東京の空室率の変化と全く関係ない動きをする大都市はどこ?
公開日:2018/09/19
空室率について
総務省統計局「平成25年住宅?土地統計調査」によると、全國の賃貸住宅の空室率は、約19%となっています。これには、かなり築年數の経過した賃貸住宅なども含まれた數値ですので、稼働している賃貸住宅の空室率でいうと、もう少し下がると思います。また、空室率はエリアによっても大きく変わってきます。ちなみにこの調査によると東京23區は、15.7%です。
空室率の調査データはこうした公的なデータを含め、他にもいくつかあります。空室の調査データは、その集計方法にバラツキがあるのでそれらを比較検討することは難しく、また、計算方法も異なるので、空室率の數字そのものについては、この辺りを考慮して見る必要があります。
基本的には、分母は賃貸住宅の総數、分子は空いている部屋數です。これらそれぞれについて、どこまで含めるかが異なります。
ここでは、都道府県単位での空室率の相関関係を検討してみます。
空室率は発表されるデータで異なる
図1は、株式會社タスが公表している空室率の推移データです。
(図1)TVI空室率の推移
株式會社タス「TAS賃貸住宅レポート(データ提供:アットホーム株式會社、分析:株式會社タス)」
このグラフを見ると、大阪府の空室率が8~9%で大都市の中では最も低くなっています。大都市の中では空室率が高いといわれている大阪が最も低い値となっています。
また、東京都は12~13%となっています。先に述べた総務省データでは東京23區は15.7%です。一般的に東京23區の方が東京都全體よりも空室率は低いと思われます。また、東京都內の空室率は減少傾向になるという聲も聞かれますが、このグラフでは2017年以降東京都の空室率は上昇しています。このようなことから分かるように、どのデータが正しいというより、この違いはデータの集計方法の違いといえるでしょう。そのため、どのような集計方法で、どのような計算方法なのかを理解したうえで発表される空室率を見なければなりません。メディアが発表される情報ではこうしたことを抜きして、単に「空室率○○%」などと出ますが、そうした情報にはリテラシーが求められます。
東京に空室が増えても福岡では増えない
タス社が発表する都道府県別の空室率の推移について相関関係を獨自に計算したものが、図2になります。
(図2)都道府県別 TVI空室率の相関関係
東京都 | 神奈川県 | 埼玉県 | 千葉県 | 大阪府 | 京都府 | 兵庫県 | 愛知県 | 靜岡県 | 福岡県 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東京都 | ||||||||||
神奈川県 | 0.56 | |||||||||
埼玉県 | 0.31 | 0.90 | ||||||||
千葉県 | 0.43 | 0.96 | 0.89 | |||||||
大阪府 | 0.25 | 0.89 | 0.84 | 0.95 | ||||||
京都府 | -0.01 | 0.17 | 0.25 | 0.13 | 0.33 | |||||
兵庫県 | 0.63 | 0.94 | 0.76 | 0.93 | 0.87 | 0.23 | ||||
愛知県 | 0.72 | 0.47 | 0.29 | 0.40 | 0.22 | 0.07 | 0.62 | |||
靜岡県 | 0.63 | 0.84 | 0.78 | 0.84 | 0.75 | 0.28 | 0.88 | 0.69 | ||
福岡県 | -0.10 | -0.74 | -0.78 | -0.79 | -0.83 | -0.08 | -0.57 | 0.21 | -0.46 |
株式會社タス「TAS賃貸住宅レポート(データ提供:アットホーム株式會社、分析:株式會社タス)より、著者作成」
相関係數はそれぞれの數値の関係性を調べたもので、プラス1 ~マイナス1で表します。強い相関=同じような動き(例えばAが數値上昇時にBも同じような割合で上昇する、またはともに下がるなど)をするとプラスの數字になります。逆の動きをするとマイナスで表します。
これを見ると、福岡と主要都市の相関係數は軒並みマイナス(赤文字)であることがわかります。
大阪府と福岡県の空室率の相関はマイナス0.83ですので、ほぼ全く別の動きをするということになります。例えば、福岡県の空室率があがるときは、大阪府の空室率は下がるということです。この表中では福岡県は愛知県以外すべてマイナス(逆相関)の関係にあります。
東京都の空室率は概ねプラスの相関です。関東エリアの神奈川、千葉、埼玉は近隣エリアということですので、プラスの相関なのかもしれませんが、兵庫や愛知、靜岡とも、強い相関になります。これは、東京都の動きに日本の多くのエリアが影響を受けている、といえるでしょう。
土地活用、賃貸住宅経営などの不動産関連ビジネスでは時流を読み解くことが重要なポイントです。不動産市況の時流を理解するためには、東京の動きをウォッチする、ということなのでしょう。