2020年貸家著工戸數のゆくえ。東京は前年越えの見通し
公開日:2020/11/30
POINT!
?2020年の貸家著工數は、昨年の1~9月合計と今年の合計を比べると、約10%のマイナス
?都道府県別でみると、対前年同月比の結果は大きく異なる
國土交通省からの數値をもとに、貸家(賃貸用住宅)著工數の年間數予測をお屆けします。(執筆時點:11月13日。著工數は9月分までがこの時點で公表されています。以下の數字は全て、國土交通省 住宅著工統計を元にしています)
2019年の年間貸家著工數は約34萬戸でした。2018年の約39萬戸から15%近く減少という結果でした。貸家著工數は、2012年から2017年までずっと右肩上がりで増えていましたが、2018年に微減、消費稅が10%になったことも影響して2019年は大きく落ち込みました。2020年も苦戦が続くと予想されていましたが、そこに春先に新型コロナウイルスが蔓延し、さらに大きく落ち込みそうだと予想されていました。
2020年1~9月の貸家著工數
2020年の貸家著工數を月別に見ると、1月から9月まで昨年を上回っている月はありません。多い月で昨年同月比-18.9%、少ない月でも-5.4%となっています。昨年の1~9月合計と今年の合計を比べると、約10%のマイナスとなっています。ただ、都道府県別でみると、結果は大きく異なります。
図1:貸家著工數(2020年)
國土交通省「住宅著工統計」をもとに作成
図1の表のグレー部分は、昨年同月比でプラスになった月です。これをみると、東京では9カ月中5カ月がプラスになっていることがわかります。2020年の5月は、緊急事態宣言の真っただ中でしたが、昨年に比べて大幅なプラスになっています。これは、消費稅増稅に伴う経過処置の関係で、前年同月比-30%と大幅に落ち込んだ2019年5月と比較したためです。
しかし東京では、それ以外の月でも約半分がプラスになっています。この數字だけをみると、貸家著工數への新型コロナウイルスの影響はそれほど大きくなく、かつ回復も早かったということがわかります。しかし、この傾向は東京だけのようで、大阪では、緊急事態宣言中に溜まっていたものが一気に出た解除直後の6月だけがプラスで、それ以外はすべて前年同月比割れしています。
図2:2019~2020年 貸家著工戸數 前年同月比の推移
國土交通省「住宅著工統計」をもとに作成
図2は、2019年~2020年の貸家著工數の前年同月比の月別の推移です。東京が回復基調にあり、またコロナ禍でもかなり善戦していることがわかります。また、愛知は、かなり苦戦が続いているという狀況です。
2020年年間の貸家著工數の予測
1~9月の數字を基に、年間の貸家著工數合計を予測してみます。
1~9月合計では、前年のマイナス約10%となっています。このままの割合ですと、上図1にあるように30萬戸超となります。この先どこまで回復するか検討してみると、個人投資は少しずつながらも回復の兆しがハッキリしていますが、企業による賃貸住宅投資があまり伸びていないのが気になります。
しかし、ここにきて、新型コロナウイルスのワクチンの開発が進んでいることや、株価に上昇傾向がうかがえることから、企業の不動産投資を呼び戻す可能性があります。しかし、各メーカーは、冬が近づくにつれて、コロナウイルス感染者が増加し、何らかの経済活動に影響を與える対策が行われることに対しては、気になるところでしょう。
こうしたことからなかなか判斷がしにくいのですが、コロナウイルスによる経済の停滯が再び起こらない前提で考えると、マイナス幅は10%以下になり、貸家著工數は31萬臺になると予想します。少しでも早く著工數が回復することを期待します。