キャップレートとは何か?
最新キャップレートで見る不動産市場の見通し
公開日:2023/06/30
POINT!
?キャップレート(期待利回り)とは不動産投資における指標(biāo)の一つで、不動産投資を行う方が「どれくらいの利回りを期待するか」を示すもの
?最新の調(diào)査によるキャップレート動向は、オフィスビル、賃貸住宅のワンルーム、商業(yè)施設(shè)、物流施設(shè)は橫ばい、賃貸住宅のファミリータイプはやや低下、宿泊特化型ホテルは低下となった
?キャップレートよりも実際の取引利回りが低くなっていることから、期待する利回りに達(dá)していなくても購入している現(xiàn)狀がうかがえる
新設(shè)住宅著工戸數(shù)を牽引してきた「貸家」建築數(shù)が、26カ月ぶりに、2023年4月分で前年同月比マイナスとなりました。新設(shè)住宅著工戸數(shù)全體を見ると、「持ち家」では、住宅建築工事費の上昇に伴い、2021年12月から2023年4月分まで17カ月連続で前年同月比マイナスとなっていましたが、2023年4月は「貸家」でもマイナスとなりました。
しかし、最新のキャップレートを見れば、賃貸住宅の投資熱は高止まりが続いていることが分かります。ここでは、キャップレートについての解説と最新キャップレートを分析してみます。
キャップレートとは
キャップレート(CapitalizationRate)とは、「期待利回り」を指します。ここでは「収益に基づいた価値(=資本化)」というイメージを持っていただくとよいでしょう。キャップレートは、不動産投資(賃貸住宅建築も含む)を行う方が、「どれくらいの利回りを期待するか」を示したものであり、不動産投資における指標(biāo)の一つとして活用されています。
キャップレートの算出方法にはいろいろありますが、「期待する」利回りですから、「不動産投資家(あるいは企業(yè))がどれくらいの利回りを期待しているか」を調(diào)査集計し、算出する方法が一般的です。また、算出されたキャップレートは、利回りの妥當(dāng)性の基準(zhǔn)となります。例えば、物件の購入を検討している時に、「物件の利回りが妥當(dāng)か」を判斷する基準(zhǔn)となるわけです。
キャップレートは2022年後半以降、賃貸住宅分野で史上最低値を更新しています。キャップレートを「不動産投資熱」と捉えれば、「史上最高水準(zhǔn)に賃貸住宅投資熱が高い」とも言えます。
キャップレートの計算
キャップレートは、「年間NOI(Net Operating Income)÷現(xiàn)在の物件価値(価格)」で計算された値となります。収益還元法での物件価格の算定の際には、「年間収益(NOI)÷利回り=不動産価格」という計算で求められますので、「投資をしようとしている価格が妥當(dāng)か」の判斷基準(zhǔn)にもなりえます。
キャップレートと取引利回り
キャップレートは賃貸用の不動産に投資する(購入する)際の、「期待する」利回りの値ですから、実際に取引される売買価格での利回り(取引利回り)と異なる場合が多く見られます。
とくに、不動産投資熱が旺盛な時にはこの傾向が顕著になり、キャップレート水準(zhǔn)で購入できる物件は少なくなります。
NOIキャップレートとNCFキャップレート
利回りを示す時、表面利回りとネット利回りの2種類があります。このうちネット利回りをより細(xì)かく分類すると、NOI利回りとNCF利回りがあり、同様に、キャップレートもNOIをベースしたNOIキャップレートとNCFをベースにしたNCFキャップレートの2種類があります。
NOIとはNet Operating Incomeのことで、賃料収入の年間合計(=満室想定賃料-空室損失)から支出として不動産運(yùn)営費用(管理費?修繕費?固定資産稅?都市計畫稅?損害保険料など)を引いたものです。ここでは、借り入れ金利は含みません。また、実際にお金の動かない減価償卻費も含みません。
一方、NCFはNet Cash Flowのことで、お金がいくら殘っているかにフォーカスした額です。
NOIと計算內(nèi)容は同じですが、収入には、敷金やそれを運(yùn)用した際の運(yùn)用益なども計上します。また、支出においては資本的支出なども考慮します。資本的支出とは、不動産の価値を高めるため、使用期間を延長するための工事や設(shè)備投資費用のことを指します。対して修繕費は、維持管理?メンテンナンスといった費用を指し、通常経費となります。修繕費は、例えば原狀回復(fù)費のオーナー負(fù)擔(dān)分などで度々発生する経費であり、資本的支出は、賃貸住宅などでは大規(guī)模修繕など15~20年に1回程度の臨時に支払う費用と考えればいいでしょう。賃貸住宅経営において、NCFとNOIのどちらで判斷するかはそれぞれですが、一般的な土地活用で建築するサイズの賃貸住宅ではNOIをベースにするといいでしょう。このあと示すキャップレートの數(shù)字はNOIでの計算となっています。
キャップレートの調(diào)査と公表
キャップレートはいくつかの機(jī)関から公表されています。多くの投資家が活用している一つが、1999年4月から一般財団法人日本不動産研究所が調(diào)査?公表している「不動産投資家調(diào)査」のレポートです。この調(diào)査は、アセットマネジメント會社?デベロッパー?商業(yè)銀行?投資銀行?生命保険會社?不動産賃貸業(yè)などへのアンケート調(diào)査です。
ここからは、この調(diào)査の最新版である、第48回「不動産投資家調(diào)査」(公表:2023年5月30日、調(diào)査時點:2023年4月)のデータを見てみましょう。
最新の各アセットのキャップレート動向
最新の同調(diào)査によるキャップレートでは、不動産種別、地域ごとに動向の違いが見られました。
全國的に見れば、オフィスビル(Aクラスビル)は橫ばい、賃貸住宅ではワンルームは橫ばいでファミリータイプはやや低下、商業(yè)施設(shè)は橫ばい、物流施設(shè)は橫ばい、宿泊特化型ホテルは低下といった狀況となりました。
このうち、オフィスビル?賃貸住宅(ワンルーム?ファミリーとも)?物流施設(shè)については、2000年以降(1999年の調(diào)査開始以來)最低値の狀況になっています。「もうこれ以上、キャップレート
は下がらないだろう」という業(yè)界の予測は、コロナ前にも昨年にもありましたが、結(jié)果は「まだ下がりそうだ」と言えそうな狀況です。
賃貸住宅では、東京(城南エリア)が、本調(diào)査開始以來最も低い値を更新(前回から連続して最低を更新)し、多くの地方都市で、とくにファミリータイプ物件のキャップレートは前回(2022年10月調(diào)査)より低下しました。「不動産投資家の投資意欲が引き続き旺盛である」こと、また「投資物件価格が引き続き上昇している」ことが分かります。
オフィスビルのキャップレートは、多くのエリアで橫ばいでした。キャップレートが低下した地點は、東京赤坂、京都、広島の3エリアのみとなり、國內(nèi)で最もキャップレートの低い東京丸の內(nèi)?大手町エリアは久しぶりに橫ばいとなりました。それでも同地點のAクラスビルのキャップレートは3.2%で、2000年以降最低値(前回と同値)となっています。
宿泊特化ホテル(≒ビジネスホテル)では、國內(nèi)の移動が再び活発化、インバウンド観光需要の回復(fù)を受けて、札幌?名古屋?大阪?那覇で前回より低下しました。最も低い東京(JR/地下鉄の主要駅周辺徒歩5分以內(nèi)の立地を想定、築5年未満、100室程度)で4.5%となっています。
商業(yè)店舗のキャップレートは、東京銀座で前回より0.1ポイント低下し、3.4%となりました。それ以外の全國主要都市における主要エリアでは、すべて橫ばいとなっています。
東京近郊の郊外ショッピングセンター(東京都心まで1時間程度、幹線道路沿いを想定)では5.2%でした。他のエリアにおける、主要エリアと郊外エリアの違いは、0.6ポイント~1.0ポイント程度となっています。東京都心部のズバ抜け感がうかがえます。
賃貸住宅ワンルームタイプのキャップレート
ここからは、賃貸住宅にフォーカスして解説します。
ワンルームタイプ(25~30m2、築5年未満、駅徒歩10分以內(nèi)を想定)の賃貸住宅(一棟物件)のキャップレートは、調(diào)査を行った全國主要都市(10都市)のうち、東京城南?名古屋?大阪の3エリアで0.1ポイント低下しました。それ以外の7都市では橫ばいとなっています。
図1:賃貸住宅の期待利回り(CAPレート)の推移
一般財団法人日本不動産研究所 第48回「不動産投資家調(diào)査」(2023年5月30日)より作成
2012年以降、多くの都市で、キャップレートはコロナ期など時折橫ばいの時もありますが、ほぼ右肩下がりで推移しています。ほとんどの都市で過去最低を更新、あるいは過去最低水準(zhǔn)にあります。こうしたことからも、賃貸住宅への投資は一時的なブームではないといえるでしょう。加えて、東京都心だけでなく、賃貸住宅投資熱(賃貸住宅建築熱)が全國主要都市に広がっていることが分かります。
東京城南地域(目黒區(qū)?世田谷區(qū)、渋谷駅?恵比壽へ電車で15分圏內(nèi)想定)のキャップレートは3.8%となっていますが、同地域の想定物件の実際の取引における利回りは3.5%(前回は3.6%)となっており、過熱している狀況がよく分かります。東京城東エリア(墨田區(qū)?江東區(qū)、東京駅?大手町駅へ電車で15分圏內(nèi)想定)のキャップレートは4.0%で、史上最低値が続いています。また、実際の取引における利回りは3.7%で、こちらも前回調(diào)査から低くなりました。このように2023年に入ってもきわめて低く推移しており、東京都心はもとより全國主要都市で、引き続き賃貸住宅投資熱の高さがうかがえます。
ファミリータイプの狀況
ファミリータイプ(50~80m2、築5年未満、駅徒歩10分以內(nèi)を想定)でも同様に、全國主要都市のうち6都市(東京城南?橫浜?名古屋?大阪?広島?福岡)で0.1~0.2ポイント低下しました。
図2:賃貸住宅の期待利回り(CAPレート)の推移
一般財団法人日本不動産研究所 第48回「不動産投資家調(diào)査」(2023年5月30日)より作成
とくに東京?城南地域では、前回4.0%から3.9%へ下落。ワンルームと同様に調(diào)査開始以來最低となり、想定物件の実際の取引における利回りは3.6%となっています。東京?城東地域では4.1%で、こちらも下落傾向にあります。実際の取引利回りは3.8%となっています。
キャップレートはこれまで、比較的賃貸住宅需要が旺盛なワンルームタイプのほうが、ファミリータイプに比べて低い傾向にありました。しかし、このところの動向を見れば、ファミリータイプのキャップレートも低下基調(diào)で、都心を除く多くの主要都市で、ワンルームもファミリータイプもほぼ同じ値となっています。また、前述の通り、期待する利回り(=キャップレート)よりも、実際の取引利回りが低くなっており、つまり期待する利回りに達(dá)していなくても購入している現(xiàn)狀にあることがうかがえます。
まだまだ投資意欲は高い
同同調(diào)査では、不動産への新規(guī)投資意欲について、専門家へのアンケートも実施しています。
「今後1年間の不動産投資に対する考え方」の項目の回答では、「新規(guī)投資を積極的に行う」の回答が96%もあり、前回よりも1ポイント上昇し、逆に「新規(guī)投資を控える」の回答は3%にとどまり、前回調(diào)査から2ポイント低下しました。當(dāng)面は金融緩和政策が続く見通しとなり、不動産市況はまだまだ活況が続きそうです。