2022年問題!生産緑地法について考える
公開日:2017/01/26
生産緑地とは、生産緑地法(1972年)に記載されている、以下の目的を達成するために指定を受けた農地のことを指します?!袱长畏嗓?、生産緑地地區に関する都市計畫に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする?!梗ㄉb緑地法第1條)。
そして、第2條には、「國及び地方公共団體は、公園、緑地その他の公共空地の整備の現況及び將來の見通しを勘案して、都市における農地等の適正な保全を図ることにより良好な都市環境の形成に資するよう努めなければならない」とあり、行政が主體となって環境保全を行うということになっています。
図1:全國の生産緑地決定面積
生産緑地(ha) | 參考)東京ドーム(4.6ha)約●個分 | |
---|---|---|
全國計 | 13,653.70 | 2,968 |
関東 | 7,840.40 | 1,704 |
北陸 | 0.10 | ― |
中部 | 1,633.62 | 355 |
近畿 | 4,175.40 | 908 |
九州 | 4.20 | ― |
茨城県 | 90.10 | 20 |
埼玉県 | 1,824.80 | 397 |
千葉県 | 1,188.51 | 258 |
東京都 | 3,329.80 | 724 |
神奈川県 | 1,404.10 | 305 |
石川県 | 0.10 | ― |
長野県 | 3.10 | 1 |
靜岡県 | 236.90 | 52 |
愛知県 | 1,206.02 | 262 |
三重県 | 190.70 | 41 |
京都府 | 854.70 | 186 |
大阪府 | 2,100.40 | 457 |
兵庫県 | 533.80 | 116 |
奈良県 | 614.90 | 134 |
和歌山県 | 71.62 | 16 |
福岡県 | 2.10 | ― |
宮崎県 | 2.10 | ― |
(國土交通省「平成26年都市計畫現況調査」より作成)
生産緑地に指定されているのは上の図1のように、平成26年のデータでは、13,365ヘクタール、東京ドーム換算で、2,968個分と膨大な広さの生産緑地が、大都市圏の中に存在しています。では、指定にはどんな條件があるのでしょうか。(生産緑地法第3條)
市街化區域內にある農地等で、次に掲げる條件に該當する一団のものの區域については、都市計畫に生産緑地地區を定めることができる。
- 1.公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相當の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているもの
- 2.五百平方メートル以上の規模の區域
- 3.用排水その他の狀況を勘案して農林漁業の継続が可能な條件を備えていると認められるもの
生産緑地の稅制度については農林水産省の資料にありますが、その一部を抜粋したものが、下図です。
評価區分 | 課稅區分 | 稅額のイメージ | ||
---|---|---|---|---|
一般農地 | 農地評価 | 農地課稅 | 千円/10a | |
市街化區域 | 生産緑地 | 農地評価 | 農地課稅 | 數千円/10a |
一般市街化區域農地 | 宅地並み評価 | 農地に準じた課稅 | 數萬円/10a | |
特定市街化區域農地 | 宅地並み評価 | 宅地並み課稅 | 數十萬円/10a |
生産緑地に指定されると「市街化區域農地のうち、「生産緑地地區の農地」については、生産緑地法により転用規制がされているため、評価及び課稅に當たっては一般農地と同様の取扱いとされています?!梗ㄉ嫌涋r水省資料より引用)これにより、大都市部においても、固定資産稅、都市計畫稅が一般農地としての扱いとなり、かなり稅金が少なくなります。また、相続稅についても、その資産評価が低くなります。(相続稅については國稅庁HP)稅の減免がある一方で、その土地での行為の制限がかかってきます。
生産緑地法第7條では、「生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は、當該生産緑地を農地等として管理しなければならない?!工趣ⅳ?、また、第8條では、「生産緑地地區內においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない?!工趣丹欷皮い蓼埂?/p>
- 1.建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
- 2.宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
- 3.水面の埋立て又は干拓
三大都市圏の特定市の市街化區域農地は市街化政策により固定資産稅が宅地並みに課稅されますが、農地が生産緑地に指定されれば固定資産稅が農地として課稅されるので安くなります。その一方で、建物を建てることなどが制限され、その土地を農業などに使うことが義務付けられます。
ここからが、2022年問題といわれていることです。
生産緑地法によると、次のような事に該當する場合に、生産緑地の所有者は市區町村の農業委員會に買い取申し出を行うことができるとされています。(生産緑地法第10條)
- 1.生産緑地に係る生産緑地地區に関する都市計畫についての都市計畫法第二十條第一項の規定による告示の日から起算して三十年を経過した時
- 2.當該告示後に當該生産緑地に係る農林漁業の主たる従事者が死亡し、若しくは農林漁業に従事することを不可能にさせる故障として國土交通省令で定めるものを有するに至った時このような時、市町村長に対し、生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができる。この場合において、生産緑地が他人の権利の目的となっているときは、買い取る旨の通知書の発送を條件として當該権利を消滅させる旨の當該権利を有する者の書面を添付しなければならない。(以上、生産緑地法第10條、一部削除しました。)
そして、生産緑地法第11條では、「市町村長は、前條の規定による申出があつたときは、次項の規定により買取りの相手方が定められた場合を除き、特別の事情がない限り、當該生産緑地を時価で買い取るものとする。」となっています。「特別な事情がない限り、買い取らなければならない」と書いていますが、これまでに買い取りの申出を受けても市町村が買い取るケースが少なかったようです。財政上の都合といわれることが多いようですが、関係者によると、これからも市區町村が買収することはまれだろうと言われています。ちなみに、第12條には、「第10條の規定による申出があった日から起算して一月以內に、當該生産緑地を時価で買い取る旨又は買い取らない旨を書面で當該生産緑地の所有者に通知しなければならない」とあり、法律の中には、買い取らないというケースも想定されています。
農業経営者への買い取りあっせん(生産緑地法第13條)を経て生産緑地として買収する者がいない場合には生産緑地の指定が解除されます。
生産緑地法第10條の1項にあるように、告示の日から30年が2022年にあたります。
この期限が切れた2022年に一斉に買い取りの申し出があっても、おそらく、よほど裕福な市區町村でもない限り、これらをすべて買い取ることができないと思われます。そうすれば、生産緑地の指定が解除された土地が一斉に登場することになります。
土地所有者の立場に立つと、この期限が切れたときに、一般農地並みの課稅區分でなはなくなり、一気に各種稅金が上がることになります。「稅金の面を考えると、手放そう」と思っても、時価で市區町村が買い取ってくれる可能性は引くそうです。こうなると、手放す場合は、自ら不動産會社に委託して売卻を行うことになります。もし仮に、一斉に放出されることになると最悪の場合、その時の土地価格は需給バランスが崩れて下落するかもしれません。
もちろん、先祖代々の土地を手放したくないという方も多いことでしょう。しかしそのまま放置しておけば、先に書いたように稅が増えることになります。これらが「生産緑地の2022年問題」といわれることです。
その対策をすでに始めているオーナー様も増えてきました。例えば、その土地に賃貸住宅や商業施設を建てて貸すことで、宅地(更地)から比べると、固定資産稅、相続稅がずいぶん減免されます。このような制度を使うという事なども対策の一例だと思います。
一方、平成29年4月に「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が國會で可決され、成立しました。
この制度については次回以降の本連載で解説しようと思いますが、これにより生産緑地の指定が解除された土地が一斉に市場で売られることを國土交通省も避けようとしているようです。
いずれにしろ、現在の生産緑地に指定されている土地をどうするかの判斷が必要な時期になってきたといえると思います。
なお、本記事は、生産緑地の宅地化を促進することをイメージして、書いたものではないことを付け加えておきます。