講演レポート企業が行う賃貸住宅経営の必要性と不動産投資の方法
公開日:2017/06/30
(1)企業経営の観點で見る不動産を取り巻く環境
?企業の経営戦略の中の不動産との関わり
企業と不動産の関わりがよく取り上げられるようになったのは2000年代前半です。有利子負債を削減するために、企業で抱えているノンコア資産、つまり大して使っていない、少し使っているだけ、あるいは未使用や低利用の資産を精査し、その一部を売卻する企業が増加しました。
この売卻が空前のマンション建築ラッシュをもたらします。今も昔もそうですが、2000年代前半から中盤あたりが日本で一番マンションが建った時代です。これは、負の遺産の清算期ということもできます。この頃は実際に活用していない不動産を持つのがあまりよくないといわれていた時代でした。「軽い企業経営」「持たざる経営」と呼んだりしていましたが、手軽に、重たい荷物(不動産)を持たないようにしましょうという時代でした。
それが、ここ數年の景気回復により、事業會社の不動産に対する関心が高まってきました。つまり、ある程度良い場所に不動産を持っておけば、それなりの価値を生む。一方で、今は事業が好調でも、この先どうなるかわからない。ビジネスにはライフサイクルがあるので、産業自體がどうなるかわかりません。ただし、不動産を良い場所に持っておくと、安定的な収入が入ってきます。
キーワードは、「不動産を企業の成長、発展に寄與する手段、もしくは経営を安定させる手段として持っておこう」です。このようなかたちでの取組みに変わってきているのが、ここ3~4年の流れです。最近では、中小企業までその余波が広がってきています。
このようなことから、不動産をうまく使えるかどうかは、企業の永続性に関わることではないでしょうか。世の中の流れはそうなってきているようです。
?不動産を取り巻く環境
2016年1月末に発表され、2月16日付でマイナス金利政策が実行されました。マイナス金利は経済理論的には異常な狀況です。このマイナス金利政策は不動産価格への影響もあり、それが一番のマイナス要因かもしれません。資本主義経済は、基本的にある一定のインフレ率がある前提で成立しています。マイナス金利政策はそれを歪めたかたちの政策ですので、「將來大丈夫なのか」という気持ちから、実物の資産へお金が動いているようです。それに伴って、不動産価格も上がってきています。
日本の地価の変動には何度か大きな波がありますが、やはりバブルの時の大きな波が目立ちます。その後のミニバブルは2005~2008年あたりです。その後2013年以降は4年連続で上がってきています。日本の不動産価格の動きは「7年サイクル」といわれていますが、最近のように金利操作があると、また違う狀況になってきています。
今後の不動産市況の見通しですが、2019年には消費稅が10%になる見込みです。2020年はオリンピック、そして2027年には予定では品川から名古屋の間にリニア新幹線が走ります。
こう見ていくと、一旦橫ばい期を迎えて、2019年くらいから再び良くなっていく。そして、26年になるとまた変わってくる。そんなサイクルが予想されます。オリンピックやリニア新幹線の開通など、世の中は7年ごとに出來事が起こっていると言えそうで、そんな日本の不動産市況の特徴が、なんとなく見えるのではないでしょうか。
?不動産投資ブームの裏側を読み解く
今、不動産投資、不動産活用が盛んになっています。特に遊休地活用がかなり盛んで、「やりすぎではないのか」とメディアでも取り上げられるほどになってきました。次の表は、不動産投資?活用の種類ですが、ワンルームマンションなどの區分不動産への投資も盛んになってきています。
次の表を見ていただくとわかるように、貸家が5年連続プラスになっています。今年も、去年に比べて若干伸びるのではないかと思います。
また、この狀況を空前のブームという人がいますが、実はそんなことはありません。バブル崩壊後の1991年から2015年までの貸家の平均が、およそ47萬戸です。去年はそれより約5萬2000戸少ないので、メディアが報じるほどバブルではありません。ここ20年の平均からは低い狀態にあるのが、賃貸住宅の建築數です。あまりメディアの発表を鵜呑みにしなくてもいいのではないでしょうか。
當然、賃貸住宅はどんどん古くなっていきますので、古い賃貸住宅も含めた數字であれば、それほど飽和していないといえるでしょう。また、都心や都會においてはそれほど數が増えていないというのが、最近の実數値です。
?インフレ率の日米比較
次のグラフですが、インフレ率の日米比較です。日本のバブル後の90年代前半からの赤い線が上がっているのはほとんど消費稅が増稅された時期です。97年は消費稅が3から5%に上がったときで、2014年は5から8%に上がったときです。実は、1990年ごろから消費稅導入以外の理由で物価が上がったことはあまりありません。
賃料も、とても高くなってきたという感じではありません。ただし、今の狀況を見たら、どれくらい先かはわかりませんが、日本の経済はじわじわとインフレ基調にならざるを得ないと思います。日本の國債、政府の財務狀況を見たときに、どうしてもそうならざるを得ない狀況が來ることは、私だけがそう思っているのではなく、おそらくみんなが考えていることだと思います。じわじわとインフレになる可能性が高い、という見方がほとんどだと思います。
言うまでもありませんが、インフレは通貨価値の下落です。つまり、お金の価値が目減りしたということです。さらに目減りするのが保険です。保険がらみはすべて実質的に目減りします。インフレ連動の保険もありますが、インフレ連動ではない保険は基本的には目減りします。
一方で、インフレにそのまま引っ張られていくものの代表が賃料です。CPI調査、消費者物価指數の調査に、民営家賃という項目があります。今インフレ狀況が起こっているのかいないのか、そのウォッチの項目の一つに賃料があります。賃料はインフレから遅行性があるので、やや遅れます。多くの賃料は2~3年期限で結ばれますので遅れます。若干遅れて変動するのが賃料の特徴です。
?企業における不動産の関わり方とリスク
オフィスやテナントを借りている場合、賃料が上下するリスクがあります。一方で、所有して自社で利用している場合にも、當然いろいろなリスクを伴います。所有していて自分では利用しない場合、安定収入が入ってくるというプラスがあります。その一方、賃貸住宅なので、空室が出たり賃料が下がったりする、あるいはすぐに売卻できるかどうか、できないかもしれないというリスクを伴います。安定化という恩恵を受けているわけですから、當然、そのリスクはゼロではありません。
リスクには、回避の可能性があるものとないものがあります。回避の可能性があるものは、家賃の下落や滯納、空室リスクなどです。サブリース會社に入っていただくことである程度は回避できます。次に、流動性のリスクや価格下落リスクです。これはすぐに売れるかどうかです。要は、資産としての価値が目減りしないような物件を買えるかどうかということであり、流動性のリスクを考えれば、売れやすそうな場所を買う方がよいということです。
これは中小企業の場合になると思いますが、事業承継のタイミングは、大きなポイントの一つです。中小企業の場合、事業に使っている不動産を経営者個人が持っている場合がありますので、複雑になってきます。企業不動産イコール経営者の不動産という場合もあります。そういう意味でも、中小企業のCRE戦略において、一番大きなターニングポイントとなる瞬間を、事業承継のタイミングで迎える可能性が出てきます。
中小企業の経営者の方には得意ではない方もいらっしゃいますが、稅務と會計の理解は不可欠です。実際どんどん相続稅が上がっていますので、その回避策を稅理士の方にぜひ相談すべきだと思います。
(2)事業會社の不動産戦略
?不動産戦略の5つの指針り
本業が不動産投資や不動産売買ではない會社の不動産戦略は、基本的に二つあります。一つは、自分たちが実際に使う不動産をうまくやりくりするという不動産戦略です。
自分たちがこのビルでこの部屋をオフィスとして借りているとします。この賃料をどうするか、支店の統合をどうするか、あるいは工場を持っていて、その場所や保有の形をどうするかといったことです。
もう一つは、経営の安定化のために不動産投資をする。この2パターンがあります。両方織り交ぜてお話ししますが、メインは、経営の安定化や発展のための不動産投資についてです。
事業會社が不動産戦略を実施する場合の5つの指針を紹介します。
事業會社の不動産戦略の5つの指針
- 1. 企業業績、財務狀況 現狀と見直し
- 2. 事業のライフサイクル分析 ? 変化に伴うフレキシブルさの度合い
?社風
?事業內容
?設備投資の大小 - 3. 今後必要となる不動産の分析 ? オフィス、工場、倉庫???
- 4. 売り上げにおける固定部分の割合
- 5. 経済や不動産のマーケット狀況
まず、皆さんの會社の現狀の業績、あるいは財務狀況はどうなのか、そして今後の見通しはどうなるのかが一番大事です。現金が余っている、ある程度お金を使わなければいけない、財務狀況は良好だが現金の使い途がうまくないなど、それぞれの狀況によって違うと思いますので、まずは皆様の會社の狀況を知ることが必要です。
二つ目、ここが重要なところです。皆様が関わっておられる産業、ビジネスのライフサイクルはどうなのかを分析しなければなりません。事業というものは、20~30年も経過すると事業自體が古くなり、そのままでは経営が難しくなったりします。
特に、個人會社として立ち上げた會社は、おそらく30~40代で創業される方が多いと思いますが、ご自身がそろそろリタイアしようかなという時期を迎える頃には、ビジネスがライフサイクル的に大きく変化しているのではないでしょうか。産業自體が変わっていく際に、変化に伴ってフレキシブルに変われるような體質かどうかが大事です。社風、事業內容、あるいは設備投資など。たとえば「うちの會社は設備投資がすごく大きいからそんなにすぐ変われないよ」といったように、事業內容や設備投資の大小によって異なります。
次に、今後必要となる不動産の分析が必要です。オフィスを拡大する必要があるかどうか、あるいは、工場を刷新するかどうかなどを考えなければなりません。
そして、売上げにおける固定分の割合はどうなっているのか、ある一定量の固定収入がある企業とそうでない企業とでは、かなり変わってきます。そして何と言っても大事なのは、経済や不動産のマーケット狀況です。
?5つの不動産戦略
不動産戦略は5つに分かれます。実際に何らかの不動産を持っている企業の不動産戦略のアクション例です。
不動産を所有する企業における不動産戦略の5つのアクション例
- 1.遊休地活用
- 2.低利用地活用
- 3.コンバージョンの可能性
- 4.新規購入
- 5.賃貸借の見直し
中小企業でも、工場や倉庫、社宅など、不動産を持っている會社はたくさんあると思います。
その際に、遊休地をどう活用するのか。低利用地を活用できないか、コンバージョンやリノベーションの可能性はないか、あるいは、今不動産を所有しているが、さらに追加することはできないか、こういったことがアクション例として考えられます。
?不動産を保有する法人
「土地?建物所有狀況別法人數?割合」を見てみると、実際に不動産を持っている會社はかなり多いです。法人が100%だとすると、3割くらいが土地?建物を所有しています。土地?建物等を所有していないのは57%ですので、半分くらいです。
そもそも、日本の國土で法人が不動産を所有している割合は、14%(平成25年)と言われていました。不動産をどう使うのか、これは日本全體の問題でもあります。
には、企業が所有している不動産を精査することです。
まず精査を行って、うまく使えるところは使う。使わないものは売卻する、あるいはリフォーム、コンバージョンをする。こうしたアクションがCRE戦略で、具體的に説明すると次のような行為になります。
不動産を所有する企業における不動産戦略の5つのアクションの具體例
- 1. 遊休地活用
? (例)かつての工場用地、倉庫に賃貸住宅を建設 - 2. 低利用地活用
? (例)?容積率を消化しきれていない物件の建替え…低層階自社店舗、高層階層賃貸住宅
? (例)?隣地の併合で、総合設計適用…地階~1階店舗、2~3階テナント、3~7階ホテル - 3. コンバージョンの可能性
? (例)?社宅の建替えを機に、同一敷地內に賃貸住宅を建設…社宅建替え費用に充當 - 4. 新規購入
? (例)?土地の購入+賃貸物件の建築
その際に、単なる不動産の損得だけではなく、企業の狀況をしっかり分析した上で、そこに不動産の視點、経営の視點というものを加味するようなかたちでどうするのかを考えなければなりません。ほとんどの企業が投資としての損得だけでやっています。これが大半の不動産戦略のミスパターンの典型です。
具體的なアクションを紹介しましょう。私が何らかのかたちで関わったり、アドバイザーで入った例です。一つ目が遊休地の活用です。たとえばかつての工場用地、広い工場用地を持っているもののさすがに全部は使っていない、機械が小さくなったので遊休地が生まれるようなケースです。その跡地に賃貸住宅を建てる、あるいは、郊外の倉庫に在庫を移したので、使わなくなった都心部の倉庫には家を建てるという例です。
二つ目が低利用地の活用です。低い建物しか建っていないところに高い建物を建てましょうということです。容積率を生かしきれていない物件の建て替えです。低層階が自社店舗、高層階が賃貸住宅というかたちや隣地を併合して総合設計をしたりします。
三つ目はコンバージョンの可能性です。これは大和ハウスさんが行った例です。社宅の建て替えを機に、同一敷地內に賃貸住宅を建設し、建て替え費用に充當する。直接充當はできませんが、長期に渡って、建て替え費用を補うというかたちです。
それから四つ目、新規購入ですね。土地の購入や賃貸物件の建設などを行うパターンです。不動産を持っているのだけど、さらに賃貸住宅を追加して経営の安定化を図ろうとするなど、これは現在非常に増えています。
もう一つは、まだ不動産を持っていない會社の場合です。
不動産を所有しない企業における不動産活用の3つのアクション例
- 1. オフィス賃貸、各種賃貸の見直し
? 物件購入
? 活用しないスペースは、賃貸する - 2. 不動産の購入
? 賃貸住宅、オフィス??。
? 自社使用との併用の必要性 - 3. 投資としての不動産購入
安定収入の確保 ? 売上に波のある企業
まずはオフィスの賃料等を考慮して、持っていたほうがいいのか借りていたほうがいいのかという見直しをします。不動産の購入、賃貸住宅、オフィス、あるいは自社使用との併用の可能性も考えられるかもしれません。
そして、投資としての不動産購入という選択肢もあります。特に売上げに波がある企業は、安定収入のため、固定的に入ってくる賃料的なもの、そしてインフレヘッジができるような収入を持っておく。企業が潰れないためには、かなり重要な戦略だと思います。本業そのものはやはりどうしても波があるものです。その會社がいかんともしがたい波もあります。世の中のテクノロジーの変化などに対応し、臨機応変に変化できる企業は、そう多くありません。
?パートナーシップを築く
これらが具體的な例になりますが、その際に大事なのは、CRE戦略の具體策をお願いする企業と日ごろからパートナーシップを築いておくということです。パッと頼んですぐにできるような仕事ではありません。ある程度その會社のことをわかっていないとベストなアドバイスはできません。いろいろな視點が必要ですので、企業の経営戦略を見據えたうえでのあらゆる視點を持っている必要があります。
たとえば、不動産取引だけを行うような會社に相談すると、「売ったらいいのでは?」「貸したらいいのでは?」という回答しか來なかったりします。そうではなく、企業の置かれた環境や戦略に基づいて幅広い選択肢を持ち、適切に答えてくれるようなパートナー企業を見つけておくことが大事です。大和ハウスさんは今CREの代表的な會社になっています。普段から相談に乗ってくれるような、親しいところを持っておくといいでしょう。
(3)賃貸住宅経営について
賃貸住宅需要を予測する際、一番重要な視點は當然ながら世帯數です。ビルとか商業施設は人數で見ます。何人が使うかで見ますが、住宅の場合は世帯で見ます。別居中の方は別ですが、基本的には1世帯一つの家になります。そうなると、世帯がどうなっていくのかが重要なポイントになってきます。
世帯數で見ると、2015年を100とすると、東京も名古屋も100ちょっとプラスという感じですね。上がってちょっと下がっています。東京や名古屋は、25年から30年辺りから減っていきます。見てわかるとおり、世帯數は2050年辺りまではそう大きく減らないのが大都市部のパターンです。35年後くらいまではそう大きくは減りませんが、殘念ながら大阪は減るようです。
単獨世帯の予測ですが、名古屋では一人暮らしがかなり増加します。単獨世帯の方は大半が賃貸住宅で暮らします。つまり、単獨世帯數が伸びるということは、當然賃貸住宅の需要が伸びるということです。
また、賃貸住宅で維持したいものは賃料です。賃料のブレの少なさがこちらのグラフです。エリアによって違い、多少の上下はありますが、賃料の特徴として、あまり変わりません。
ただし、後半を見ていただくと、ここにきて賃料が上がる気配が出てきています。2011、12年は東京が若干下がっていますが、この時期は不動産価格が大きく下がり、マンションが一番買われていたときです。賃料には遅行性があるので、急にガタッと下落したり、急に上昇したりすることはありません。それでもご承知のように、昔だったら月額賃料2~3萬の部屋がたくさんありましたが、今はほとんどありません。5年、10年という単位でじわじわ上がっていくというのが、賃料の特性になります。
注目してほしいのが、賃料はインフレ率に連動するのですが、一方でデフレ期の賃料の下落の低さです。わかりやすくいうと、民間の賃貸に住んでいる入居者が、オーナーに対して、「最近不景気だから賃料を下げて」という人は少ないのです。一方オーナーは、賃料を上げるときには、「最近景気が良いので賃料を上げたい」といいやすいのでしょう。
つまり、基本的に景気が悪くても家賃の下げ圧力は、そんなに大きくかからないということです。ただし、賃料が100萬円以上するようなタワーマンションの最上階などは、不景気になってくると下がっていきます。世の中によくあるようなワンルームや1DK、2DKなどはそんなに下がらないということです。
これは、空き家が多いのが原因の一つです。空き家が増えてきているのが原因で、かなり古い賃貸物件が潰されずに殘っているということです。當然この21%の中には40年、50年のものもあります。その理由の一つが舊借家法の殘存です。オーナーは、本當は建て替えたいのですが、悪しき風習が殘っているため、「出ていってくれ」と言えないのです。やはり賃貸物件の空室率はどうしても上がります。世の中でいわれているような賃貸住宅の空室率には、こういったものも含まれていることをご理解いただきたいと思います。
(4)不動産投資の5つの極意
不動産投資を行う場合のポイントをお伝えします。。
不動産投資5つの極意
- 1. 価格上昇期待、値下がりしにくい物件選び。
?街の発展イメージ
?20年後を想定 - 2. 利回り計算を適切に行う
?期待利回りは、立地、用途、構造??など狀況により異なる。単一的な數字で見ない
?想定賃料、想定経費 - 3. 流動性を考えた物件
?売りやすさ
?転用のしやすさ - 4. タイミングを見逃さない
- 5. 借入金利はできるだけ低く、期間は長く
?低金利×長期間でいいCFを作る
価格上昇期待ができるかどうか、そして値下がりしにくいかどうかをイメージしていただきたいのですが、その前提として街の発展イメージがあります。実はこれは難しく、今衰退しているからといって買わないほうがいいかというとそうでもないのです。再開発されるかもしれないからです。街の発展イメージをしっかりと持つということが大事です。20年、30年と長期で投資しますので、その期間で街がどうなっているのかをイメージしていただきたいと思います。
それから、利回り計算をしっかりと行いましょう。期待利回りは、建て方や用途、立地、構造など、いろいろな條件で変わります。たとえば、7~8%の利回りで投資をしたとします。7%くらいないとだめだと教わったから、7%なかったらやめる。そうではありません。
利回りの何%が適切かは、一つひとつみていかないとわからないということです。知人の方がいくらで買って、私はこれで買うから低い。だからやめておこう、ということではありません。それぞれ検証しなければなりません。
一つずつ分析して利回り計算してみないとわかりません。想定賃料をつくって、想定経費をつくって、將來の上がり値を見ない限りわからないということです。同じ市內だから10%必要ということではありません。立地や用途、用途というのは、そこに高い建物が建てられるかどうか。あるいは構造はどうなのか、RCか木造住宅かで変わります。それらを全部見ないといけません。単一的な數字で見るとミスが起こります。これはとても重要なことです。
次に、流動性を考えた物件です。売りやすさ、転用のしやすさですね。先ほど紹介したとおりです。売りやすさは非常に重要です。
さらに、不動産投資の極意とはタイミングを逃さないこと、これが僕の中では1番か2番目に重要なことです。
そして、借入金利はできるだけ低く。これは當たり前ですね。期間はできるだけ長く借りる。低く長くです。本業ではありませんから、良いキャッシュフローをつくらなければいけません。手殘り金額をいくらかつくるためには、低くて長いことが大事です。もちろん、経営者の方の年齢によって、最大何年まで借りられるか制限はありますが、可能な範囲內で長くするのがポイントだと思います。
利回りというのは、このグラフのAとCです。Bがどれくらいで売れるかです。AとCだけを見て利回りがどうのこうのでやるとミスをするということです。利回りだけで見ないということです。パッと売れるかどうか、値段が下がらずに売れるかどうかということが重要です。なんといっても本業ではないですから。ひたすら不動産業をしていこうという方には違う話があります。今日は事業會社の方々向けの話ですから、キャッシュフローをよくして、売りやすいものを持つということです。
ほかにもいろいろな要因があり、たとえば需要があるかどうかもあります。さらに、中古か新築物件かという問題もあるでしょう。かいつまんで言うと、景気が良いときは新築がいいです。ただ、景気が悪いようなときは中古物件にも掘り出し物が出てきますので、いいと思います。今の時代でも、ものすごく親しいところがあり特別なルートがあるというのであれば中古物件でもいいと思いますが、多分そんなものはないと思いますので、基本的には、今のような好景気のときは新築物件のほうがいいかもしれません。
?パートナー企業選び
最後に「パートナー企業選び」です。中性、中立な立場でお話しをすべきですが、日本の不動産會社の中で、CREを一番得意としているのは大和ハウスさんだと言えます。CRE分野においては日本で一番大きな會社ですから。今すぐ何かをする必要があるかどうかにかかわらず、適切なパートナー企業と繋がっておくことは大切です。先ほど言ったように、急にパッとできるものではありません。企業の財務狀況や経営者のこと、いろいろなことを判斷しながら不動産の戦略を組み込んでいく必要がありますので、パートナー企業と繋がっておくということが大事です。
ではどんな會社を選べばいいのか。適切な問題解決ができるか、総合的な不動産會社なのか、関わった事例が全國各地にあるか、長く存在している會社なのか、個人ではなく會社なのか。
不動産投資5つの極意
- ■適切な問題解決ができるか。
不動産流通業ではなく、総合的な不動産アドバイスができるか。 - ■関わった事例が多い企業がよい。
全國各地からの事例があるか。 - ■長期パートナーになるべく、30年先にも存在している企業か。
- ■パートナーは個人ではなく、會社。
(長期ならば、擔當者が変わる可能性がある)
冷靜に第三者的な立場に立てば、こういう観點で選んでいくのがいいと思います。重要なポイントは、普段からそういうところとがっちり付き合っておくということです。