持ち家志向低下に歯止めがかからない!次も賃貸住宅暮らしを希望する方の増加が続く
公開日:2020/08/31
POINT!
?借家に住む方の満足度は約7割で、持ち家の満足度を上回る
?全體的に持ち家志向の割合が減り、ずっと賃貸住宅に住むライフスタイルが定著してきている
賃貸住宅に暮らす人の4割以上が、「次も賃貸住宅に暮らしたい」と考えているようです。かつては、「賃貸住宅は仮の住まい」そして、「そのうちに持ち家を」というライフスタイルが主流でしたが、こうした考え方が変わってきているのかもしれません。
住生活総合調査とは
國土交通省が主體となり、5年に1度行われる「住生活総合調査」の確定版が、2020年8月上旬に公開されました。この調査は、住宅や世帯の実態を把握する総務省の「住宅?土地統計調査」と同時に行われ、最新の平成30年調査(調査時點:平成30年12月1日)で13回目になります。(注:平成15年までは「住宅需要実態調査」として実施。) 主な調査項目は、「住宅及び居住環境に対する評価」つまり、現在の住環境に関する満足度で、例えば「今後の住まい方の意向」、「家 族構成別に見た、住宅及び居住環境の評価と住み替え?改善意向」などになります。その中の「借家」つまり「賃貸住宅」に関するデータから興味深いものを取り上げ、分析してみます。
賃貸住宅における満足度
本調査によると、借家に住む方で現在の住宅に「満足?かなり満足」は67%でした。持ち家での満足度が81%よりは低いですが、それでも7割近くが、「満足?かなり満足」という結果は、「かなり良い」といっていいでしょう。 この調査にける借家は、一般的な賃貸住宅=民営借家、給與借家=社宅、そして公的な借家(UR?都道府県?市町村)の3つに分かれます。 このうち、オーナー様が土地活用で建てる賃貸住宅が該當する「民営借家」にフォーカスして、過去2回分のデータを比較検討してみます。
図1:住宅?住環境に関する総合評価(民営借家)
國土交通省「H20年、H25年、H30年住生活総合調査」より作成
最新の調査では、民営借家に住む方の74.4%が「満足+まあ満足」と回答しています。 民営借家の満足度は、概ね持ち家の満足度(戸建?共同住宅=マンション)と同じかやや上回る結果となっています。 これまで民営借家の満足度は右肩上がりで、図1でも「満足+まあ満足」の合計値は、平成20年調査より平成25年調査のほうが大きくなっています。しかし、今回の調査では前回から0.7%ダウンしました。1%を以下ですから誤差ともいえますが、これまで一貫して満足度は上昇してきましたので、次回の調査でどうなるのか注目です。
次も賃貸住宅に住みたい
「今後の住み替え希望」についてです。借家に住んでいる世帯で最も多い希望は、「次も借家」の43%で、これは「次は持ち家」の34.4%を上回ります。冒頭に書いたように、「ずっと賃貸がいい」という積極的賃貸住宅派が増えています。逆に、持ち家の世帯では、「次も持ち家」という世帯が減っています。
図2:現在の所有関係別の住み替え後の居住形態
國土交通省「H15年、H20年、H25年、H30年住生活総合調査」より作成
※平成15年~平成25年は、単數回答だったが、平成30年では複數回答の選択肢となっているため、「持ち家」又は「借家(施設を含む)」「持ち家、借家にこだわらない」を2つ以上選んだ世帯は「持ち家、借家にこだわらない」として集計
図2を見ると、現在借家に住んでいる世帯(下4本のグラフ)のうち、「次も借家」という方が増 加傾向であることが分かります(H15年からH20年は減)。そして、今回調査では、「次も賃貸を希望」世帯が「次は持ち家希望」を、9ポイント近い差をつけて初めて抜きました。「次も賃貸」派が増えている理由は、「大きなローンを抱えたくない」や「雇用?収入が不安」といった現実的な要因に加えて、1つ目の図表で見たように、「現在の賃貸住宅で十分満足」という聲が増えてき ていることが挙げられると思います。逆に、現在持ち家で、「次も持ち家」と考える方は、この15年で20ポイント近く減少しています。 このように、持ち家志向の低下には歯止めがかかりそうにありません。「ずっと賃貸住宅」に住むというライフスタイルの傾向は、今後も続くものと思われます。