オーナー様の立場に立って資産を守る「ハートワン信託」ハートワン信託株式會社の営業部長 三本木芳彥氏
公開日:2019/04/26
管理型不動産信託事業は、オーナー様が安心して賃貸住宅経営を継続できるようにと始めた事業ですが、どのような特徴をもっているのか、ハートワン信託株式會社の営業部長?三本木芳彥氏にお話をうかがいました。
オープンであることが信託の魅力のひとつ
インタビュアー(以下I):ハートワン信託は、大和ハウスグループ內の企業體である大和リビングカンパニーズの一員として設立されています。
三本木(以下S):現在、大和リビングでは56萬戸超(2019年3月末現在)の賃貸住宅を管理させていただいていますが、オーナー様の高齢化は確実に進んでおり、併せてお子様のいらっしゃらない方や事業承継にお悩みの方も増えています。
このままでは、いずれ相続時にトラブルの発生、あるいはその手前で認知癥による賃貸住宅経営の停滯というリスクを抱えることになるオーナー様が増えてしまいます。
そこで、企業として対策を講じられないかと研究を重ねた結果、信託會社の設立という結論に至りました。
I:オーナー様の立場からすると、自分に何かあっても次の世代に安心して引き継げる。また、わが家の資産はずっと守られていくという安心感もあります。
S:次世代への資産承継といえば、まず遺言書をイメージされる方が多いと思います。もちろん遺言書でも資産の引き継ぎはできますが、遺言書と信託の一番の違いは、遺言書は誰にも見せず、ご家族に相談もせず、オーナー様が黙々と一人で書くというところです。
もちろん相談してもいいのですが、大半の方は自分の意志で遺言書を一人で作ります。ですから相続が起きたとき、ご家族は自分が何をもらえるのか、まったくわからないケースがほとんどで、それがご家族間の爭いの原因になることもあります。
不動産信託の場合、相続が発生した後の信託財産の受益者は誰、次は誰、その次は誰というように信託契約書に書かれます。信託契約書に書かれたことは、不動産であればそのまま不動産登記簿に載ります。不動産登記簿に載るということは、誰でも見ることができるので、とてもオープンに資産を引き継げることになります。
I:オープンというのは、新しいコンセプトですね。
S:當社が講師を務めるセミナーのタイトルに「明るい資産承継」というキャッチフレーズがあります。「明るい」というのは、元気なうちに財産の行き先、引き継ぎ方について、ご家族でオープンに話し合ってください、遺言書のように一人で作って黙っているのではなく、皆さん納得しているのであれば相続が起こっても揉めませんよね、という気持ちを込めています。信託の場合は契約書に書かれる、不動産であれば登記簿謄本にも載るということで、遺言書と違ってオープンにできます。オープンになっていたら揉めないということが、私どもからの一つの提案です。また、信託を活用すれば相続だけでなく、認知癥対策も行うことができます。認知癥になると、ご本人名義であっても銀行口座の現金を動かせなくなります。そうなると、例えば賃貸住宅を修繕したくても、オーナー様ご本人は資金を出すことができず、配偶者や息子さんなどが立て替え払いをすることになり、重い負擔となってしまいます。賃料をもらっているのはお父さんなのに、口座からお金を出せないことで経済的に困ったり、負擔を感じたりするご家族が少なからずいらっしゃいます。信託を活用すれば、そうした不安はなくなります。
I:信託に関してなじみがない方は、信託の意味を理解するのに相當時間がかかりそうな気がします。どのようにご説明されるのでしょうか。
S:おっしゃるとおり、そもそも信託という制度、あるいは言葉に皆さんなじみがありません。一般の方もそうですし、大和ハウス工業や大和リビングの営業の方々も、そういう意味では同じです。そこはご理解いただく活動を地道に続けていくしかありません。ただ、なじみのない信託でも「安全?安心に、そしてオーナー様が思い描くとおりに資産の引き継ぎができます。」「遺言書ではできない、『先の先』までの資産の引き継ぎができます。」「任意後見制度よりも自由に、そしてご家族に負擔をかけない認知癥対策ができます。」といったオーナー様にとってのメリットを丁寧に説明すると、興味を持っていただけることが多いです。
I:具體的にはどのような提案になるのでしょうか。
S:今、進めているオーナー様の事例があります。
この方は80歳、將來的にはご所有不動産の大半をご長男に引き継ぎたいというお考えをお持ちです。ただし、ご長男は現在、海外赴任をされています。また、ご自身が認知癥になってしまったら家族に迷惑をかけてしまうということも心配されています。そこで、私どもは次のような提案をいたしました。まずは認知癥対策です。ご長男が近くにいらっしゃらないので、信託契約後の最初の代理人として配偶者を指名されることをお勧めしました。仮に配偶者が代理人の役割を果たすことが難しくなった場合は、2番目の代理人としてご長男またはご長男が指定される方を指名することも提案しました。次に資産承継です。相続が発生した場合は、信託不動産の大半をご長男に殘すことにします。
ただ、ご長男が帰任前の場合は受益者をご長男、その代理人を配偶者またはご長男が指定される方とする方法も提案しました。
さらに、このオーナー様のお孫様(ご長男の息子様)がつい最近結婚され、ご長男の次に賃貸住宅経営を受け継ぎたいというご希望をお持ちであることがわかりました。
そこで、長期的な視野で將來を見據え、ご長男の次の承継者をお孫様として信託契約書に記載することも私どもから提案しました。
※他の相続人の遺留分には、十分な配慮が必要です。
このように、信託はどのようにも設計できて、自由度が高いという特徴があります。
ご家族の狀況やご所有財産の狀態は、オーナー様によって千差萬別です。しかし、信託が持っている自由自在な機能を活かしきれば、すべてのオーナー様にベストなソリューションを提供できると私どもでは確信しています。
信託を活用すべきオーナー様とは
I:今、これだけ話題になっていますので、管理型不動産信託を考えるオーナー様も増えていくと思います。どのような場合に信託を活用されたほうがいいのでしょうか。
S:一つには、認知癥が不安だという方です。信託が持つ機能を使えば、その不安を解消することができます。
また、自分は賃貸住宅経営を長く続けているが、家族にはその経験がないため、オーナーの立場で経営にあたってもらえる會社に任せたいとお考えのオーナー様にも向いていると思います。
また、遺言書を作るのが面倒だという方は、信託契約で財産の行き先を指定しておけば、遺言書と同じように財産を引き継いでいくことができます。
- (1)家族には賃貸不動産経営の経験?知識がないため、オーナーの立場で経営に當たってもらえる會社に任せたい。
- (2)遺言書を作成せず、賃貸不動産を承継したい。
- (3)遺言書では、2次相続以降の承継先を指定できず、不安だ。
- (4)認知癥などの場合に備えて、賃貸不動産の管理?処分についての権限を息子(娘?甥?姪)に與えておきたい。
- (5)任意後見制度は、手続きが面倒で気が進まない。
- (6)家族信託は、受託者になる家族にとって賃貸不動産経営が重荷にならないか、心配だ。
I:遺言書と違い、信託では2次、3次の相続先を指定できると聞いています。
S:「遺言書では2次相続以降の承継先を指定できず不安だ」という場合、1本の信託契約書で、自分の次は配偶者、配偶者の次は長男、長男の次は孫と、2次、3次の相続先を指定することができます。これを信託の「連続承継機能」といいます。遺言書では、自分の次までしか決められません。そこから先は、次の方が遺言書を書く必要があります。
※ 他の相続人の遺留分には、十分な配慮が必要です。信託の存続期間には制限があります。
例えば、お子様がいらっしゃらないご夫妻が、この連続承継の機能を使うとします。
ご夫妻だけでお子様はいないのですが、それぞれにご兄弟がいるご夫妻が何もせず、法定相続のとおりに財産が受け継がれていったらどうなるかを考えてみます。
まずご本人様の相続では、法定相続割合でご本人様の兄弟に4分の1、配偶者に4分の3となります。次に配偶者に相続が起きた場合、配偶者の法定相続人は配偶者のご兄弟しかいらっしゃいません。
そうすると、ご本人様から相続した4分の3も含めて、配偶者の財産は全部配偶者側の兄弟に渡ってしまいます。ご本人様からすると、妻はいいけれど、先祖代々受け継いできた土地が配偶者を経由して、自分と血のつながらない配偶者側の兄弟に渡ってしまうのはどうなのだろうということになります。この場合、法定相続ではご本人様の兄弟に殘すことができません。
そこで信託の出番です。1次相続では、すべての財産を配偶者に與え、配偶者の相続(2次相続)では、すべての財産をご本人様側の兄弟というように信託契約で定めておけば、そのとおりに引き継げます。信託は、このような使い方ができるのです。
セミナーでは、「信託はオールラウンドです」と申し上げています。遺言書は相続が起こってからは効果がありますが、認知癥対策にはなりません。それでは認知癥を発癥されたオーナー様とご家族は救えないのです。
任意後見制度は、認知癥や要介護になったときに後見人が立ちますが、相続が起こって財産をどう分けようかということは決めてくれません。信託であればすべてをカバーできます。
自由自在で、オールラウンドなのが信託です。その良さをすべてのオーナー様に実感いただくこと、これが當社の願いです。