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コラム vol.277
  • 土地活用稅務コラム

先祖代々の不動産を法人化によって守る

公開日:2019/04/26

POINT!

?何も対策せず、単に相続するだけでは、資産は目減りする一方

?法人を設立するなど、不動産の相続は、トータルに長期スパンで考える必要がある

私は都心に加えて浦和や千葉でも事業をさせていただいていることもあり、農地から宅地への転用、あるいは農地の相続といった相談を多數受けています。
もともと大きな農地を持っている人の多くは、先祖代々その土地を受け継いできた人たちです。ところが、現在の稅制では、相続稅や贈與稅が重くのしかかり、何も対策を講じずに単に相続していくだけでは、資産は目減りする一方です。
考えてみれば、現在の相続稅の原型ができたのは戦後です。戦前は家督相続であり、相続稅は存在していたものの、今とは比較にならないほどの低いものでした。
戦後、1947年(昭和22年)の憲法、民法の全文改正により家督相続が廃止され現在の法定相続となったことにより、同年にそれに合わせた相続稅法の改正が行われました。
そのため、年配の方には、いまだに家督相続の考え方が殘っている人が少なくありません。その方々には、たとえ現在10億円の資産があったとしても、孫の代となったら、1億円になってしまうこともあり得ることをまずわかっていただく必要があります。
そのうえで、その不動産資産をどのように運用していくかを考える必要が出てきます。土地活用などで対策をしなければならないし、上手にお金をストックして相続に備える必要も出てきます。

法人を設立し、資産を守る

例えば、10億円の資産を持っている地主さんがいるとします。お子様が2人として、そのまま相続すると1人あたり5億円。おおまかにいうと稅金が半分かかるので、手殘りの資産は1人2.5億円となります。1回相続を経るだけで4分の1になってしまいます。現在は家督相続ではないため、お子様全員に平等に分割され、そこから稅金を引かれるためさらに半分になってしまうわけです。何も対策しなければどんどん減ってしまいます。では、2人のお子様にそれぞれ手殘りが10億円ずつになるように相続させようと思ったら、いくら資産があればいいでしょうか。お子様2人で2分の1、そこから稅金で2分の1ですから、逆算すれば、4倍の40億円です。10億円の資産を40億円にしないと、お子様の代で自分と同じような資産の保有はできないのです。しかし、10億円の資産を40億円にするというのは現実的ではありません。相続まで仮に30年間としても、毎年利回り10%以上で資産を運用しないと40億円にはなりません。

ではどうするか。30億円増やさなくても同様の効果が出る方法が必要になります。一つの方法として法人を設立して、その法人を利用します。個人所有の10億円の資産はいったんそのままに、お子様が2人いるならそれに合わせて2社設立します。設立當初は父親が株主でかまいません。その設立した會社に建物だけでもいいので取得させて不動産賃貸業を始めれば、その會社の株式を渡すことでその建物の所有権をお子様に移すことができます。つまり、法人所有にした資産は相続を経ることなくお子様に渡せるわけです。
いったんそのままにしていた個人所有の10億円をそのまま相続すると、手殘りの資産はお子様1人につき2.5億円。お子様1人につき10億円にするためには殘りが7.5億円必要です。7.5億円 ×2人分は15億円ですから30年で15億円増やせばいいわけです。個人所有だけですと10億円を40億円(30億円増)にしてやっと子どもに10億円殘せます。しかし、法人を利用することで、個人資産10億円をそのまま2.5億円ずつ無策で相続するとしても、法人の資産を10年または5年で15億円にすることができれば、同じだけの資産を子どもに移すことができます。半分の力で同じ効果が得られるのです。この方法を応用すれば、直接お孫さんにも移すことができます。そうすればもっと効率的です。

スキームとしては、法人のオーナーは祖父ではなくて息子や孫にします。そして祖父の不動産収入を生み出す建物を法人所有化し相続稅がかからない不動産にしたうえで利益を上げていきます。今は法人稅率が25%~ 30%と低くなっています。法人で利益から稅金を払った殘りの75%~ 70%を貯めて祖父の土地を買い取って會社所有にします。そうするとその土地のオーナーも息子や孫になります。祖父には土地の売卻額から譲渡稅(所得稅?住民稅)の20%を差し引いた8割のお金がいきますが、祖父の家賃収入を減らして、不動産所有會社から祖父へ給料を払わなければ、必然的に數年経てばいま持っている現金も使い切ることができます。現金預金であれば自由ですが、土地の場合は、トータルでどうやって親世代から子世代、あるいは孫世代へ移していくかを考えなければなりません。
資産家の中には、長年住んできたご自宅を守りたいとおっしゃる方も多くいらっしゃいますが、できればご自宅は引っ越して、その土地も活用してほしいと思います。
また、兼業農家のかたわら、賃貸住宅経営をされている地主さんなどは、相続の際、資産価値の高い賃貸住宅等が建っているところを納稅のため売卻せざるを得ないことが多く、納稅の負擔に加え収入も減ってしまいます。良い土地、使える土地から売ることになり、使えない広大な土地が殘ってしまいます。しかも、農業を引き継ぐ人は減る一方です。
実は、地主の方々は、土地のまま個人所有しておくと、資産は目減りし、大変なことになることはご存知です。そうしないと、お子様やお孫様に、ご自身と同じ資産を與えることは難しくなり、しかも、法人ではなく、個人で相続をやるとなると、さらに難しくなることもご存知です。ただ、実際の行動に移す方が少ないので、ここは早めに検討し、行動に移すことが重要です。

相続に関しても法人によって行う

法人(具體的には株式)を相続する場合、その法人の株価がゼロ評価のときに息子や孫に株式を移してしまえば稅金がゼロ円で贈與できます。つまり、法人が借入金によって建物を建てた段階では、借り入れを返していないので、資産(建物)と負債(借入金)はイコールですから法人の株価はゼロになるのです。借入時は土地オーナー様が保証人になるので、土地オーナー様の名義で法人を設立することも多いのですが、建てた段階で、もしくはその數年以內に、株式自體を株価ゼロのうちに相続人にあげてしまうのです。1億円の建物を建てて1億円の借り入れをすると、建物について建築直後は1億円の評価でも3年後には、7000萬円、6000萬円くらいになり、借り入れは1億円から少し返済して9000萬円くらいになります。資産7000萬円負債9000萬円で法人の財務狀況はマイナスです。そのため株価ゼロで稅金がかからずに株式を息子や孫に移すことができるのです。こうして計畫しながらやると、無稅で土地と建物を持っている法人の株式を贈與することが可能です。
ですから、この場合、時価(株価)ゼロの株式を移すだけですから贈與稅の必要すらありません。一方、土地について考えてみると、もちろん土地のまま贈與できるのですが、分筆して小口でやらなければいけないので複雑になります。株式だとゼロでできますし、たとえ株価が1億円であっても株式は小分けにすることが簡単です。ただ、単に相続だけを考えれば、一気に複數の人に株式を贈與することもできますが、相続後に整理をするのが大変なので、1人か2人に計畫的に贈與してください。
建築費が1億円、2億円かかっても、借入金を返せば利益と現金は法人に殘るわけです。そこでの法人所有財産は株式さえうまく息子や孫に渡してしまえばその後の相続は関係ないので、法人の評価額が數億になったとしても、相続稅はかかりません。 ただし、それは20年くらい後の結果であって、 1年、2年でやる話ではないことに注意が必要です。

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