CASE07相続した不動産の名義が、先々代のままだった。どうすれば良いでしょうか。
公開日:2024/02/29
先々代(A)は大地主で、かなりの土地を所有していましたが、子どもが8人いたため、約30年前の當時は相続稅がかかりませんでした。また、「不動産の名義変更には登録免許稅などの費用がかかるので、名義変更はしないほうがいい」と周囲から聞かされていたため、名義変更することなく、そのまま放置していました。
その後、30年が経ち、殘った子ども6人のうちの長男(B)が死亡。長男の相続人である子(C)が相続を開始しようとしたのですが、先々代の名義変更からしなければならないことがわかり、その遺産分割協議書をつくる必要があると司法書士に告げられ、驚いてしまいました。
先代は8人兄弟であり、すでに死亡している兄弟姉妹もいることから、印鑑をもらう人が、代襲相続人も含めて20人になってしまっていたのです。
なかには音信不通の人もいたため、弁護士に依頼することとなり、登録免許稅ほかの費用に加えて、弁護士費用までかかることになってしまいました。
以前は、相続が発生して土地の持ち主が変わったとしても、名義変更の登記は義務ではなかったため、このようなケースが多々ありました。特に相続稅がかからないような場合には、敢えて登記をしない人が多かったようです。
代が変わることで、代襲相続人が増えて手続きがどんどん煩雑になる
登記をしないまま放置しておくと、思わぬ事態に陥ります。
このケースでは、長男(B)の相続人である子ども(C)が、亡くなった父(先々代の長男B)の相続手続きをしようと思ったところ、先々代の名義のままになっていたために、その子どもたちへの名義変更から始めることになったわけです。
ただし、先々代の8人の子どものなかにはすでに亡くなっている人もいました。すると、その亡くなった人の子どもが代襲相続人になりますので、お子さまが多ければ遺産分割協議書に押印が必要な人數も増えていきます。
この方の場合、結果として合計20人の印鑑をもらわなければいけない狀況になっていたのです。
それだけでも大変なのですが、もしその20人のうちの誰かが海外にいるような場合や音信不通になっている場合など、申告期限である10カ月の間に相続がまとまらない可能性がさらに高まるでしょう。
土地の名義が変更されていない場合のリスク
先祖からの土地の名義が変更されていない場合のリスクを整理してみます。
- ?2024年4月より相続登記が義務化されるため過料が科される可能性がある
これまでは、相続登記は義務ではなく、相続登記しなくても罰則はありませんでしたが、2024年4月から相続登記が義務化されます。そうなると、相続発生から3年以內に相続登記をしない場合には10萬円以下の過料が科される可能性があります。また、相続登記の義務化に関しては、2024年4月以降に発生する相続だけでなく、それ以前に発生した相続に関しても適用されます。 - ?相続登記の手続きに手間がかかり、専門家へ依頼することで費用がかかる
相続登記を行う場合は、元の所有者から次の所有者に名義を変更する必要があります。先祖何代も登記がされていない場合は、過去の相続にさかのぼり、それぞれのタイミングで相続登記を行う必要があります。仮にその人が亡くなっている場合は、その人の相続人の登記が必要になり、多くの手間や時間がかかってしまうでしょう。また、ケースにあるように、20人もの登記を必要とすると、専門家への依頼も必要となり、費用もかかってしまいます。 - ?相続した土地の活用?売卻ができない
相続登記ができていないということは、遺産分割協議が完了していないということであり、その土地は、相続人全員で共有していることになります。そして、何代にもわたって相続登記がなされていなければ、それだけ大勢の相続人が存在していることになります。
その土地を活用したり、売卻したりしようとする場合、共有名義人の合意(活用は過半數、売卻は全員)が必要となるため、活用も売卻も行いづらい狀況に陥ってしまいます。
つまり、このような名義変更されておらず共有になっている狀態であれば、活用も売卻もできず管理コストや固定資産稅だけがかかってしまう狀態になりやすいということになります。
さらに、これまでの遺産分割協議の內容が分からなかったり、土地を相続した人の居住地が不明というケースが起きたりすると、相続や分割は非常に困難になってしまいます。
早い段階で登記の狀態を確認する
先祖代々にわたって相続登記されていない土地は、過去の相続をさかのぼり所有者を判明させ、それぞれの相続登記をしなければなりません。
過去の相続で遺産分割協議が完了していない場合は、土地は実質的に共有名義のままになっています。代を重ねるごとに、相続人が増え、手続きが膨大で複雑になっていきます。
相続が発生してからでは、間に合わないケースも考えられますので、登記に不安がある場合は、早い段階で、登記の狀況を確認して、専門家に相談することが大切です。