世帯類型はどれくらい変化したのか?
公開日:2022/03/31
世帯數の変化は、社會に大きな変化をもたらします。かれこれ20年くらい前「おひとりさま」という言葉が広まったころ、それまでファミリーなど複數で行くことが一般的だった焼肉店が「一人焼肉店」という業態をリリースし話題となりました。今では、「おひとりさま向け」の業態は珍しくなくなりました。
世帯のあり方の変化が、最も大きく影響を及ぼしたのは「住まいのあり方」かもしれません。一般的には、1つの世帯で1つの住宅に住みます。そのため世帯類型が変わると、必要となる住居が変わります。今回は、四半世紀1995年~2020年の世帯類型の変化を、東京?大阪?愛知?福岡の四大都市圏の事例を取り上げて分析してみました。
ここでは、1995年から2020年までの間に6回行われた國勢調査の結果をもとに解説します。(図表、その他全てのデータは、総務省統計局「國勢調査」に基づいています)
単獨世帯とひとり親と子ども世帯の急増
この25年間の日本における世帯類型では、単獨世帯の數が大きく増加しました。4大都市でみれば、1995年を100とすれば2020年の単獨世帯の數はおおむね180~200前後となっています。さらに、厚生労働省の外郭シンクタンクである國立社會保障?人口問題研究所は、単獨世帯の數は大都市部に限らず全國的に増えており、2040年には、おおむね10世帯に4世帯は単獨世帯になると予測しています。
こうした數字をみれば、「おひとりさま」向けの飲食店や、1人暮らし用の住居(例えば、ワンルームや1LDKタイプ)が増えたことがうなずけます。本サイトでも何度かお伝えしましたが、大都市部においては単獨世帯の約7割が賃貸住宅に暮らしています。また、全國で見ても約6割を超える単獨世帯の方々が賃貸住宅に暮らしています。賃貸住宅ニーズが都市部を中心に全國的に広がりを見せている理由の一つといえます。
図1:親族のみ世帯と単獨世帯の借家と持ち家に住む割合
総務省統計局「令和2年國勢調査」より作成
また、ひとり親と子どもから成る世帯も大きく増加しています。四大都市部では愛知が1995年対2020年比で約1.8倍、東京?大阪?福岡では約1.5倍になっています。ひとり親と子ども世帯の多くも賃貸住宅に暮らしています。
夫婦のみ世帯の増加
また、夫婦のみの世帯の増加も目立ちます。
東京都では1995年対2020年比で約1.5倍、愛知県では1.65倍、大阪府では1.36倍、福岡県では約1.45倍となっています。子どものいない夫婦2人世帯、もしくは子どもが巣立って夫婦2人になった世帯ということでしょう。このような世帯では、ライフスタイルにより求める住宅のあり方はそれぞれ異なるようですが、部屋數の多い住宅ではなく、広いリビングがある住宅を求める傾向にあるようです。
橫ばいもしくは減少傾向の「夫婦と子どもから成る世帯」
一方、かつては世帯の象徴とも言えた、「夫婦と子どもから成る世帯」ですが、こちらは、橫ばいからやや減少の傾向です。
1995年を100とすると東京都は103.7、愛知県は103.8と、この25年ではほぼ橫ばいですが、大阪府は82.6と2割近い減少、福岡県も93.3と減少しています。背景には、婚姻數の減少、少子化傾向など、さまざまな要因があると考えられますが、いわゆる「ファミリー層」と呼ばれる世帯は大都市部においては、ほとんど増えていません。また、國立社會保障?人口問題研究所の予測によれば、この先も大きく増えることはなく、むしろ減少基調にあるとされています。
ハウスメーカーやマンションデベロッパーが販売する分譲戸建や分譲マンションの間取りをみていると、1990年代まではみられた、部屋數が多い住宅、例えば4LDKや5LDKというような住宅の販売個數は激減しています。
4大都市それぞれの狀況
最後に、四大都市それぞれの狀況を示したグラフを掲載しておきますので、ここまで解説したことと合わせてご覧いただきたいと思います。グラフを見ていただくと、世帯のあり方の変化が分かると思います。
図2:1995年=100とした時の世帯類型別推移(東京都)
総務省統計局「國勢調査」より作成
図3:1995年=100とした時の世帯類型別推移(愛知県)
総務省統計局「國勢調査」より作成
図4:1995年=100とした時の世帯類型別推移(大阪府)
総務省統計局「國勢調査」より作成
図5:1995年=100とした時の世帯類型別推移(福岡県)
総務省統計局「國勢調査」より作成