2020年路線価は全國的な修正になるか?
公開日:2020/07/30
POINT!
?2020年7月1日に発表された路線価は、新型コロナウイルス感染癥の影響を受ける前の數字
?大きな災害が発生したときと同じように、今年は路線価の評価調整が行われるかもしれない
2020年分の路線価が7月1日に國稅庁から発表されました。路線価は相続稅や贈與稅の算定基準となるものです。そのため、いくつか発表される地価の中で、土地活用を考えている方には「重要な指標の1つ」といえます。厳密にいえば、路線価は「相続稅路線価」と「固定資産稅路線価」分かれています。また、公示地価のおおむね7~8割程度とされています。
路線価等は、國有地以外の土地で、宅地、田、畑、山林等を対象として定められており、路線価等の評価における宅地とは、公示地価と異なり、住宅地、商業地、工業地等の用途にかかわらず、建物の敷地となる土地を指します。(公示地価は、住宅地?商業地?工業地に分かれています)
路線価の価格時點は、3月20日ごろに発表される公示地価と同じ1月1日です。そのため、 2020年2月以降、日本のみならず各國の経済に大きな打撃を與えた新型コロナウイルス感染癥の影響を受ける前の數字ということになります。 國稅庁から発表される路線価は、いうまでもなく稅を算定するためにその土地の評価額を明確にする目的で存在しているわけです。そのため、価格時點(1月1日)から、公表時(毎年7月1日)までの間に大きな災害等が起こると、評価額の修正が行われます。
近年では、2016年4月に起こった熊本地震の際に修正になりましたが、今年は2月から新型コロナウイルス感染癥が全國規模で広がりました。この影響が、どの程度不動産価格に出ているか、まだ全容は分かりません。もし大きな影響があると算定されれば、熊本地震の時のような修正があるかもしれません。
まずは、2020年7月1日発表の路線価を見てみましょう。
2020年路線価の狀況
最も高額だったのは、今年も東京都中央區銀座5丁目銀座中央通りで、4592萬円(1m2あたり)でした。ただし、昨年からの上昇率は0.7%に留まりました。一昨年から昨年の上昇率は+2.9%でしたので、伸び率が鈍化していることが分かります。
図:令和2年分都道府県庁所在都市の最高路線価(上昇率順)
※宇都宮市及び橫浜市は最高路線価の所在地を変更
令和2年國稅庁発表資料より作成
図は各都道府県別の最高価格地點の路線価を上昇率順に並べたものです。最も上昇したのは、沖縄県那覇市の國際通りの+40.8%。昨年の上昇率が39.2%でしたので、この2年間だけで路線価は2倍になりました。
2位は、大阪梅田付近の御堂筋で+35%、昨年の上昇率は27.4%で、こちらも大幅に上昇しています。以下、橫浜、奈良、京都、神戸、札幌と続き、これらは新型コロナウイルス感染癥の影響が出るまではインバウンド観光客がとても多く來ていた場所です。そのため、インバウンド観光客の大幅減少がどれほど不動産価格に影響があり、そして路線価に影響があるのかが気になります。
2016年熊本地震による評価調整
路線価の評価調査が行われた2016年の熊本地震のときの狀況を見てみましょう。
熊本地震は、2016年4月14日と16日に震度7の地震が起こりました。その影響で熊本県と大分県(一部)に大きな被害が出ました。
そのため、こうした対象地域では、2015年6月14日から2016年4月13日までの間に相続等により取得した土地等と、2016年1月1日から2016年4月13日までの間に贈與により取得した土地等に対して、地価下落を反映した「調整率」をかけることになりました。
このときの國稅庁のサイトを見ると、「平成28年熊本地震の発生直後の価額」は、この「調整率」を2016年分の路線価等(路線価及び評価倍率をいいます。)に乗じて計算することができます、という記載があります。
調整率の表も同サイトに細かく出ており、宅地はおおむね95%の評価(つまり-5%)~ 100%評価となっていますが、被害が大きかったとされている益城町あたりでは75%評価のところもあります。
このように、被害の狀況により細かく再評価されていることがうかがえます。
2020年路線価の修正はあるのか?
國稅庁によると、9月ごろに國土交通省から公表される基準地価(価格時點は7月1日)を考慮して、基準地価が広範囲で大幅に下落した場合、地域ごとに一定の係數を路線価に乗じて減額する案を検討しているようです。
東日本大震災や熊本地震のときのように、これまでも災害が原因による調整は行われてきました。しかし、新型コロナウイルスのような感染癥による路線価の見直しは、これまで見られなかったと思いますので、9月以降の國稅庁からの発表には注視する必要がありそうです。