2022年~2023年前半の新設住宅著工戸數を分析する
公開日:2023/06/30
POINT!
?2023年4月の住宅著工戸數の「総計」は、東京都11,094戸、全國67,250戸で、どちらも3カ月連続でマイナスとなった
?「持ち家」は、東京および全國で苦戦「貸家」は、東京?全國でプラスが多く見られ、賃貸住宅投資(建築)の勢いはとどまっていないことがうかがえる
?「分譲住宅」は、都市部でのマンション適地不足により、需要はあるものの供給不足が続いている
新設住宅著工戸數は、國土交通省が集計?公表する建築統計の中の住宅カテゴリーの統計調査です。この建築統計調査は、我が國における重要な統計「基幹統計」の一つとされており、政策決定などにも使われます。新設住宅著工戸數は住宅市場?住宅産業全體における先行指標とも言われ、業界內外から注目を集めます。
全國のデータと東京都のデータを併せて見ることが必要
住宅建築は、建築主が知事に提出する確認申請からスタートする流れとなります。そのため、著工數は、まず都道府県がその數を把握し、それを國土交通省が集計し全國合計値を公表。各都道府県でも、その地域の數字が公表されています。これまで「土地活用ラボ」で紹介した新設住宅著工戸數の動向分析は、全國の數字を用いたものでした。全國の著工數動向は、各地域でのプラスマイナスを打ち消し平準化する傾向にあり、全體感がつかめます。
一方、住宅著工戸數において一定の割合を占める東京都の數字は、都市部の動向を色濃く表します。また、地価などで顕著なように、不動産市況は東京都の動向に同調するように全國の主要都市へ波及していく傾向が見られます。こうしたことから、全國と東京都のデータを併せて見ることで大まかな動向がつかめます。
東京都の著工戸數の動向は、全國の先行指標にもなりえます。例えば、消費者物価指數(CPI)は「全國」と「東京都區部」の2つのデータが公表されます。先行して東京都が「東京都區部」の數字を公表し、その數週間後に総務省が全國のデータを公表しています。東京都區部のCPIデータは、「先行指標として」と「都市部での比較的高年収層の動向として」の2つの注目點があるとされています。
※ただし、東京都區部消費者物価指數は、全國消費者物価指數に同月分が數週間先駆けて公表されます。まさに「先行指標」という感じですが、著工戸數では動向が月の単位で遅れて見られます。
こうしたことから、今回は東京都にフォーカスして分析してみたいと思います。
東京都の住宅著工戸數の動向
東京都における2023年4月の住宅著工戸數(総計)は11,094戸、前年同月比で-5.7%となり、3カ月連続でマイナスとなりました。全國では67,250戸、前年同月比-11.9%、こちらも3カ月連続でのマイナスです(東京都の割合は16.5%)。
利用関係別に見ると、自己所有の土地に住宅を建築する「持ち家」は、前年同月比-23.2%で999戸となり、15カ月連続の減少となりました。
全國では18,597戸、前年同月比-11.6%で、こちらは17カ月連続のマイナスです(東京都の割合は5.4%)。東京都は持ち家建築が相対的に少ないため、前年同月比のブレ幅が大きくなりますが、それにしても999戸という數字はかなり少ないと言えます。
主に賃貸用住宅である「貸家」は、東京都では前年同月比+6.0%の6,282戸で、2カ月連続の増加となりました。全國では28,865戸、前年同月比-2.8%で、こちらは26カ月ぶりのマイナスとなりました(東京都の割合は21.7%)。全國では2年以上もの間、前年同月比プラスでしたが、4月はマイナスとなりました。その一方で、全國の中でも割合の高い東京都ではプラスとなっており、賃貸住宅投資(建築)の勢いはとどまっていないことがうかがえます。
東京都の「分譲住宅(分譲マンション+分譲戸建)」は、前年同月比-15.5%の3,809戸で、3カ月連続の減少となりました。そのうち、分譲マンションは前年同月比-26.6%の2,196戸、分譲戸建ては前年同月比+2.6%の1,553戸でした。
全國での分譲住宅(合計)は19,701戸、前年同月比-21.8%となっています(東京都の割合は19.3%)。分譲マンションでは、都市部でのマンション適地不足により、需要はあるものの供給不足が続いているようです。
全國の新設住宅著工戸數の動向と2023年年間の見通し
次に、2022年1月から2023年4月までの全國の新設住宅著工戸數の動向を見ておきましょう。
図:2022~2023年4月 新設住宅著工戸數
國土交通省「新設住宅著工件數」より作成
前ページの図を見れば、「持ち家」が苦戦していることが明白です。前年同月比マイナスは2021年12月以降17カ月連続。2022年6月以降は、(2023年1、2月を除いて)前年同月比2ケタのマイナスとなっています。一方、賃貸用住宅建築の「貸家」は、2023年4月に26カ月ぶりに前年同月比マイナスとなりましたが、不動産投資熱の高さがしばらく続く見通しですので、貸家著工戸數の前年同月比マイナスは一時的なものと思われます。貸家著工戸數は、今の勢いが続けば2022年の34.5萬戸を超え、35萬戸臺の後半36萬戸近くまで伸びる可能性もあります(ただし、日銀の金融緩和政策の変更があれば別です)。
2023年の年間の新設住宅著工戸數(総數)は、低迷の「持ち家」、適地不足の「分譲マンション」が大きく影響すると思われます。