2019年基準地価を読み解く
公開日:2019/09/30
POINT!
?全用途平均では+0.4%、2年連続でプラス
?地方4市(札幌、仙臺、広島、福岡)に限ると、住宅地は+4.9%、商業地は+10.3%、地方大都市の地価上昇に勢いが増す
?地方では地価の二極化が鮮明に
9月19日に國土交通省から、基準地価(都道府県地価調査)が発表されました。
全國の対前年平均変動率は住宅地-0.1%、商業地+1.7%、工業地+1.0%、全用途平均では+0.4%となり、2年連続でプラスになりました。上昇基調が強まっている結果です。
基準地価とは
基準地価は、全國の都道府県知事が調査を実施し、それらを國土交通省が取りまとめて毎年9月半ばに公表されます。國が主體となって行う地価公示とともに、一般の土地取引の指標となるものです。
地価公示は、毎年1月1日時點の価格に対して、基準地価の価格時點は毎年7月1日です。路線価(相続稅の算定基準となります)も1月1日が価格時點です。基準地価は1年の中間が価格時點となっているため、地価の中間発表の様相があります。全國21,540地點の地価を算定し、都道府県が主體であるため、地方部も地點が網羅されていることが特徴です。
各都道府県の狀況
最初に各都道府県の狀況を見ておきましょう。まずは、住宅地から。
前ページの図1は住宅地の基準地価変動率ランキングを示しています。
全國平均では-0.1%、前年が-0.3%、前々年が-0.6%でしたから、かなり回復してきました。來年9月の発表では、プラスに転じるかもしれません。
プラスになっている地域は15都府県。石川県や大分県など、地方大都市に含まれないエリアもプラスになりました。最下位は秋田県の-2.0%でした。秋田県は4年前には-4.0%でしたので、低下幅が減少してきています。
図1:都道府県別 基準地価変動率(住宅地)
國土交通省「地価調査」より作成
図2は商業地の変動ランキングです。
全國平均では+1.7%、3年連続のプラスで、かつ上昇幅も前年の+1.1%から大きくなっています。プラスのエリアは、20都道府県でした(ほぼ橫ばいを含む)。プラスのエリアは大都市、地方大都市に留まらず、富山県、奈良県、香川県など、地方まで広がっています。
商業地の最下位も秋田県で、-2.1%でした。こちらも住宅地と同様にマイナス幅は減少しています。
図2:都道府県別 基準地価変動率(商業地)
國土交通省「地価調査」より作成
大都市圏の狀況
まず、住宅地から狀況を見ましょう。
東京圏は+1.1%、6年連続の上昇で、上昇幅は3年連続の拡大となりました。
大阪圏は+0.3%、2年連続の上昇で、上昇幅は昨年を上回りました。
名古屋圏は+1.0%、7年連続の上昇で、上昇幅は3年連続の拡大となりました。
上昇地點を細かく見てみると、各エリアの中心地だけでなく、周辺部にも広がっており、かつ周辺部のほうが、上昇幅が大きくなっています。
また、中心部では、価格は上昇しているものの、上昇幅が減少している地點もあって、価格の天井感が近くなっているエリアがあることも分かります。
次に商業地です。オフィス需要が堅調で、ビルの建て替え、新設が進んでいること、インバウンド需要を見込んで、ホテル建設が進んでいることなどから、大きく上昇しています。
東京圏は+4.9%、7年連続の上昇で、上昇幅は6年連続拡大となりました。
大阪圏は+6.8%、7年連続の上昇で、上昇幅は6年連続の拡大となりました。
名古屋圏は+3.8%、7年連続の上昇で、上昇幅は6年連続の拡大となりました。
地方大都市の狀況
上記大都市圏を除く地方圏では、住宅地は ‐0.5%でしたが、商業地は平成3年(1991年)以來28年ぶりのプラス(+0.3%)となりました。
地方4市(札幌、仙臺、広島、福岡)に限ると、住宅地は+4.9%、商業地はなんと+10.3%になっており、地方大都市の地価上昇に勢いが増している結果となりました。
基準地価の四半世紀を振り返る
次に、1996年からの基準地価変動率の推移を見てみましょう。
図3は1996年~2019年の基準地価の変動率の推移です。バブル崩壊以降、低迷が続いていましたが、ミニバブル期に回復、しかし、リーマンショックで大きく下げ、2013年頃からの回復していることが分かります。
図3:都道府県地価調査(基準地価)変動率の推移(住宅地)
國土交通省「地価調査」より作成
図4は、商業地の推移です。住宅地と比べて、動きが見やすい、つまり景気に影響を受けて動きがはっきりしているグラフになっています。
図4:都道府県地価調査(基準地価)変動率の推移(商業地)
國土交通省「地価調査」より作成
ミニバブルピーク2008年との比較
バブル期の爆発的な上昇には程遠いものの、土地価格の上昇は続いています。バブル期に次いで、不動産市況が好調だったミニバブル期(2005年~ 2008年)のピークだった2008年と比較してみましょう。
都道府県単位で住宅地から見てみます。 2008年を100として、それを上回っているのは、唯一沖縄県で、111.1となっています。価格上昇が続く東京都は96.9、愛知県は98.7、など90を超えるのは全國7都県になっています。
一方、商業地では、2008年を100としてそれを上回っているのは、沖縄県121.6、京都府112.3、大阪府111.1、東京都108.3、愛知県104.4の5都府県、90を超えているのは宮城県、千葉県、滋賀県の3県を加えた8都府県となりました。商業地においては、インバウンド需要を見込んだホテル開発、市街地の再開発等が進んでいる地域で地価の上昇がうかがえます。
全國的に見ると、地価の回復は顕著になってきています。また、その勢いは地方都市にも波及し、地方大都市ではかなり大きな上昇になりました。景気回復、雇用の改善、などが背景にあるとともに、低金利環境がプラスに作用しています。
しかし、住宅地では特に地方都市で見られる傾向として、交通の便や生活環境のよいエリアが上昇の中心になっており、郊外や周辺部では上昇基調は見られません。
また、商業地では、オフィス需要があるエリア、インバウンド需要のあるエリア、観光客の多いエリアでの上昇はかなり大きな幅になっていますが、こうした目立つ要因がないエリアでは、あまり上昇は見られませんでした。地方においては地価の二極化がはっきりしています。