅の稅率は18歳以上の者が直系尊屬から贈與を受けた場合で、110萬円の基礎控除後の課稅価格が1,500萬円超で45%、3000萬円超で50%と相続稅の稅率に比べると非常に高くなっています。
しかし、1000萬円贈與した場合の贈與稅は177萬円で実質負擔割合は17.7%です。贈與をすると相続稅の最高稅率がかかる部分が減少しますので、実質負擔割合と最高稅率の差の分だけ稅負擔が軽減できます。もっとも、死亡の前7年分はその効果を失いますので、できるだけ早い時期から実行することが重要です。

110萬円の基礎控除分を活用するなら相続時精算課稅

110萬円の基礎控除部分だけの贈與をする人は相続時精算課稅を選択しておくと、令和6年1月1日以後の贈與から贈與者が死亡した際に110萬円の基礎控除部分は相続稅の計算上加算されませんので稅務上有利です。ただし、一度相続時精算課稅を選択すると暦年課稅に戻ることができないので、選択後多額の贈與をしたいときには相続時精算課稅を選択すると稅務上不利になる可能性もあります。なお、110萬円の基礎控除を利用して相続時精算課稅の適用を受ける場合には最初の年に屆出が必要ですのでご留意ください。

生前贈與を成功させる

生前贈與を成功させるためには、「適切な贈與額」を見つける必要があります。相続開始までの期間が長いと予想される場合には、少額な贈與で基礎控除額や低い稅率を活用しながら、多額の財産を移転することができます。しかし、相続の発生が比較的短期のうちに予想される場合には、一般贈與よりも稅負擔の軽い18歳以上の子どもや孫への特例贈與により、ある程度の贈與稅の負擔をしても、思い切って贈與する方が、稅負擔が少なくなることが考えられます。
つまり、相続開始までの期間を予測し、相続稅と贈與稅の実効稅率をしっかり比較検討した上で効率良く計畫的に贈與を行っていくことが大切です。

贈與稅負擔軽減例

ケース1)1人の人に集中せず、複數の親族に贈與する

長男に1,500萬円贈與する代わりに、長男、長男の妻、長男の子3人の計5人に300萬円ずつ贈與すると、贈與稅の負擔は、366萬円から、5人分の合計稅額95萬円となり、稅負擔が非常に軽くなります。ただし、この場合は各人それぞれに渡していることを確実に立証できるようにしておくことが重要です。

ケース2)一時に贈與せず、複數年にわたり贈與する

令和6年中に1,500萬円を長男に贈與する代わりに、令和6年中に500萬円、令和7年中に500萬円、令和8年中に500萬円と3年間にわたって贈與したとします。贈與稅の負擔は366萬円から、3年分の合計稅額145.5萬円となり、稅負擔が半額以下になります。

どのように贈與するかにより、贈與稅の負擔は軽くなるのです。

納稅資金に注意する

贈與稅は、贈與を受けた人が納めなくてはなりません。納稅資金が不足する場合もあるでしょう。特に、不動産をもらった場合が問題となります。そこで、手元に納稅資金がない人へは、地代の安い土地や収益を生まない建物などではなく、高収益の見込まれる不動産の贈與が良いでしょう。
なお、贈與稅にも相続稅と同様に、延納の制度がありますので、これを利用することもひとつの方法です。ただし、延納期間は最長5年間に限られ、また非常に金利が低くなったとはいえ、利子稅もかかることを忘れないようにしてください。

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