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コラム vol.257
  • 不動産市況を読み解く

消費稅増稅は住宅著工數にどのような影響をもたらすのか

公開日:2018/10/30

POINT!

?消費稅増稅に伴い、住宅建築に関する経過措置がとられる

?増稅時に駆け込み需要は多少起こるが、これまでと比べると小さな規模になると思われる

2018年10月15日、安倍首相は予定通り2019年10月から消費稅を現行の8%から10%に引き上げることを表明しました。

消費稅10%への道

思い起こせば、2013年10月に「2014年4月から、5%を8%に引き上げること」、併せて「その1年半後の2015年10月にさらに2%引き上げて、 8%から10%とすること」が表明されました。そして、2014年4月に予定通り消費稅が8%に引き上げられました。
しかし、2014年11月、2015年10月に実施されるはずだった10%への増稅は、経済市況などをかんがみて、2017年4月に延期が決定、そして2016年6月、さらに「2019年10月に延期する」と再延期が決定しました。 そして今回、再々延期はせず「予定通り2019年10月から10%にする」と宣言したのです。

消費稅増稅批判の緩和策

政府は、増稅することで財政の立て直しや福祉の充実、公共投資の拡大が可能になるなどのプラスの面を強調していますが、マイナスの面も指摘されています。そのため今回も前回と同じく、消費稅の引き上げによる消費の落ち込みを軽減させるための措置として、軽減稅率の適用と減稅措置を導入することが決まっています。
日常的に支出する食料品などの各種軽減稅率を適用すること。そして自動車、及び住宅取得に係る減稅措置の導入などを盛り込む方針になっているようです。
メディアは政府に批判的な論調が多いためか、消費稅増稅による景気の腰折れ懸念を強くアピールしています。しかし、日本政府が抱える最大の懸案事項は財政の立て直しであることも事実であり、増稅は仕方ないと思う方も多いようです。

増稅と住宅建築に関する経過措置

今回の増稅においても、これまでの増稅時と同 じように住宅建築に関する経過措置がとられます。 基本的には、引き渡しが2019年9月30日までに終わっていれば、消費稅は現行の8%となりますが、引き渡しが2019年10月1日以降になると消費稅が10%かかります。
しかし、住宅建築は早くても4カ月、一般的には半年くらいかかります。そうしたことを考慮し、増稅施行日の6カ月前の前日までに請負契約が完了した住宅については、引き渡しが増稅施行後であっても、増稅前の稅率である8%が適用されます。これを「経過措置」といいます。つまり、請負契約が2019年3月31日までに完了していれば、引き渡し時期に関わらず消費稅は8%となるということです。

図:消費稅導入?引き上げ前後の著工戸數(総計)の増減率比較

國土交通省「建築著工統計調査」より作成

過去の消費稅増稅による駆け込み需要はあったのか

過去の経緯を見ると、持ち家(戸建住宅)と貸家(賃貸住宅)の請負契約は増稅の1年半くらい前から増加し、経過措置の期限である半年前くらいがピークになり、その後減少しています。 下図は、過去3回の消費稅増稅(0→3%、 3%→5%、5%→8%)時の前後における住宅著工戸數の増減を示したものです。3%→5%、5%→8%のときには、半年前あたり(4月から増稅ですから7月~ 10月)にピークを迎え、増稅後は大幅なマイナスとなっているのが分かります。
ただし、半年前に契約したとしても、請負契約を交わした後に確認申請、著工という流れとなりますので、著工戸數として上図に現れるタイミングは少し後ろにずれます。
こうして見ると、住宅請負においては、過去の消費稅増稅の際、かなりの駆け込み需要があったことが分かります。

10%への増稅で駆け込み需要は起こるのか?

2019年10月からの消費稅増稅による駆け込み需要は、これまでに比べて小さな規模になると思われます。
その理由としては、第一に増稅幅が2%とこれまでに比べて小さいこと。第二に駆け込み需要後の減少に備えて政府による対応策が講じられており、それが周知されていること。そして2013年頃から続く旺盛な不動産購入需要により、潛在的な需要が減少傾向にあることなどが挙げられます。
貸家(賃貸住宅)においては、近年稅務対策で建築する方が多く、その時期がしばらく続きましたので、その將來需要を先食いしている感があります。そのため、駆け込み需要、そしてその後の落ち込みともに少ないと予想します。

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