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コラム vol.321
  • 不動産市況を読み解く

5年連続の地価上昇!2020年公示地価を読み解く

公開日:2020/03/31

POINT!

?三大都市圏(東京?大阪?名古屋)の上昇は全用途2.1%(前年2.0%)と、上昇幅に歯止めがかかる

?地方中核4市(札幌?仙臺?広島?福岡)では、全用途平均が+7.4%(前年5.9%)となった

2020年の公示地価(価格時點:1月1日)が3月18日に発表され(詳細データは19日に発表)、全用途(住宅?商業?工業)平均が5年連続のプラスになりました。前年に続き、不動産好況の波が、さらに多くの地方圏にも波及していることが明確になりました。

2020年公示地価の全體俯瞰

公示地価は、1月1日時點の土地価格を、國土交通省が地価公示法に基づき調査?発表するもので、「一般の土地の取引価格に対して指標」として、また「公共事業用地の取得価格算定、収用などの際の規準」として活用されます。
全國の全用途平均は、前年比+1.4%、住宅地は+0.8%、商業地は+3.1%となり、いずれも前年の上昇率を上回りました。全國の全用途は5年連続のプラス、住宅地は3年連続のプラス、商業地は6年連続のプラスとなり、バブル崩壊以降では、最も長期間の上昇を続けています。長期間の上昇が続く背景には、超低水準の金利が長く続いていること、大都市圏だけでなく、地方都市中心部でも再開発が続いていること等が挙げられます。

図1は、1983年からの東京都?大阪府?愛知県?福岡県の公示地価の推移です。
これを見ると分かるように、バブル期のような急上昇はないものの、緩やかな上昇が長期間続いています。(特に東京都が顕著)

図1:1983年からの4大都市地価公示推移

(出典)國土交通省「地価公示」

上昇幅に陰りが見え始めた三大都市圏

三大都市圏(東京?大阪?名古屋)の上昇は全用途2.1%(前年2.0%)、住宅地1.1%(前年1.0%)、商業地5.4%(前年5.1%)となっており、上昇幅に歯止めがかかってきました。
地方中核都市(札幌?仙臺?広島?福岡)の伸び率の、それぞれ半分以下になっています。三大都市圏の最近の地価は、「さすがに高すぎる」と感じられ始めているようです。
図2、3を見れば分かるように、特に名古屋圏では、全用途1.9%(前年2.1%)、住宅地1.1%(前年1.2%)、商業地4.1%(前年4.7%)となり、価格上昇はしているものの、それぞれ伸び幅は前年を下回り、価格天井感が鮮明になってきました。

図2:3大都市&全國 対前年変動率の推移(住宅地)

(出典)國土交通省「地価公示」

図3:3大都市&全國 対前年変動率の推移(商業地)

(出典)國土交通省「地価公示」

伸び率に歯止めがかかってきたものの、価格上昇は続いています。
東京圏では商業地は7年連続のプラス、住宅地も6年連続でプラスになっています。特に東京23區のうち、城東エリア(臺東區など)での上昇が目立っています。上昇している地方中核都市と同様に、価格上昇の先を走っていたエリアを避けるように開発が進んでいる様子がうかがえます。
大阪圏(大阪?京都?神戸などが中心)は、東京圏と名古屋圏と比べると住宅地の伸び率は最低(0.4%)でした。一方、商業地は6.9%のプラスと三大都市圏で最高の伸びを示しています。しかし、商業地地価の伸び率が沖縄に次ぐ全國2位の京都では、ここ數年伸び率が低下しています。京都はホテルが飽和狀態で、稼働率が低下気味である點が心配されます。また、このエリアの商業地は、昨今の外國人観光客の大幅減少の影響を大きく受けそうですので、來年の公示地価では下がらないまでも、上昇率は大きく低下すると思われます。

上昇が鮮明になってきた地方都市

逆に、地方圏では上昇が鮮明になってきました。

図4:圏域別対前年変動率の推移(住宅地)

(出典)國土交通省「地価公示」

図5:圏域別対前年変動率の推移(商業地)

(出典)國土交通省「地価公示」

地方中核4市(札幌?仙臺?広島?福岡)では、全用途平均が+7.4%(前年5.9%)、住宅地5.9%(前年4.4%)、商業地11.3%(前年9.4%)となっています。
これら4都市も含めたすべての地方圏(三大都市圏は除く)でも、全用途平均が+0.8%(前年0.4%)、住宅地0.5%(前年0.2%)、商業地1.5%(前年1.0%)となり、こちらは2年連続のプラスになっています。
地方中核4市と地方圏を重ね合わせたのが、図6、図7になります。

図6:地方圏対前年変動率の推移(住宅地)2013年~

(出典)國土交通省「地価公示」

図7:地方圏対前年変動率の推移(商業地)

(出典)國土交通省「地価公示」

これを見ると、地方圏、とくに地方中核4市の上昇が際立って目立つことが分かります。

都道府県別の前年変動率

次に都道府県別に見てみましょう。

図8:都道府県別 対前年変動率(住宅地)

(出典)國土交通省「令和2年地価公示」

住宅地の全國平均は+0.8%。最も上昇したのは沖縄県で+9.5%、次に宮城県3.5%、福岡県も3.5%となっています。23都道府県でプラスとなり、バブル崩壊以降では最も多くの都道府県でプラスになりました。石川県+1.7%、大分県+1.3%、福島県+0.4%あたりが、目立っています。逆に、下落が最大だったのは和歌山県で-1.2%、次は福井県で、-1.1%となっています。いずれも、マイナス幅は減少しています。來年の公示地価では、住宅地において、マイナスの県でもプラスに転じる可能性が高いと思います。

図9:都道府県別 対前年変動率(商業地)

(出典)國土交通省「令和2年地価公示」

続いて商業地です。全國平均は+3.1%。最も上昇したのは沖縄県で13.3%でした。前年が10.6%でしたので、伸び幅も上昇しました。2位は京都府で+8.1%。前述のように、京都は前年の伸び幅8.7%から減少し、少し陰りが見え始めました。

商業地が上昇したのは24都道府県でした。熊本県の3.5%、石川県の1.9%、奈良県の1.5%、長崎県の1.2%が目立ち、注目したいと思います。逆に、下落幅が最大だった島根県で-1.1%、次は鹿児島県で-0.9%となっています。いずれも、マイナス幅は減少しています。

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