賃貸住宅投資のキャップレート低下が続く。その意味とは?
公開日:2019/04/26
POINT!
?キャップレートの低下は、価格上昇を意味することが多い
?2018年下期では多くのエリアでキャップレートは低下
土地活用を含めた各種不動産への投資を行う場合、投資額に対してどのくらいの利回りが期待できるかは重要な判斷材料です。 投資を行う方(土地活用においては、土地オーナー様)の考え方によりますが、「各種機関投資家、アセットマネージャー等が、どのくらいの利回りを期待しているのか」は、自身の期待利回りの妥當性の基軸になります。
不動産証券化協會がキャップレートを公表
期待する利回りのことを「キャップレート」(正しくは「Capitalization Rate」)といいます。
賃料やそのほかの要因が一定だとすると、キャップレートの低下は不動産価格の上昇を意味します。住宅賃料は、當然市況に左右されますが、短期間ではそれほど大きく変動しません。そのため、キャップレートの低下は、大半の場合、価格上昇を意味することになります。それはつまり、「価格上昇でも、不動産投資、土地活用投資を行いたいと思う方が増える傾向にある」ということになります。キャップレートはいくつかの機関から公表されていますが、今回はその一つを紹介し、分析してみたいと思います。
一般社団法人不動産証券化協會が半年に1度調査?公表している「不動産投資短期観測調査」の最新(第27回)の調査分析が、2019年4月に公表されました(調査時點は2018年12月)。
この調査は、「日本の不動産投資市場の現狀と先行き」について分析することが主眼とされており、各種機関投資家、アセットマネージャー等に対するアンケート調査結果を基に分析を行っています。その大項目の一つが、「キャップレートについて」となっています。
この中にある、賃貸住宅(ワンルーム、ファミリー)のキャップレートについて見てみましょう。
賃貸住宅の調査エリアは、東京23區では、城南地區(目黒區?世田谷區)、城東地區(墨田區?江東區)、港區の「麻布?赤坂?青山」地區、札幌、仙臺、さいたま、千葉、橫浜、名古屋、大阪、神戸、広島、福岡の各都市となっています。
キャップレートは2008年のリーマンショック後に全國的に一気に高くなり、東京都心一等地でも6~7%臺となりました。その後リーマンショックの影響も収まり始めて、徐々に低下していきます。2019年6月発表の予想數字では、都心の最も高いとされる3Aエリア(麻布?赤坂?青山)では、ワンルームタイプの賃貸住宅のキャップレートは4.0%となっています。
ちなみに、城南エリアは4.1%、城東エリアは4.3%、札幌5.3%、仙臺5.4%、さいたま5.0%、千葉5.3%、橫浜4.9%、名古屋5.0%、大阪4.9%、神戸5.2%、広島5.5%、福岡5.0%となっています。
キャップレートは立地條件、建築工法等により大きく異なりますので、同一地域內でも変わってきますが、一つの基準になると思います。
多くのエリアでキャップレートは低下
詳細な數字は一般社団法人不動産証券化協會のホームページを見ていただくとして、今回の公表データで注目すべき點をお伝えしておきます。この調査は半年に1度行われます。前回(2018年6月)の調査では、この先半年のキャップレート(つまり今回の調査結果)は、もうほとんど下がらないと予想していた回答が多數でした。しかし、蓋を開けてみれば、多くのエリアでキャップレートは低下しました。つまり、2018年の上期には「不動産価格はそろそろ天井か?」と各種機関投資家、アセットマネージャー等(=専門家)は考えていたようですが、実際にはまだまだ不動産市況は良かったということになります。
そして、今回の調査における、「この先、どうなると思うか?」の分析結果では、「価格上昇はもう少し起こりそう」ということになっています。もちろん、金利の動向、世界経済の動向など、不透明な要因もありますが、こうした要因で大きなショックが起こらない限り、現在の好調な不動産市況はしばらく続くと思われます。